俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始

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お前、王子じゃなくて演劇部の顧問やれよ

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悠真は、教室の壁に貼られた進行スケジュール表を眺めていた。

クラスの誰かが印刷し、見やすいように書き直したものだ。

文化祭までのスケジュールが明確に記され、各担当ごとの締切も整理されている。

クラスメイトたちは、それを基準に動き始めていた。

「小道具班、今週中に大道具のリスト作れる?」

「練習スケジュール、次の週末に全体リハーサル入れる感じでいい?」

「脚本、あとちょっとで完成だから、ギリ間に合うと思う!」

悠真は、彼らが自然に準備を進めているのを見て、胸をなでおろした。

「まあ、これならなんとかなるか」

台本が完成していない時点で管理体制に危機感を抱き、気づけばスケジュールを組んでいた。

おかげで、文化祭の準備は明確な方向性を持ち、ようやく形になり始めた。

だが――

「……俺、王子役だったよな?」

悠真は、自分の立場を思い出して静かに頭を抱えた。

本来なら、台詞を覚えて役に集中するべき立場のはずだ。

なのに、気づけば進捗管理をして、クラス全体を仕切っている。

自分がどこで間違えたのか、もはや分からない。

(俺…なんでこんなに管理しようとしてるんだ?)

役者としての仕事よりも、演劇全体の流れを整えることを優先している。

誰かが締切を守れていないと気になり、問題があれば解決策を考えずにはいられない。

(結局、社畜時代の癖が抜けてないってことか…)

悠真は、自分の行動を振り返ってため息をついた。

そのとき、隣でクスクスと笑う声が聞こえた。

「…なんだよ」

悠真が視線を向けると、颯斗が呆れたように肩をすくめていた。

「いや、お前、マネージャーになったほうが向いてるんじゃないか?」

「は?」

「どう見ても、役者より裏方のほうが適性あるだろ」

颯斗は、悠真が張り出されたスケジュール表を見ているのを確認しながら、さらに続ける。

「なんなら演劇部の顧問とかやったほうがいいんじゃねえか?」

「俺、ただの高校生なんだけど」

悠真が冷静に突っ込むと、颯斗は笑いながら肩をすくめた。

「その発言が普通の高校生っぽくねえんだよ」

悠真は、それを聞いて絶句した。

確かに、自分の行動を振り返ると、明らかに「高校生として普通ではない」動き方をしている。

締切を管理し、進捗を確認し、全体の流れを整える。

まるで、仕事をするかのように。

(いや、待てよ…これ、もしかして俺の性格的な問題か?)

「……」

悠真は、思わず自分の手を見つめた。

これまで当たり前のようにやっていたことが、他人から見ると異常に映っていた。

けれど、不思議と違和感はなかった。

むしろ、進捗が管理され、物事がスムーズに進んでいる現状を見て、安堵すら覚えていた。

悠真は、ゆっくりと息を吐いた。

「……まあ、誰かがやらないと間に合わないしな」

「ほら、そういうところだぞ」

颯斗は呆れたように言ったが、どこか楽しそうだった。

悠真は、苦笑しながら彼の言葉を受け流した。

こうして、颯斗の指摘をきっかけに、悠真は自分が「管理する側に回ることが当たり前」になっていることを自覚した。

だが、それに対して否定的な感情は湧かなかった。

むしろ、それが自分の性質なのだと、自然に受け入れられる気がした。

この瞬間、悠真は初めて「転生しても、本質は変わらないのかもしれない」と思った。
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