オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる～ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか？

陽翔、ついに問い詰める

室内には、かすかに時計の針が進む音だけが響いていた。  

先ほどまで軽く交わされていた雑談も、今はすっかり途切れ、どちらからともなく沈黙が落ちる。  

ソファに座ったまま、陽翔は目の前の榊をじっと見つめた。  

榊はそれに気づくと、不思議そうに首を傾げる。  

「……なんや、そんな真剣な顔して」  

その気楽な口調が、なぜか陽翔の中の何かを刺激した。  

（なんや、じゃないだろ）  

こっちはずっと考えていたのに。  

榊は本当に、何も気づいていないのか？  

それとも、気づいていながら流しているのか？  

陽翔は少し息を整えてから、静かに口を開いた。  

「課長、俺のこと、どう思ってます？」  

瞬間、榊の動きが止まる。  

「……え？」  

思ってもいなかったのか、まばたきをしながら陽翔を見返してくる。  

「なんでそんなこと聞くん？」  

まるで「そんなの考えたこともない」というような反応だった。  

その無自覚さに、陽翔の胸の奥で何かが弾ける。  

（……ふざけるな）  

昨日のこともある。  

あの寝言のような発言は、榊の本音だったのか、それともただの戯言だったのか。  

どちらにせよ、自分はあの言葉を聞いた瞬間から、もう誤魔化せなくなった。  

「なんとなく気になる」とか、「ちょっと意識してしまう」とか、そんな曖昧なものじゃない。  

もう、限界だった。  

「もう俺、我慢できないんで……」  

そう言いながら、陽翔は榊の肩を掴んだ。  

榊が驚いた顔を見せる間もなく、そのまま強引にソファの背に押し込む。  

「……え、ちょっ」  

戸惑いの色を浮かべたまま、榊がわずかに身じろぐ。  

だが、陽翔はそのまま動きを封じるように、榊の体を押さえ込んだ。  

思い切り驚いている榊の目を、真っ直ぐに見つめる。  

「課長」  

呼びかける声が、いつもより低く響いた。  

榊の表情に、次第に警戒の色が滲む。  

「……なんや、橘？」  

「俺、もう待てません」  

その言葉に、榊が息をのんだのが分かった。  

だが、陽翔はもう引くつもりはなかった。  

もう曖昧なままではいられない。  

こいつがどう思っているのか、今ここではっきりさせる。  

そう思いながら、陽翔はさらに顔を近づけた。