俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始

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王子役って、進捗管理も含まれてましたっけ?

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悠真は、演劇の準備が進む教室を見渡していた。  

文化祭まで、あと三週間。  

本来ならば、すでに配役ごとの練習が始まり、衣装や舞台装置の準備が順調に進んでいなければならない時期だった。  

だが、現実はどうだろうか。  

「ねえ、このシーンの台詞、なんかもっと感動的にできない?」  

「確かに!ちょっと脚本担当に相談しよっか!」  

「衣装のデザイン、やっぱりもう少し派手にしたほうがいいかな?」  

演劇の中心メンバーは、楽しそうに意見を出し合っている。  

いや、意見を出し合うのはいい。  

むしろ、作品のクオリティを上げるためには必要な過程だ。  

だが、悠真には一つ、どうしても気になることがあった。  

「…で、その変更案、いつまでに決めるんだ?」  

言った瞬間、周囲の会話が止まる。  

「え? いつまでって…うーん」  

「まあ、台本はまだ完成してないし、それができてからでもいいんじゃない?」  

「確かに!じっくり考えていいもの作ろう!」  

悠真は、静かにため息をついた。  

(このままだと間に合わないだろ…いや、間に合ったとしてもクオリティがヤバい)  

締切の意識がないまま進められるプロジェクトほど、恐ろしいものはない。  

前世で何度も経験した。  

「いいものを作ろう」という理想論だけが先行し、実際の進捗が伴わず、結果として締切直前に地獄を見る。  

悠真は、机の上のノートを手に取った。  

もう、やるしかない。  

「スケジュール表、作るか」  

そう呟くと、すぐにノートのページをめくり、ペンを走らせた。  

○日までに台本完成 

○日から立ち稽古開始

衣装制作は△日までにフィードバック

最終リハーサルは文化祭の前々日  

一つ一つ、作業の期限を決め、整理していく。  

気づけば、悠真は完全に裏方気質になっていた。  

「王子役って、進捗管理も含まれてましたっけ?」  

そんな疑問が頭をよぎったが、考えるだけ無駄だった。  

これをしなければ、確実に間に合わない。  

「おーい、藤堂、何やってんの?」  

クラスメイトが覗き込む。  

「スケジュール表作ってる」  

「え? 何それ」  

悠真は、書き上げたノートのページを破り、手渡した。  

「これ、文化祭までの進行表。台本の締切、練習の開始日、衣装や小道具の完成予定日をまとめた」  

クラスメイトは、それをじっと見つめる。  

「…え、なにこのスケジュール、すごい…!」  

「めっちゃ細かいんだけど」  

「これがあれば、やることが一目で分かるじゃん!」  

次第に、クラスメイトたちがその紙を回し始める。  

「これ、印刷して配る?」  

「いや、壁に貼ったほうがよくない?」  

「確かに!進捗をみんなで共有できるし!」  

悠真は、彼らの反応を見ながら、ごく自然に言った。  

「いや、普通だろ?」  

すると、すぐ隣から呆れたような声がした。  

「普通じゃねえよ」  

颯斗が、じっとこちらを見ていた。  

「転入生が勝手にスケジュール組んで、それをクラス全体が採用するのが普通なわけないだろ」  

「…まあ、そうか」  

悠真は、改めて周囲を見回す。  

気づけば、クラス全員が「藤堂のスケジュール表」を基準に動き始めていた。  

まるで、もともと決まっていたルールのように、誰も違和感を抱いていない。  

(……これ、いつもの職場と何が違うんだ?)  

悠真は、ふとそんなことを考えながら、黙ってノートを閉じた。
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