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第11話:感情の正体
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*同居開始~本編最終話ラストに至る迄の物語*
「俺、仕事残ってるから先に寝てて」
「わかった」
ある夜、食事と入浴を済ませた後で龍之介はそう言って仕事部屋にこもった。
別々に寝る練習をするためである。
最初からそう宣言してしまえば謙太から反対される恐れがある。しかし、仕事だと言っておけば文句は言われない。
それに、実際仕事はたくさんある。
謙太と暮らすようになって、龍之介の精神状態はかなり回復した。その結果人当たりが良くなり、既にいる取引先からの依頼が増えた。紹介で新規の仕事を貰ったりもした。フリーランスでやっていくには地道に顧客を増やしていく他ない。
今が踏ん張り時だと龍之介は自分に喝を入れ、パソコンに向かった。
一方、寝室では謙太がベッドに寝転がっていた。
先日買ったワイドダブルのベッドは寝心地も良く快適だ。でも、一人で寝るには広過ぎる。仕事で疲れているし、明日も仕事だ。それなのに、なかなか寝付けないでいた。
耳を澄ませば、隣の部屋からキーボードを叩く音が聞こえてくる。龍之介が仕事をしている気配を感じながら目を閉じる。
「……やっぱ眠れない」
まだ寒い季節。布団は体が接している部分以外は冷えている。いつもなら隣に寝ている龍之介の温もりがあるのに今はない。
同じマンションにいるのだから一人ではない。
それなのに、顔が見える範囲にいないことが耐えられない。
こんなことは今までなかった。
顔が見えないだけで落ち着かないだなんて、今まで交際してきた女性たちに感じたことはない。幾ら好きでも他人は他人。ずっと自分の領域に居られるのは嫌だった。
龍之介に対してはそう思わない。
試しに抱き着いたりしてワザと接触を増やしているが、不快だと思うことは一切なかった。むしろ、抱き着く度に振り払われることに寂しさすら感じている。
自分が龍之介に抱く感情はなんなのか、謙太自身も測りかねていた。
友情、親愛、家族愛。
異性に対する愛情とも違う。
どうなりたいかと問われれば、ずっと一緒にいたいと迷わず答えるだろう。それくらい今の暮らしは充実していた。
それ以上を望めば、きっと龍之介は逃げてしまう。
だからこそ謙太は何も言わず、厚かましいくらいの図太さを演じながら龍之介の部屋に居座り続けるしかない。
「…………本当はもっと近付きたい」
求めたいし、求められたい。
壁越しに聞こえてくる、カタカタというキーボードを叩く音。暗い寝室内に響くそれを子守唄代わりに目を閉じ、謙太は眠れぬ夜を過ごした。
「俺、仕事残ってるから先に寝てて」
「わかった」
ある夜、食事と入浴を済ませた後で龍之介はそう言って仕事部屋にこもった。
別々に寝る練習をするためである。
最初からそう宣言してしまえば謙太から反対される恐れがある。しかし、仕事だと言っておけば文句は言われない。
それに、実際仕事はたくさんある。
謙太と暮らすようになって、龍之介の精神状態はかなり回復した。その結果人当たりが良くなり、既にいる取引先からの依頼が増えた。紹介で新規の仕事を貰ったりもした。フリーランスでやっていくには地道に顧客を増やしていく他ない。
今が踏ん張り時だと龍之介は自分に喝を入れ、パソコンに向かった。
一方、寝室では謙太がベッドに寝転がっていた。
先日買ったワイドダブルのベッドは寝心地も良く快適だ。でも、一人で寝るには広過ぎる。仕事で疲れているし、明日も仕事だ。それなのに、なかなか寝付けないでいた。
耳を澄ませば、隣の部屋からキーボードを叩く音が聞こえてくる。龍之介が仕事をしている気配を感じながら目を閉じる。
「……やっぱ眠れない」
まだ寒い季節。布団は体が接している部分以外は冷えている。いつもなら隣に寝ている龍之介の温もりがあるのに今はない。
同じマンションにいるのだから一人ではない。
それなのに、顔が見える範囲にいないことが耐えられない。
こんなことは今までなかった。
顔が見えないだけで落ち着かないだなんて、今まで交際してきた女性たちに感じたことはない。幾ら好きでも他人は他人。ずっと自分の領域に居られるのは嫌だった。
龍之介に対してはそう思わない。
試しに抱き着いたりしてワザと接触を増やしているが、不快だと思うことは一切なかった。むしろ、抱き着く度に振り払われることに寂しさすら感じている。
自分が龍之介に抱く感情はなんなのか、謙太自身も測りかねていた。
友情、親愛、家族愛。
異性に対する愛情とも違う。
どうなりたいかと問われれば、ずっと一緒にいたいと迷わず答えるだろう。それくらい今の暮らしは充実していた。
それ以上を望めば、きっと龍之介は逃げてしまう。
だからこそ謙太は何も言わず、厚かましいくらいの図太さを演じながら龍之介の部屋に居座り続けるしかない。
「…………本当はもっと近付きたい」
求めたいし、求められたい。
壁越しに聞こえてくる、カタカタというキーボードを叩く音。暗い寝室内に響くそれを子守唄代わりに目を閉じ、謙太は眠れぬ夜を過ごした。
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