Treasure of life

月那

文字の大きさ
49 / 101
【3】Astrophyllite

16

しおりを挟む
「あまり、無駄に悩むこと、ねーんじゃね?」
「無駄?」
「うん、あの人がおまえのことを嫌うとか、他に相手がいるとか、そーゆーのは絶対にないって、少なくとも俺は言い切れるけどね」
「まーくん……」
「いろいろあんじゃねーの? 頭イイ人の考えることなんか、俺には全然わかんねーけどさ」
 ポテトを一本つまんで、成親の口の中に放り込む。

「何かしら、考えてんだろーからさ、信じてやんなよ。で、あまりにも信じなんないってんなら、はっきり本人にぶつけてやれよ」
 咀嚼した成親が、目の前にあったオレンジジュースを飲む。
「しょーさん、困らせたく、ない」
「そんなんゆって、おまえが困ってたらあの人も困るよきっと」
「…………」

「ちゃんとヤれる状況になった時に、可愛く抱いてってゆったらいんじゃね?」
「……んなこと、できるかっつの」
「大丈夫、大丈夫。なるならできるって」
「……まーくん、俺んことばかにしてね?」
「してねーよ。俺には通じない色気も、あの人になら全然通じるからやってみろっつってんの」

 征人が笑う。
 成親は、それを見て少しだけ安心したように微笑んだ。

 だから。

 あー、確かにこの笑顔なら少しだけ“イケ”そうな気は、する。と征人も思ったけれど、慌ててその感情を打ち消す。
 あの翔が、どこで見ているとも限らないわけで。
 成親に対して少しでも変な気を起こそうものなら、きっとすっ飛んで来るに違いないから。
 そんなことを考えてしまうくらい、“翔が成親を好き”ってことは征人には疑いもない真実だから、何を無駄に悩んでいるのか、と鼻で笑うしかないのだ。

「特選科ってトコはさ、俺ら一般人にはわかんない世界だし、きっといろいろあんだよ。で、そこで何かしらあの人を悩ませることがあったんじゃねーの?」
「……か、なあ」
「そうそう。で、それに関してはなるや俺がどうこうできるわけじゃねーし、あの人が自分で解決するんだろうから、も、ほっとくしかねーよ」

 別世界だと、征人は思う。
 自分は普通科の中でも下位にいるわけだから、校内の――あるいは全国の――成績トップレベルの集団なんて考えられない世界だから。
 翔こそあんな風に自分たちと全く変わらない雰囲気を持って、分け隔てなく接してくれるからその世界の住人だとは感じさせないけれど、周囲の人間で特選科と接した者は大抵“変人”としか言わない。
 当然それはいい意味でも悪い意味でもあるのだろうが、そんな人たちの中で“普通”な翔が逆に浮いているんじゃないか、とも思う。
 そうなったらもう、成親の言う“おかしい”翔が何に困っているのかなんて自分たちには計り知れないわけだから。

「多分、そのうちまたケロっとして“なるなる”つって抱き付いてくるよ、あの人のことだから」
「……ん。まあ、ね。俺の前ではかなりなポンコツだけど、基本的には凄い人だし」
「なるの前でだけは緩んでポンコツになれんだよ、きっと」
「それが可愛いんだけどね」
「……のろける?」
「のろけていい?」
 切ない顔や、不貞腐れてる表情見てるよりはいいか、と征人は
「多少なら。ま、それでなるの気が晴れるならね」
 笑ってやったが、結局のところ、その言葉を後悔するくらい、その後延々とのろけ話を聞かされることになったのだった。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます

なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。 そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。 「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」 脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……! 高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!? 借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。 冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!? 短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。

学校一のイケメンとひとつ屋根の下

おもちDX
BL
高校二年生の瑞は、母親の再婚で連れ子の同級生と家族になるらしい。顔合わせの時、そこにいたのはボソボソと喋る陰気な男の子。しかしよくよく名前を聞いてみれば、学校一のイケメンと名高い逢坂だった! 学校との激しいギャップに驚きつつも距離を縮めようとする瑞だが、逢坂からの印象は最悪なようで……? キラキライケメンなのに家ではジメジメ!?なギャップ男子 × 地味グループ所属の能天気な男の子 立場の全く違う二人が家族となり、やがて特別な感情が芽生えるラブストーリー。 全年齢

死ぬほど嫌いな上司と付き合いました【完結】

三宅スズ
BL
社会人3年目の皆川涼介(みながわりょうすけ)25歳。 皆川涼介の上司、瀧本樹(たきもといつき)28歳。 涼介はとにかく樹のことが苦手だし、嫌いだし、話すのも嫌だし、絶対に自分とは釣り合わないと思っていたが‥‥ 上司×部下BL

【創作BL】溺愛攻め短編集

めめもっち
BL
基本名無し。多くがクール受け。各章独立した世界観です。単発投稿まとめ。

処理中です...