俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件～転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です

好きなら、それだけでいいはずなのに

付き合っているのに、誰にも知られていない。  
それが、こんなにも心をざわつかせるものだなんて、思ってもみなかった。  

颯斗と過ごす時間は、今でも十分に幸せだ。  
並んで歩くときの無言の安心感や、ふとした瞬間に触れる手の温もり。  
それだけで満たされると思っていたし、余計なことは言わなくていい、そう信じていた。  

けれど最近、時々ふとした瞬間に、颯斗が何かをこらえているように見える。  
些細な沈黙。目を伏せる仕草。笑っているのに、心のどこかが冷めているような、そんな表情。  

そのたびに、胸の奥にひやりとしたものが広がる。  
まるで、自分の手から何かがこぼれ落ちていくような、そんな感覚。  

自分の曖昧な態度が、彼を不安にさせているのかもしれない。  
そう考えると、喉の奥が詰まるような気持ちになる。  

俺は、選んだんだ。  
ふたりのことを黙っていようって、決めたのは俺自身だ。  
それが彼の負担になっているとしたら、俺はただ、自分を守っていただけなんじゃないか。  

今さらそんなことを考えても遅いのかもしれないけど、  
それでも、思ってしまう。  

俺が選んだ“黙ってる”っていう答えが、正しかったのか、分からない。  

好きなら、それだけでいいはずなのに。  
好きって気持ちだけで、全部、うまくいくはずなのに。  

どうしてこんなに、心が揺れるんだろう。