【完結】断罪待ち悪役令息と絶対断罪しない王太子殿下

みやこ嬢

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王太子の妹君と異母弟の交際開始の発端は私?

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 王宮内にある謁見の間は今や裁判所の様相を呈していた。玉座に座す国王陛下は不機嫌さを隠しもせず、下段で並んで膝をつくシュタルク侯爵家の四名を見下ろしている。

 ちなみに、本来ならば解散して帰宅しているはずのアミル様が玉座の傍に控えている。おそらくは国王陛下が暴れ出した時に力尽くで止めるために残ってくれているのだろう。ありがたい話ではあるが少々、いや、かなり居た堪れない。

 この中で裁かれるべきは私一人。しかし国王陛下はルインに対してもかなり憤っているご様子。今も二人の会話を聞きながら唇を噛み締めている。むしろ私とローガン様の件よりお怒りかもしれない。

「ルイン君、帰りにわたしの部屋に来る?」
「もう夜になるし、ぼく帰らないと」
「じゃあお休みの日は?」
「それなら大丈夫。……いいですよね、母さま」
「え、ええ。でも、どうかしら。そちらの親御さんの許可が降りないとご迷惑になるでしょうし」

 いきなり話を振られた義母上が戸惑っている。ミレーナ殿下と親しげに話すルインに驚いているようだ。

「そなたたちを呼んだのは他でもない。我が国の行く末がかかった大事な大事な話をするためじゃ」

 国王陛下が話を切り出した。国の行く末と聞き、義母上は首を傾げている。

「まずはヴァイン・マハド・シュタルク。おまえは我が息子、王太子ローガン・アヴィド・ヴィガンディーに不埒な真似をした。間違いないな?」
「はっ、相違ありません」

 私は深々と頭を下げ、事実を認めた。父は頭を抱え、義母上がギョッとした目を向けてくる。

「次に、ルイン・ダビド・シュタルク。おまえは我が娘、王女ミレーナ・マルディナ・ヴィガンディーと将来を約束した。間違いないな?」
「えっと、はい。約束しました」

 素直に頷くルイン。ミレーナ殿下が勝手に言っているだけかと疑っていたが、どうやら事実らしい。

「い、一体いつから交際しておった」

 国王陛下が前のめりになって問いただすと、ルインは「今日の放課後からです!」と答えた。交際初日に結婚の約束を交わすとは思ってもおらず、父も義母上も驚き過ぎて言葉を失っている。

「もともと好きだったんですけど、最近になって話す機会があって意気投合して。お付き合いするなら結婚しないとって二人で決めたんです」
「そうなの。だから早くお父様に報告しないとと思って。まさか両家の顔合わせの場を設けてくれるなんて嬉しいわ」

 ミレーナ殿下は両家顔合わせのつもりかもしれないが、シュタルク侯爵家側からすると裁判所の被告人席に座らされている気持ちである。

 尋問まがいの問いかけをしている最中に国王陛下がなにかに気付き、ハッと息を飲んだ。ぷるぷると震える指先を若い二人に向けながら問う。

「お、おまえたち、その胸につけている飾りは……」

 ミレーナ殿下とルインの胸元には、貴族学院の制服のリボンの結び目にブローチが留められていた。私が視察帰りに購入して二人に贈ったものだ。

「たまたまルイン君も同じブローチを着けてたから話すきっかけができたの!」
「兄さまから貰ったものなんです」

 交際に至るきっかけを与えた犯人は私だった。どうやら元々密かに想いを寄せていた二人の背中を押す結果となったらしい。

 国王陛下の怒りの矛先が再び私に向いた。

「ヴァイン・マハド・シュタルクよ。すべての元凶はおまえのようじゃな?」
「……は。どのような処罰でも受けます」

 膝をつき、深く頭を下げた状態で判決を待つ。最悪死罪なるかもしれない、と覚悟を決めた時だった。

「父上、俺にもヴァインと同じ処罰を与えてください」

 ローガン様の言葉に、国王陛下は「ぐぬぬ」と唸りながら眉間に刻まれたシワを険しくした。

「年頃の女性に対する嫌悪や恐怖から逃げたい一心で、俺がヴァインを利用したのです。ヴァインは俺の意思を汲んでくれただけ。彼に罪はありません」

 自分一人で責任をとるつもりなのだ。そう思った途端、私の頭にカッと血が上った。陛下の御前にも関わらず、ローガン様のそばに詰め寄る。

「違います! 私がシュタルク侯爵家の跡継ぎになりたくなかったから、あなたを利用して断罪してもらおうとしたんです! でも、どんなに酷いことをしてもあなたは私を罰してはくれなかった!」
「ま、待てヴァイン! 跡継ぎになりたくないとはどういうことだ!」

 言い合う私たちに父が口を挟んできた。こうなっては黙っていても仕方がない。私は初めて自分の心の内をすべて話すことにした。

「ルインが生まれてから義母上は私に冷たくなった。それまでは優しかったのに。先妻の子より自分の子のほうが可愛いのは当たり前だとわかっておりますが、私はとても悲しくて辛かった」

 義母上が顔を上げ、驚きの表情を私に向けた。

「昔のように接してもらうにはどうすればいいか考えた末に、私は一つの答えに行き着いたのです。──ルインがシュタルク侯爵家の跡取りになれば私を邪魔に思わないはずだ、と」
「ヴァイン!」

 私の言葉に、義母上は血相を変えた。青い顔を更に青くしている。

「わたしはそんなこと望んでおりません!」
「では、なぜ私と目を合わせてくれないのですか。ずっと避けていますよね」
「そ、それは……」

 言い返すと、義母上はうつむいた。その間、父とルインは戸惑いながら私と義母上の顔を交互に見ている。

「ヴァインが嫌いなわけではありません。ただ、継母の身で馴れ馴れしくしてはいけないと律していたのです」

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