俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件～転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

こいつ、完璧すぎない？

衣装を着替えた悠真は、舞台裏の大きな鏡の前で自分の姿を見て、思わず沈黙した。  

白を基調とした軍服風のジャケットは、細身のシルエットを際立たせるように仕立てられている。  

胸元には金のチェーンが装飾され、袖口の刺繍や肩章のデザインも細かい。  

黒のスラックスとブーツが脚のラインをより引き締めて見せ、全体的に気品のある雰囲気を醸し出していた。  

その姿を見て、衣装担当の女子が息を呑んだ。  

「……ちょっと待って、藤堂くん、やばくない？」  

他のクラスメイトも、次々と視線を向ける。  

「おい、まじで漫画のキャラが現実に出てきたみたいなんだが…」  

「いや、もうこれ、完全に本物の王子じゃん」  

「すご…ステージ映えどころの話じゃない」  

ざわめきが広がる中、悠真はただ一人、冷静に自分の姿を見つめていた。  

（いや、俺はただ着替えただけなんだが…）  

特に髪型をセットしたわけでもない。  

普段通りの黒髪が、ジャケットの白と対比になって映えているだけだろう。  

だが、こうして全身を改めて見ると、自分でも若干引いてしまうほどの仕上がりだった。  

（転生する前の俺なんて、クタクタのスーツでボロボロになってたのに…）  

朝まで仕事をして、ほぼ仮眠だけで出社し、コンビニのコーヒー片手に満員電車に揺られる。  

そんな日々を送っていた男が、今は「学園の王子」として文化祭の舞台に立とうとしている。  

（ギャップがひどすぎるだろ…）  

悠真は、微妙な気持ちで鏡から視線を外した。  

「藤堂くん、準備できた？」  

クラスメイトが声をかける。  

「……まあな」  

言葉とは裏腹に、内心ではまだ状況を受け入れられていなかった。  

開演直前、舞台袖に向かおうとすると、隣にいた颯斗がぼそっと呟いた。  

「お前、見た目だけなら完璧な王子だな」  

悠真は、一瞬だけ目を細めた。  

「見た目だけなら、な」  

そして、心の中で小さくツッコむ。  

（中身は社畜なんだが…）  

舞台の幕が開く時間は、もうすぐだった。