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あれ、課長、顔赤いですよ?
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営業の打ち合わせを終え、陽翔は運転席に座ると、大きく息を吐いた。
「ふー……なんとか無事に終わりましたね」
「まあ、そやな」
隣の助手席では、榊がシートを倒し気味にして、気だるそうに腕を組んでいる。
打ち合わせはスムーズに進んだが、クライアントとの細かい調整が多く、なかなか気を遣う仕事だった。
陽翔は軽く首を回しながら、車のエンジンをかける。
「課長、帰り道、コンビニ寄ります?」
「んー……特にいらんけど、お前が寄りたかったらええで」
「いや、俺も別に」
そんな他愛もない会話を交わしながら、車を発進させる。
少し渋滞気味の道路を走りながら、陽翔は片手でシフトレバーを操作した。
その瞬間――
「……あ」
榊の手と、ふと触れた。
シフトレバーの近くに置いていた榊の指先に、自分の指が軽く当たる。
一瞬の出来事だったが――
榊は明らかにわずかに肩を揺らし、すぐに手を引っ込めた。
(……いや、今の反応、絶対意識してるだろ)
ここ数日、妙に榊の態度がぎこちない。
視線をそらしたり、わざとらしく話を逸らしたり。
陽翔は、それをひそかに楽しんでいた。
助手席の榊に目を向けず、前を見たまま、何気なく口を開く。
「課長、今、俺の手触れたとき、ビクッてしましたよね?」
「してへん」
間髪入れずに返ってきた。
だが、その答え方があまりにも早すぎる。
「いや、しましたよね」
「してへんって」
「課長、俺の目見て言えます?」
「……」
無言になる榊。
陽翔は、片手でハンドルを握りながら、小さく笑った。
「お前、最近ちょっと調子乗っとらへん?」
榊がむすっとした顔で言ってくる。
「課長が面白い反応するからですよ」
そう言いながら、陽翔は横目で榊の表情を盗み見た。
普段なら、こんな挑発めいたやり取りも「はいはい」と軽く流すはずの榊が、明らかに拗ねたような顔をしている。
これは確実に、動揺している。
陽翔はさらに、もう一押ししてみることにした。
信号待ちで車を止めると、助手席に視線を向ける。
そして、じっと榊の横顔を観察した。
「……あれ?」
「なんや」
「課長、顔赤いですよ?」
榊の肩が、わずかに揺れる。
「赤ない!」
即答だった。
陽翔はますます確信する。
「いや、絶対赤いです」
「赤ない!」
「耳、ちょっと赤くなってますよ」
「気のせいや!」
「じゃあ鏡見ます?」
「いらん!」
陽翔は笑いをこらえながら、再びハンドルを握る。
これは完全に、榊のペースが崩れ始めている。
(……やっぱり、課長のほうが俺のこと意識してるな)
今までの関係では考えられなかったほど、榊の動揺が分かりやすくなっている。
陽翔は、このまま榊がどこまで意識するのか、もう少し試してみようと思った。
「ふー……なんとか無事に終わりましたね」
「まあ、そやな」
隣の助手席では、榊がシートを倒し気味にして、気だるそうに腕を組んでいる。
打ち合わせはスムーズに進んだが、クライアントとの細かい調整が多く、なかなか気を遣う仕事だった。
陽翔は軽く首を回しながら、車のエンジンをかける。
「課長、帰り道、コンビニ寄ります?」
「んー……特にいらんけど、お前が寄りたかったらええで」
「いや、俺も別に」
そんな他愛もない会話を交わしながら、車を発進させる。
少し渋滞気味の道路を走りながら、陽翔は片手でシフトレバーを操作した。
その瞬間――
「……あ」
榊の手と、ふと触れた。
シフトレバーの近くに置いていた榊の指先に、自分の指が軽く当たる。
一瞬の出来事だったが――
榊は明らかにわずかに肩を揺らし、すぐに手を引っ込めた。
(……いや、今の反応、絶対意識してるだろ)
ここ数日、妙に榊の態度がぎこちない。
視線をそらしたり、わざとらしく話を逸らしたり。
陽翔は、それをひそかに楽しんでいた。
助手席の榊に目を向けず、前を見たまま、何気なく口を開く。
「課長、今、俺の手触れたとき、ビクッてしましたよね?」
「してへん」
間髪入れずに返ってきた。
だが、その答え方があまりにも早すぎる。
「いや、しましたよね」
「してへんって」
「課長、俺の目見て言えます?」
「……」
無言になる榊。
陽翔は、片手でハンドルを握りながら、小さく笑った。
「お前、最近ちょっと調子乗っとらへん?」
榊がむすっとした顔で言ってくる。
「課長が面白い反応するからですよ」
そう言いながら、陽翔は横目で榊の表情を盗み見た。
普段なら、こんな挑発めいたやり取りも「はいはい」と軽く流すはずの榊が、明らかに拗ねたような顔をしている。
これは確実に、動揺している。
陽翔はさらに、もう一押ししてみることにした。
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そして、じっと榊の横顔を観察した。
「……あれ?」
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「課長、顔赤いですよ?」
榊の肩が、わずかに揺れる。
「赤ない!」
即答だった。
陽翔はますます確信する。
「いや、絶対赤いです」
「赤ない!」
「耳、ちょっと赤くなってますよ」
「気のせいや!」
「じゃあ鏡見ます?」
「いらん!」
陽翔は笑いをこらえながら、再びハンドルを握る。
これは完全に、榊のペースが崩れ始めている。
(……やっぱり、課長のほうが俺のこと意識してるな)
今までの関係では考えられなかったほど、榊の動揺が分かりやすくなっている。
陽翔は、このまま榊がどこまで意識するのか、もう少し試してみようと思った。
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