俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始

文字の大きさ
30 / 103

俺、最近やけに意識してないか?

しおりを挟む
修学旅行が終わり、日常が戻ってきた。  

だが、悠真の中には妙な違和感が残っていた。  

何かが決定的に変わったわけではない。  

颯斗はこれまでと同じように接してくるし、クラスの女子たちは相変わらず悠真を取り囲んでいる。  

それなのに――  

(俺、なんでこんなに颯斗のことを意識してるんだ?)  

昼休み、悠真がいつものように弁当を広げると、当然のように颯斗が隣に座った。  

「お前、相変わらずモテすぎて大変そうだな」  

「……まあな」  

いつものやり取りのはずなのに、なぜか居心地が落ち着かない。  

前なら、颯斗が隣にいるだけで「女子たちの対応をしなくて済む」と安心していたはずだ。  

だが今は――  

(いや、なんでこんなに近くに座るんだ? もうちょっと間隔あけてもよくないか?)  

そう思って少しだけ距離を取ろうとしたが、その瞬間、クラスの女子たちの声が耳に入った。  

「悠真くん、午後の授業の後ちょっと時間ある?」  

「これ、今度のイベントのチケットなんだけど…」  

(また来た)  

ここ最近、悠真へのアプローチはさらに増していた。  

文化祭、修学旅行を経て、悠真を狙う女子たちの動きはさらに活発になっている。  

だが、そのたびに颯斗が先に動く。  

「悠真、午後は予定あるだろ」  

「悪いけど、こいつ借りるから」  

女子たちは「えー」と不満そうにしながらも、颯斗の言葉にはなぜか逆らえない。  

悠真は、その様子を横目で見ながら弁当の箸を止めた。  

(……颯斗、なんでこんなに俺を遠ざけようとするんだ?)  

以前はただ「助かる」としか思わなかった。  

けれど、今は違う。  

「悠真くん、ちょっといい?」  

昼食後、悠真が席を立つと、別の女子が声をかけてきた。  

「あー、ちょっと…」  

どうやって断るべきか考えた瞬間、またしても颯斗が悠真の前に立った。  

「悠真、行くぞ」  

「え、どこに?」  

「いいから」  

そう言って、颯斗は悠真の腕を軽く引いた。  

女子たちが戸惑った顔をしているが、颯斗はまったく気にしていない。  

結局、悠真はそのまま颯斗に引っ張られ、廊下を歩くことになった。  

(……おかしい)  

これまでも、颯斗は女子たちの対応をサポートしてくれていた。  

だが、ここまで徹底的だっただろうか?  

それに――  

(なんで俺、こいつの足音まで気にしてるんだ?)  

歩調が合う。  

隣にいるのが当たり前になっている。  

そのことが、なぜか悠真の中で妙に引っかかる。  

校舎の階段を上がり、静かな廊下に入ったところで、颯斗が立ち止まった。  

「……お前、最近やけに意識してないか?」  

「……は?」  

悠真の足が止まる。  

(今、何て言った?)  

「いや、何言って…」  

そう言いかけたが、颯斗は真顔のままだった。  

「俺のこと、前より気にしてるよな」  

「……っ」  

言葉が詰まる。  

図星だった。  

悠真は、無意識に目を逸らす。  

「そ、そんなことねえよ」  

「本当に?」  

颯斗の低い声が響く。  

悠真は、息を飲んだ。  

(……なに、この空気)  

軽い冗談でもなく、からかいでもない。  

颯斗の目は、まっすぐこちらを見ていた。  

悠真は、その視線から逃げるように、わざと肩をすくめた。  

「意識なんてしてねえって。お前が勝手にそう思ってるだけだろ」  

「そうか?」  

颯斗は、それ以上何も言わなかった。  

だが、そのまなざしは「嘘だろ」と言っているように思えた。  

悠真は、心臓の鼓動が妙に速くなっていることに気づいた。  

(……なんだこれ)  

これまで、こんな感覚になったことはなかった。  

なのに、颯斗に見つめられると、なぜか胸がざわつく。  

悠真は、静かに息を吐き出した。  

(いや、考えすぎだろ)  

男子同士なんだ。  

変に意識するほうがおかしい。  

そう言い聞かせながら、悠真は足を踏み出した。  

だが、心の奥に生まれた違和感は、どうしても消えてくれなかった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。

はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。 2023.04.03 閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m お待たせしています。 お待ちくださると幸いです。 2023.04.15 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。 m(_ _)m 更新頻度が遅く、申し訳ないです。 今月中には完結できたらと思っています。 2023.04.17 完結しました。 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます! すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。

穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜

春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、 癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!? トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。 彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!? 
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて―― 運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない! 恋愛感情もまだわからない! 
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。 個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!? 
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする 愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ! 毎日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新) 基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~

朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」 普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。 史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。 その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。 外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。 いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。 領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。 彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。 やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。 無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。 (この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)

推し様たちを法廷で守ったら気に入られちゃいました!?〜前世で一流弁護士の僕が華麗に悪役を弁護します〜

ホノム
BL
下級兵の僕はある日一流弁護士として生きた前世を思い出した。 ――この世界、前世で好きだったBLゲームの中じゃん! ここは「英雄族」と「ヴィラン族」に分かれて二千年もの間争っている世界で、ヴィランは迫害され冤罪に苦しむ存在――いやっ僕ヴィランたち全員箱推しなんですけど。 これは見過ごせない……! 腐敗した司法、社交界の陰謀、国家規模の裁判戦争――全てを覆して〝弁護人〟として推したちを守ろうとしたら、推し皆が何やら僕の周りで喧嘩を始めて…? ちょっと困るって!これは法的事案だよ……!

悪役側のモブになっても推しを拝みたい。【完結】

瑳来
BL
大学生でホストでオタクの如月杏樹はホストの仕事をした帰り道、自分のお客に刺されてしまう。 そして、気がついたら自分の夢中になっていたBLゲームのモブキャラになっていた! ……ま、推しを拝めるからいっか! てな感じで、ほのぼのと生きていこうと心に決めたのであった。 ウィル様のおまけにて完結致しました。 長い間お付き合い頂きありがとうございました!

転生したら乙女ゲームのモブキャラだったのでモブハーレム作ろうとしたら…BLな方向になるのだが

松林 松茸
BL
私は「南 明日香」という平凡な会社員だった。 ありふれた生活と隠していたオタク趣味。それだけで満足な生活だった。 あの日までは。 気が付くと大好きだった乙女ゲーム“ときめき魔法学院”のモブキャラ「レナンジェス=ハックマン子爵家長男」に転生していた。 (無いものがある!これは…モブキャラハーレムを作らなくては!!) その野望を実現すべく計画を練るが…アーな方向へ向かってしまう。 元日本人女性の異世界生活は如何に? ※カクヨム様、小説家になろう様で同時連載しております。 5月23日から毎日、昼12時更新します。

【完結】父を探して異世界転生したら男なのに歌姫になってしまったっぽい

御堂あゆこ
BL
超人気芸能人として活躍していた男主人公が、痴情のもつれで、女性に刺され、死んでしまう。 生前の行いから、地獄行き確定と思われたが、閻魔様の気まぐれで、異世界転生することになる。 地獄行き回避の条件は、同じ世界に転生した父親を探し出し、罪を償うことだった。 転生した主人公は、仲間の助けを得ながら、父を探して旅をし、成長していく。 ※含まれる要素 異世界転生、男主人公、ファンタジー、ブロマンス、BL的な表現、恋愛 ※小説家になろうに重複投稿しています

処理中です...