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flashback
flashback -3-
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「ルカ、ちょっと話があるんだけど」
珍しく。ほんっとに珍しく、親父に言われて少しビビる。
バイトから帰って、いつものようにリビングに顔を出すと、のっそりと父がソファから出迎えてくれて。
「……美紅は?」
「今日は、清華と一緒に七海ちゃんちにお泊りだそうだ」
…………………まじで、珍しい。
七海が田所家に泊まりに来るのは完全デフォルトで、ゆかりもたまに(というか基本的に飲むために)ここに泊まることがある。
が、逆にゆかりの家に美紅たちが行くのは。清華がしょっちゅう出入りしているのは当たり前なのではあるが、美紅までがそこに加わる、更に泊まる、なんて殆どないことで。
「お盆だからね。ゆかりちゃんも仕事休みで、たまには女の子で集まろうって話だそうだ」
「……へえ」
とりあえず。生返事して、冷蔵庫からペットボトルのコーラを取って来る。
大人ならこんな時、ビールなのだろうが。
「ま、そこに座りなさい」
親父の右斜め前、という位置。L字型のソファなので、横、じゃあないだろう、という判断。
説教かな? と少し予想する。が、美紅でもないし、この人がこんこんと説教なんて、殆どあり得ない。
仕事人間というわけでもないのだが、もともと口下手なようで、育児や教育方針は基本的に美紅任せで。
穏やかにしか見えないけれど、職場では鬼の泰さんと呼ばれているらしく。そのギャップに美紅は萌える、らしい。
余談ではあるが、ルカの父の名前は泰樹である。坂本と同じ“タイキ”である為、ルカとしてはどうしても坂本を“タイキ”と呼ぶことに抵抗を感じる為、親友なのに“坂本”なのだ。
「あー。単刀直入にゆっちゃうけど、ゆかりちゃんにフられたんだろ?」
「!!」
正に単刀直入である。
まだまだカサブタにもなっていない傷にざっくりナイフを刺されて、ルカは瞠目した。
「ごめんごめん。どうも、口下手で。オブラートに包むってことができなくてな」
うん、痛いです、かなり。
がっくりと項垂れたルカに、追い打ちをかけるように、
「美紅にルカを慰めてやってくれって言われて」
あ。
ゆかりから、美紅に。そりゃ、伝わらないわけがない、よなあ。
「いや。じゃなくて。逆に今、美紅はゆかりちゃんの話聞いてあげてるんだよ。ゆかりちゃんも、何も言わないから。あの子はあの子で、多分ちょっと抱えてるんじゃないかなって」
「え?」
「お前の様子見て、美紅が気付いただけ。ゆかりちゃんは美紅に何も言ってないよ」
母って、本当に怖い。と、思う。
何から何まで、全部見えている、というのか。
「ちょっと、僕たちもルカを煽ったってのもあったから。多分お前が暴走して、ゆかりちゃんにフられたんだろうって話してたんだけど、違うか?」
いえ、全然合ってます。間違いないです。
優しい熊さんは、あったかいお茶なんて飲みながら(この人、料理だけでなくコーヒーを淹れるのもお茶を淹れるのもかなりの腕前なのだ)目を細めた。
「ルカは、美紅におかあさんがいない、ってのは当然知ってるだろう?」
突然の話に驚いたが、とりあえず頷く。
そう。昔から“おばあちゃん、おじいちゃん”というのは父方の方にしかいないものと思っていた。
「何で、いないか。ってのは、知らない?」
「そう言えば、気にしたことなかったけど。両方、もう亡くなったとかじゃないの?」
「うん、亡くなっては、いないよ」
少し。いや、かなり驚く事実で。
「美紅のお母さん、静子さんて言うんだけど、彼女はまあ、美紅を産んで暫くして離婚していて」
ゆかりちゃんと、同じ境遇、と言ったところか。
「で、まあその別れた亭主ってのはもう、僕は勿論だけど美紅も全然預かり知らないトコなんで、生きてるか生きてないかも、不明」
