俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始

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こいつといると、無駄に気を遣わなくていい

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悠真は、屋上のフェンスにもたれながら、手にしたパンをかじった。  

颯斗と一緒に昼を過ごすようになってから、気づけばここが定位置になっていた。  

昼休みになると、女子たちに囲まれ、何かと騒がしくなる。  

購買へ行けば、「藤堂くん、こっちで食べようよ」と声をかけられ、教室にいても弁当を差し出される。  

そんな状態が連日続いたことで、悠真はまともに食事すら取れない日が増えていた。  

そんなとき、たまたま屋上で颯斗と顔を合わせたことがきっかけで、気づけばここで昼を過ごすのが習慣になっていた。  

颯斗は余計なことを言わない。  

わざわざ話を広げようともせず、ただ黙々と弁当を食べている。  

それが悠真にとって、妙に心地よかった。  

「……」  

ふと、悠真は周囲の空気を意識する。  

ここには、自分を騒がせる者はいない。  

颯斗が隣にいるだけで、他の生徒が気軽に近づいてくることもない。  

それどころか、颯斗の静かな空気が周囲に伝わるのか、ここでは妙な緊張感すらない。  

悠真は、改めて思った。  

「こいつといると、無駄に気を遣わなくていい」  

他の奴らのように、無理に話を盛り上げようとすることもない。  

転入生だからといって、特別扱いしてくるわけでもない。  

妙な気遣いも遠慮もなく、ただ自然にそこにいるだけ。  

それが、悠真にとっては新鮮だった。  

今まで、誰かと一緒にいて気を抜ける時間なんてあっただろうか。  

仕事をしていた頃は、同僚や取引先との会話では常に言葉を選び、上司の機嫌を伺いながら動いていた。  

転生してからも、周囲の過剰な興味に対して、いちいち対応を考えなければならなかった。  

だが、颯斗といるときは違う。  

何も考えずに、ただそこにいるだけでいい。  

「……楽だな」  

思わず、ぽつりと呟く。  

「……なんだ、お前、気持ち悪い顔してるぞ」  

隣から、低い声が聞こえた。  

悠真が顔を上げると、颯斗が半眼でこちらを見ていた。  

「は? いや、なんでもない」  

そう言って誤魔化しながら、悠真は自分の口元に浮かんでいた笑みを意識して消した。  

颯斗は、特に追及することもなく、再び視線を弁当に戻した。  

それがまた、悠真にとってはありがたかった。  

こうして、悠真にとって颯斗は「学園で唯一頼れる存在」になっていった。
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