僕らの10パーセントは無限大

華子

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傘不要の降水確率と、チャップリンの名言と

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 不安になり、自身のお腹へ手をあてがう。「食べられそう?」と独りごちて聞くけれど、無論返答はもらえないから、わたしはそこから手を離す。

 食卓の椅子に腰を下ろし、流れていたテレビのニュース番組に目を向ける。すると画面の中のキャスターは、明るい表情でこう言った。

「今日の降水確率は、10パーセントです。傘はほとんどの地域で、必要ないでしょう」

 続いて全国のお天気です、とそのキャスターが言うと同時に、クローズアップされていた関東地方から、日本列島全体の絵図に切り替わった。

 四角い枠の中、左上に表示されていた時刻が一分の時間ときを刻む瞬間を見てしまい、ゾッとした。

「和子!」

 キッチンを飛び出したお母さんが、慌ててわたしに駆け寄ったのは、おそらくわたしが卓上にあった花瓶をテレビに投げつけたから。

 液晶画面も花瓶も割れることはなかったけれど、お母さんの度肝を一瞬にして抜くような、大きな音は立ててしまったと思う。

 自分でもわからない、なんでこんなことをしちゃったのか。

 お母さんに怒られることを覚悟して、背筋がぴんと伸びるけれど、なんと彼女は怒るどころか、わたしの身体を心配してきた。

「大丈夫、和子!?怪我はない!?」

 その刹那、不快を感じた。どうして以前のようにわたしと接してくれないのと、怒りを覚えた。

 ねえ、お母さん。
 わたしが学校へ行かなくなっても、テレビに花瓶を放り投げたりしても、理由ひとつ聞かずに注意すらしなくなったのは、やっぱりわたしが、もうすぐ死んじゃう人間だから?
 だからもう、言えないの?だからもう、諦めてるの?
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