つまりは赤の他人、という状態なわけだ。
ルカは、何の話になるのかわからず、とりあえずコーラで喉を潤した。
珍しく。ほんっとに珍しく、親父に言われて少しビビる。
バイトから帰って、いつものようにリビングに顔を出すと、のっそりと父がソファから出迎えてくれて。
「……美紅は?」
「今日は、清華と一緒に七海ちゃんちにお泊りだそうだ」
…………………まじで、珍しい。
七海が田所家に泊まりに来るのは完全デフォルトで、ゆかりもたまに(というか基本的に飲むために)ここに泊まることがある。
が、逆にゆかりの家に美紅たちが行くのは。清華がしょっちゅう出入りしているのは当たり前なのではあるが、美紅までがそこに加わる、更に泊まる、なんて殆どないことで。
「お盆だからね。ゆかりちゃんも仕事休みで、たまには女の子で集まろうって話だそうだ」
「……へえ」
とりあえず。生返事して、冷蔵庫からペットボトルのコーラを取って来る。
大人ならこんな時、ビールなのだろうが。
「ま、そこに座りなさい」
親父の右斜め前、という位置。L字型のソファなので、横、じゃあないだろう、という判断。
説教かな? と少し予想する。が、美紅でもないし、この人がこんこんと説教なんて、殆どあり得ない。
仕事人間というわけでもないのだが、もともと口下手なようで、育児や教育方針は基本的に美紅任せで。
穏やかにしか見えないけれど、職場では鬼の泰さんと呼ばれているらしく。そのギャップに美紅は萌える、らしい。
余談ではあるが、ルカの父の名前は泰樹である。坂本と同じ“タイキ”である為、ルカとしてはどうしても坂本を“タイキ”と呼ぶことに抵抗を感じる為、親友なのに“坂本”なのだ。
「あー。単刀直入にゆっちゃうけど、ゆかりちゃんにフられたんだろ?」
「!!」
正に単刀直入である。
まだまだカサブタにもなっていない傷にざっくりナイフを刺されて、ルカは瞠目した。
「ごめんごめん。どうも、口下手で。オブラートに包むってことができなくてな」
うん、痛いです、かなり。
がっくりと項垂れたルカに、追い打ちをかけるように、
「美紅にルカを慰めてやってくれって言われて」
あ。
ゆかりから、美紅に。そりゃ、伝わらないわけがない、よなあ。
「いや。じゃなくて。逆に今、美紅はゆかりちゃんの話聞いてあげてるんだよ。ゆかりちゃんも、何も言わないから。あの子はあの子で、多分ちょっと抱えてるんじゃないかなって」
「え?」
「お前の様子見て、美紅が気付いただけ。ゆかりちゃんは美紅に何も言ってないよ」
母って、本当に怖い。と、思う。
何から何まで、全部見えている、というのか。
「ちょっと、僕たちもルカを煽ったってのもあったから。多分お前が暴走して、ゆかりちゃんにフられたんだろうって話してたんだけど、違うか?」
いえ、全然合ってます。間違いないです。
優しい熊さんは、あったかいお茶なんて飲みながら(この人、料理だけでなくコーヒーを淹れるのもお茶を淹れるのもかなりの腕前なのだ)目を細めた。
「ルカは、美紅におかあさんがいない、ってのは当然知ってるだろう?」
突然の話に驚いたが、とりあえず頷く。
そう。昔から“おばあちゃん、おじいちゃん”というのは父方の方にしかいないものと思っていた。
「何で、いないか。ってのは、知らない?」
「そう言えば、気にしたことなかったけど。両方、もう亡くなったとかじゃないの?」
「うん、亡くなっては、いないよ」
少し。いや、かなり驚く事実で。
「美紅のお母さん、静子さんて言うんだけど、彼女はまあ、美紅を産んで暫くして離婚していて」
ゆかりちゃんと、同じ境遇、と言ったところか。
「で、まあその別れた亭主ってのはもう、僕は勿論だけど美紅も全然預かり知らないトコなんで、生きてるか生きてないかも、不明」
つまりは赤の他人、という状態なわけだ。
ルカは、何の話になるのかわからず、とりあえずコーラで喉を潤した。
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