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第10話:葛藤
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*同居開始~本編最終話ラストに至る迄の物語*
離婚が成立して以来、謙太の接触が明らかに増えた。
手を繋ぐ。
肩を組む。
後ろから抱き着く。
その度に平静を装いつつ軽くあしらっていたが、内心龍之介は戸惑っていた。
高校の時からの付き合いである。大学が違ったから多少ブランクはあるが、それでも長い付き合いだ。人懐こい性格でスキンシップが多いタイプではあったが、ここ数日明らかに頻度が増えた。
「どういうつもりだよ……」
平日の朝。
謙太を送り出してから、龍之介は仕事机に突っ伏していた。
仕事部屋には先日寝室から移されたベッドがある。これというのも、謙太が勝手に大きなベッドを買って寝室に置いたからだ。
新しいマットレスは最新の高反発で寝心地が良い。別々に寝ようと決心していたのに、試しに転がってみたらあまりの気持ちよさに驚いてしまった。これを知ってしまうと以前のマットレスには戻れない。
しかも、後で値段を調べてみたらかなり高額だった。支払いの時にさりげなく龍之介を遠ざけたのも、ベッドのサイズや値段がバレたら反対されると思ったからだろう。
そういう訳で、未だに一緒に寝ている。
「……あいつ、女が好きなはずだよな」
前日まで結婚していたし、寧花と知り合う前にも彼女がいたはずだ。
龍之介ももちろん女性の方が好きだ。
しかし、眞耶と別れて以降、女性と付き合うことはなかった。二十代半ば。交際を続ければ、いずれ結婚話が浮上する。その時に事実を伝えて棄てられたらと思うと前向きにはなれなかった。
かといって、付き合う前から無精子症だと宣言するのもおかしな話だ。相手がどんな人間か分からないうちからデリケートな話をするべきではない。子どもを産みたくない女性に条件を絞って相手を探すのも嫌だった。
一生独りで生きていくと決めた龍之介の前に謙太が飛び込んできた。勝手に巻き込んで迷惑をかけて、でも、自分でも気付いていなかった孤独を埋めてくれた。
龍之介は間違いなく謙太との暮らしを『幸福』だと認識していた。
友人とのルームシェア。
でも、片方がそう思ってないとしたら。
もし龍之介が拒めば謙太はこの部屋から出て行くだろう。そうなれば、また独りで取り残されることになる。次は耐えられない。
「俺はどうしたいんだろうな」
窓の向こうは快晴なのに、心の中はどんよりと暗雲が立ち込めている。自問自答を繰り返すうちに自分の気持ちを見失いそうになり、龍之介は頭を抱えた。
そこまで考えてから、はたと正気に戻る。
「……よく考えたら、あいつから好きだとか一切言われたこと無いぞ」
家族になりたい、一緒に暮らしたいとは言われたが、それ以上のことは言われていない。謙太の指す意味が兄弟のような関係であれば何も問題はない。
「うん、そうだ。そうに違いない!」
そう考えたら気が楽になったのか、その日の仕事はとても捗った。
離婚が成立して以来、謙太の接触が明らかに増えた。
手を繋ぐ。
肩を組む。
後ろから抱き着く。
その度に平静を装いつつ軽くあしらっていたが、内心龍之介は戸惑っていた。
高校の時からの付き合いである。大学が違ったから多少ブランクはあるが、それでも長い付き合いだ。人懐こい性格でスキンシップが多いタイプではあったが、ここ数日明らかに頻度が増えた。
「どういうつもりだよ……」
平日の朝。
謙太を送り出してから、龍之介は仕事机に突っ伏していた。
仕事部屋には先日寝室から移されたベッドがある。これというのも、謙太が勝手に大きなベッドを買って寝室に置いたからだ。
新しいマットレスは最新の高反発で寝心地が良い。別々に寝ようと決心していたのに、試しに転がってみたらあまりの気持ちよさに驚いてしまった。これを知ってしまうと以前のマットレスには戻れない。
しかも、後で値段を調べてみたらかなり高額だった。支払いの時にさりげなく龍之介を遠ざけたのも、ベッドのサイズや値段がバレたら反対されると思ったからだろう。
そういう訳で、未だに一緒に寝ている。
「……あいつ、女が好きなはずだよな」
前日まで結婚していたし、寧花と知り合う前にも彼女がいたはずだ。
龍之介ももちろん女性の方が好きだ。
しかし、眞耶と別れて以降、女性と付き合うことはなかった。二十代半ば。交際を続ければ、いずれ結婚話が浮上する。その時に事実を伝えて棄てられたらと思うと前向きにはなれなかった。
かといって、付き合う前から無精子症だと宣言するのもおかしな話だ。相手がどんな人間か分からないうちからデリケートな話をするべきではない。子どもを産みたくない女性に条件を絞って相手を探すのも嫌だった。
一生独りで生きていくと決めた龍之介の前に謙太が飛び込んできた。勝手に巻き込んで迷惑をかけて、でも、自分でも気付いていなかった孤独を埋めてくれた。
龍之介は間違いなく謙太との暮らしを『幸福』だと認識していた。
友人とのルームシェア。
でも、片方がそう思ってないとしたら。
もし龍之介が拒めば謙太はこの部屋から出て行くだろう。そうなれば、また独りで取り残されることになる。次は耐えられない。
「俺はどうしたいんだろうな」
窓の向こうは快晴なのに、心の中はどんよりと暗雲が立ち込めている。自問自答を繰り返すうちに自分の気持ちを見失いそうになり、龍之介は頭を抱えた。
そこまで考えてから、はたと正気に戻る。
「……よく考えたら、あいつから好きだとか一切言われたこと無いぞ」
家族になりたい、一緒に暮らしたいとは言われたが、それ以上のことは言われていない。謙太の指す意味が兄弟のような関係であれば何も問題はない。
「うん、そうだ。そうに違いない!」
そう考えたら気が楽になったのか、その日の仕事はとても捗った。
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