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お前が王子役以外、ありえないらしい
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「それでは、今年の文化祭でクラスがやる演劇の演目は、『学園恋愛ファンタジー』に決定しました!」
学級委員の宣言に、教室内が一気にざわめいた。
「やった!ファンタジー系とか絶対映えるじゃん!」
「衣装とかめっちゃこだわれそう!」
「脚本はどうするの?」
それぞれが期待に胸を膨らませる中、悠真は少し距離を取って、その様子を眺めていた。
(まあ、俺は転入生だし、裏方に回るだろ)
文化祭の準備に関わること自体は別に構わないが、あまり目立つ役割は避けたい。
今ですらクラス内で過剰に注目を集めているのに、演劇の主役でもやろうものならさらに騒がれるのが目に見えている。
だが、その目論見は数分後、あっさりと崩れ去ることになった。
「じゃあ、配役決めをしよう!」
学級委員の号令とともに、配役の話し合いが始まった。
「まず、王子役は――」
「藤堂くんで決まりでしょ!」
誰かが言った瞬間、教室内の女子たちが一斉に盛り上がる。
「え、そりゃそうだよね!」
「藤堂くん以外に王子が務まる人いないし!」
「このために転入してきたとしか思えない!」
「待って、それ運命すぎない?」
「これはもう、異論なしってことで」
「……は?」
悠真は、まったく状況が理解できなかった。
今、何が起こった?
いや、どう考えても議論の余地なく王子役が自分に決まったように見える。
何の審議もなく、むしろ当然という前提で話が進んでいるのが異様だった。
「ちょっと待て、俺、転入生なんだけど?」
思わず手を挙げて異議を唱える。
だが、女子たちはまったく聞く耳を持たなかった。
「転入生とか関係ないよ!」
「むしろ転入生だからこそ、謎めいた王子感が増してる!」
「分かる!異国の王子が留学してきたみたいな雰囲気あるし!」
「異国の王子…?」
悠真は、自分が知らないうちにとんでもないキャラ設定を付与されていることに戦慄した。
何かおかしくないか?
演技経験とか関係なく、完全に見た目だけで決められている気がする。
そう思って隣を見ると、颯斗が冷静に腕を組んでいた。
「お前のビジュアル的に、誰も異論を挟めないんだろ」
「……そんな理由で決まるのか?」
「決まるんじゃねえの?」
当然だろ、と言わんばかりの表情で言われ、悠真は言葉を失った。
気づけば、男子たちも特に異論を挟んでいない。
「いや、俺が王子役とか、別にやらなくても」
「じゃあ、代わりに誰がやる?」
学級委員がクラスを見渡すと、男子たちは一斉に視線を逸らした。
「……」
誰も手を挙げない。
「だよねー!」
「藤堂くん以外に王子役なんて無理!」
もはや、悠真が何を言っても覆らない空気になっていた。
「……」
断る選択肢がないことを悟った悠真は、静かにため息をついた。
こうして、藤堂悠真は学園恋愛ファンタジーの王子役に決定したのだった。
学級委員の宣言に、教室内が一気にざわめいた。
「やった!ファンタジー系とか絶対映えるじゃん!」
「衣装とかめっちゃこだわれそう!」
「脚本はどうするの?」
それぞれが期待に胸を膨らませる中、悠真は少し距離を取って、その様子を眺めていた。
(まあ、俺は転入生だし、裏方に回るだろ)
文化祭の準備に関わること自体は別に構わないが、あまり目立つ役割は避けたい。
今ですらクラス内で過剰に注目を集めているのに、演劇の主役でもやろうものならさらに騒がれるのが目に見えている。
だが、その目論見は数分後、あっさりと崩れ去ることになった。
「じゃあ、配役決めをしよう!」
学級委員の号令とともに、配役の話し合いが始まった。
「まず、王子役は――」
「藤堂くんで決まりでしょ!」
誰かが言った瞬間、教室内の女子たちが一斉に盛り上がる。
「え、そりゃそうだよね!」
「藤堂くん以外に王子が務まる人いないし!」
「このために転入してきたとしか思えない!」
「待って、それ運命すぎない?」
「これはもう、異論なしってことで」
「……は?」
悠真は、まったく状況が理解できなかった。
今、何が起こった?
いや、どう考えても議論の余地なく王子役が自分に決まったように見える。
何の審議もなく、むしろ当然という前提で話が進んでいるのが異様だった。
「ちょっと待て、俺、転入生なんだけど?」
思わず手を挙げて異議を唱える。
だが、女子たちはまったく聞く耳を持たなかった。
「転入生とか関係ないよ!」
「むしろ転入生だからこそ、謎めいた王子感が増してる!」
「分かる!異国の王子が留学してきたみたいな雰囲気あるし!」
「異国の王子…?」
悠真は、自分が知らないうちにとんでもないキャラ設定を付与されていることに戦慄した。
何かおかしくないか?
演技経験とか関係なく、完全に見た目だけで決められている気がする。
そう思って隣を見ると、颯斗が冷静に腕を組んでいた。
「お前のビジュアル的に、誰も異論を挟めないんだろ」
「……そんな理由で決まるのか?」
「決まるんじゃねえの?」
当然だろ、と言わんばかりの表情で言われ、悠真は言葉を失った。
気づけば、男子たちも特に異論を挟んでいない。
「いや、俺が王子役とか、別にやらなくても」
「じゃあ、代わりに誰がやる?」
学級委員がクラスを見渡すと、男子たちは一斉に視線を逸らした。
「……」
誰も手を挙げない。
「だよねー!」
「藤堂くん以外に王子役なんて無理!」
もはや、悠真が何を言っても覆らない空気になっていた。
「……」
断る選択肢がないことを悟った悠真は、静かにため息をついた。
こうして、藤堂悠真は学園恋愛ファンタジーの王子役に決定したのだった。
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