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もう逃げねぇよ
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静寂が降りていた。
暗がりの中、蓮の視線が修一をとらえたまま離れない。
待っている。
それがわかるからこそ、胸の奥がじわじわと焦れていく。
どうしたいのかは、もう決まっていた。
ただ、それを認めるのが怖かっただけだ。
――だけど、もういいだろ。
ここまで来て、まだ逃げる理由なんかあるか?
修一はゆっくりと息を吐いた。
それから、ためらいがちに手を伸ばし、蓮の手を取る。
大きな掌。
今まで何度も引かれ、拒んできた手。
その手を、自分の頬にそっと当てた。
ひやりとした指先が触れる。
蓮の瞳が、わずかに見開かれた。
それでも何も言わず、ただ静かに見つめてくる。
修一は喉を鳴らし、少しだけ笑った。
「……もう逃げねぇよ」
その言葉を聞いた瞬間、蓮の目が細められる。
静かに、でもどこか嬉しそうに。
「……じゃあ、もういいですね?」
低く、甘い声だった。
次の瞬間、身体が軽く浮き、柔らかなシーツに沈み込む。
押し倒されたと気づいたときには、蓮の腕がしっかりと修一を囲い込んでいた。
「っ、おい……」
戸惑いの声を上げるよりも早く、蓮の顔がすぐ近くまで迫る。
その目の奥に、長い間押し殺してきた熱が滲んでいるのがわかった。
「言いましたよね、もう逃げないって」
余裕のある口調のはずなのに、どこか切羽詰まった響きが混じっている。
それが、妙にくすぐったかった。
「……勝手にしろよ」
ぼそりと呟くと、蓮の表情が一瞬だけ崩れる。
次の瞬間、唇がふれる。
ゆっくりと、確かめるように。
静かな夜の中、二人の間に流れていたものが、ようやく形になった瞬間だった。
暗がりの中、蓮の視線が修一をとらえたまま離れない。
待っている。
それがわかるからこそ、胸の奥がじわじわと焦れていく。
どうしたいのかは、もう決まっていた。
ただ、それを認めるのが怖かっただけだ。
――だけど、もういいだろ。
ここまで来て、まだ逃げる理由なんかあるか?
修一はゆっくりと息を吐いた。
それから、ためらいがちに手を伸ばし、蓮の手を取る。
大きな掌。
今まで何度も引かれ、拒んできた手。
その手を、自分の頬にそっと当てた。
ひやりとした指先が触れる。
蓮の瞳が、わずかに見開かれた。
それでも何も言わず、ただ静かに見つめてくる。
修一は喉を鳴らし、少しだけ笑った。
「……もう逃げねぇよ」
その言葉を聞いた瞬間、蓮の目が細められる。
静かに、でもどこか嬉しそうに。
「……じゃあ、もういいですね?」
低く、甘い声だった。
次の瞬間、身体が軽く浮き、柔らかなシーツに沈み込む。
押し倒されたと気づいたときには、蓮の腕がしっかりと修一を囲い込んでいた。
「っ、おい……」
戸惑いの声を上げるよりも早く、蓮の顔がすぐ近くまで迫る。
その目の奥に、長い間押し殺してきた熱が滲んでいるのがわかった。
「言いましたよね、もう逃げないって」
余裕のある口調のはずなのに、どこか切羽詰まった響きが混じっている。
それが、妙にくすぐったかった。
「……勝手にしろよ」
ぼそりと呟くと、蓮の表情が一瞬だけ崩れる。
次の瞬間、唇がふれる。
ゆっくりと、確かめるように。
静かな夜の中、二人の間に流れていたものが、ようやく形になった瞬間だった。
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