隣の席になった超絶美少女は俺の許嫁!?

橘奏多

文字の大きさ
1 / 3

第1話 許嫁と言い張る超絶美少女

しおりを挟む
「加賀くんは私の許嫁なの。あまり近づかないでくれる?」

 こんなことになったのは遡る事、約三十分前……

 俺の名前は加賀慶哉《かがけいや》、何の変哲もないただの高校生だ。
 あまり目立つのも好きではなく、この日までは平凡な毎日を送っていた。

「慶哉、また一緒のクラスだな!これからもよろー」

 彼の名前は永峯明琉《ながみねあくる》。
 明琉とは中学生時代からの友人で、今では信頼出来る良い友人である。

「え!慶哉と明琉も同じクラスなの?ラッキ~」

 彼女の名前は西宮香織《にしみやかおり》。
 香織は俺の幼馴染で小学校の頃からの付き合いである。
 俺が明琉と仲良くなった事がきっかけで、香織は明琉とも仲良くしている。

「しかし慶哉羨ましいぜー。あの超絶美少女の高坂茉優《こうさかまゆ》が隣なんてよー」
「高坂茉優?どこかで聞いた覚えが……」

 少し考えていると、目の前を女の子の艶やかな長い黒髪が靡かせた。シャンプーの良い匂いがする。
 そして、その女の子は俺の隣の席に座った。
 この子が高坂さんなのだろうか。
 明琉が言うように超絶美少女でクラスの皆の視線を集めていた。

「えーっと、高……」
「ね~ね~慶哉、始業式終わったらどこか遊びに行こ!」

 香織か、なんと間が悪い……。
 折角勇気を出して高坂さんに声を掛けようとしたのに。

「今日かー、どうしようかな」
「えー、別に少しくらい良いでしょー?」

 香織が俺の腕に抱きつきながら上目遣いで見つめてくる。
 腕にむ、胸が、当たってる……

 そしてとうとうここで現在に至り、事件は起こってしまうのだ。

「加賀くんは私の許嫁なの。あまり近づかないでくれる?」

 その声を上げた主は予想外の人物である。
 隣の席に座っていた超絶美少女の高坂茉優だ。
 この一言でクラスの雰囲気が一気に変わった。
 声はそこまで大きくなかったが、誰もが高坂さんのことを気に掛けていたため、一気に注目を集めた。

「ちょっ、ちょっとこっち来て!」

 耐えきれなくなった俺は高坂さんの手を引っ張り教室を出た。
 この場を離れるのは余計に誤解されるかもしれないが、こうする以外に思いつかなかったのだ。

「助けてくれたのは嬉しいけど別にあそこまで言ってくれる必要はなかったのに」

 人気のなさそうな場所に着いて、そう言うと高坂さんは首を傾げてよく分かってなさそうな表情をした。
 高坂さんは学校の中でも間違いなくトップクラスの美少女なので、何を取っても平凡な俺と変な噂が立つと迷惑に違いない。
 そう思っていたが……

「あー、許嫁のこと?あれなら‴本当‴のことだし別にいいんじゃない?」
「……え?」
「え?」

 俺とこんなにも可愛い女の子が許嫁なんて全く意味がわからない。
 まず、なんで俺に許嫁なんて居るんだ?母さんや父さんから何も聞いてないんだが。

「もしかして何も聞いてないの?」
「うん?」
「じゃあ今、お母さんにでも電話して聞いてみてよ」

 高坂さんがそう催促して来たので、俺は手馴れた操作で母さんに電話を掛けた。

「もしもし、慶哉だけど」
『あら慶ちゃん、どうしたの?』

 高校生になっても慶ちゃん呼びは前からやめて欲しいと言っているのに、一向に辞める気配がないのは何故だろうか。

「急で悪いんだけど……俺って許嫁とか居るの?」
『居るけど、それがどうかしたの?』
「別にどうもしないけど……、因みにその子の名前は?」
『あら、忘れちゃったの?‴高坂茉優‴ちゃんよ』

 その名前を聞いた瞬間に電話を切った。
 しかし忘れたも何も聞いた覚えすらないんだが。

「ね?本当だったでしょ?」

 高坂さんがニヤニヤしながら寄ってきて、急に近づいて来たためか顔と顔が近い。
 高坂さんも予想以上に近かったらしく、顔を紅潮させてすぐに距離を置いた。

「ま、まさか本当だったとは思わなかったなー」

 実を言うと、俺も高坂さんの顔が近すぎてかなりドキドキしていた。
 あんなにも可愛い顔を近くで見てドキドキしない人は誰一人としていないだろう。

「加賀くん」
「は、はい」

 急に名前を呼ばれ、ちょっとビックリする。

「今から学校抜け出してどこかに遊びに行こっか」
「……え?」
「どうせ今日は始業式だけだし、抜け出しても変わらないよ」

 高坂さんの思わぬ一言に吃驚してしまった。

「高坂さん真面目なタイプだと思ってたけど、意外にヤンチャなんだね」
「覚えてない?私小さい頃からヤンチャだったけど」

 俺はこの子と小さい頃に会ったことがあるのか?小さい頃の記憶は大体忘れちゃってるから何も覚えてないんだよな……

「ま、いいや!映画にでも行こ!」

 そう言って高坂さんは俺の手を引いた。
 こんなにも超絶美少女とのデートならしょうがない、千載一遇のチャンスなのだから。
 そうして俺と高坂さんは、雲や教室の皆の視線を気にせず映画館へと向かったのである。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

冗談のつもりでいたら本気だったらしい

下菊みこと
恋愛
やばいタイプのヤンデレに捕まってしまったお話。 めちゃくちゃご都合主義のSS。 小説家になろう様でも投稿しています。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

覚えたての催眠術で幼馴染(悔しいが美少女)の弱味を握ろうとしたら俺のことを好きだとカミングアウトされたのだが、この後どうしたらいい?

みずがめ
恋愛
覚えたての催眠術を幼馴染で試してみた。結果は大成功。催眠術にかかった幼馴染は俺の言うことをなんでも聞くようになった。 普段からわがままな幼馴染の従順な姿に、ある考えが思いつく。 「そうだ、弱味を聞き出そう」 弱点を知れば俺の前で好き勝手なことをされずに済む。催眠術の力で口を割らせようとしたのだが。 「あたしの好きな人は、マーくん……」 幼馴染がカミングアウトしたのは俺の名前だった。 よく見れば美少女となっていた幼馴染からの告白。俺は一体どうすればいいんだ?

小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!

竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」 俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。 彼女の名前は下野ルカ。 幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。 俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。 だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている! 堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

処理中です...