リスタート・オーバー ～人生詰んだおっさん、愛を知る～

朝焼けの中、あなたを抱きしめる

　窓の外が、ほんのりと白み始めている。

　静かな朝。

　部屋の空気はまだ夜の余韻を残していて、ほんのりとした熱が漂っていた。

　蓮はゆっくりと目を開けた。

　腕の中には、修一がいる。

　掛け布団の隙間から覗く肩は、微かに汗ばんでいて、指先でなぞればまだ昨夜の熱が残っているのがわかる。

　静かに寝息を立てる修一の横顔を見つめながら、蓮はゆっくりと息を吐いた。

　ようやく、この人を自分の腕の中に閉じ込めることができた。

　何度も焦がれ、何度も手を伸ばし、それでも届かなかった距離が、今はこんなにも近い。

　蓮はそっと修一の髪を指先で梳いた。

　触れるたびに、確かなぬくもりが伝わる。

　それがたまらなく愛おしい。

「……倉持さん」

　低く囁くと、修一が僅かに眉を寄せる。

「……ん……」

　うっすらと目を開け、ぼんやりとした顔で蓮を見上げた。

　寝起きの修一は、いつも以上に無防備で、どこか子どもみたいに見える。

　それが妙に可愛くて、蓮は微笑んだ。

「よく眠れましたか？」

「……うるせぇ、朝からいちいち聞くな」

　修一は顔を背けながら、布団を少し引き上げる。

　その仕草が、昨夜の記憶を思い出したようで、耳元が赤くなっているのが見えた。

　蓮はますます愛しさを感じ、つい修一の腕を引き寄せる。

「もう少し、このままでもいいですよね」

「……勝手にしろ」

　そう言いながらも、修一は抵抗しなかった。

　肌と肌が触れ合う。

　お互いの体温が溶け合い、昨夜の余韻が再び蘇る。

　蓮はゆっくりと修一の背を撫でた。

「倉持さん」

「……ん？」

「ちゃんと、俺のものになってくれましたね」

「……調子に乗るな」

　呆れたように言いながらも、修一の口元がわずかに緩む。

　蓮はその表情を見逃さず、満足げに目を細めた。

　窓の外は、朝焼けに染まり始めている。

　夜は終わった。

　けれど、修一はもうどこにも行かない。

　そう思いながら、蓮はもう一度、腕の中の修一を強く抱きしめた。