119 / 343
ヨレヨレ課長とエリート部下、出張先でも恋人しています
触れて、確かめて、惚れ直す
しおりを挟む
榊が布団の中に潜り込んでくると、陽翔の体温が少しずつ、しかし確実に上昇していくのがわかった。何も言わず、ただ背中にぴたりとぬくもりを感じた瞬間、自然と呼吸が浅くなった。
沈黙の中で、指先がわずかに触れた。
榊の手が、遠慮がちに陽翔の指のあたりに触れる。その感触は熱っぽくて、でも驚くほど優しかった。陽翔は視線を動かさず、けれどゆっくりと自分の指を滑らせ、榊の手にそっと重ねた。
それだけで、榊の肩がわずかに揺れるのがわかる。
「……来てくれて、ありがとうございます」
囁くように言った陽翔の声は、呼吸の合間に溶けるようだった。
榊は反応しなかった。
ほんの数秒の沈黙が流れたあと、布団の中から聞こえた声は、少し掠れていた。
「……やかましい」
その言葉に、陽翔はくすっと小さく笑った。
けれど、榊の手は陽翔の手から離れなかった。
むしろ、ぎゅっと指先を絡めるように握り返してきた。その強さが、榊の気持ちを何よりも雄弁に語っていた。
ふたりの体が、ごく自然な流れで近づいていく。
枕を挟んだ距離が、呼吸の間隔で縮まっていく。
息がかかるほど近くなった顔と顔。視線が交差し、言葉を交わさずに見つめ合う。
榊の瞳は暗がりの中でもしっかりと陽翔を映していて、どこか戸惑いと甘さが混じったような光を帯びていた。
陽翔は、その視線から目を逸らさなかった。
そして、そっと唇を重ねる。
音もなく、ゆっくりと。
榊はわずかに息を吸い込むようにして、そのキスを受け入れた。互いの唇が触れ合い、わずかな湿り気と熱が伝わる。
陽翔が少しだけ角度を変えた。より深く、より確かに、榊の存在を確かめるように。
手は榊の首筋をなぞり、肩に滑らせる。
その動きに合わせて、榊の体が小さく震えた。
部屋の照明はすでに消えていて、唯一の光源はカーテンの隙間から漏れる街の灯り。ぼんやりと浮かぶ輪郭の中で、肌の色合いと動きだけが静かに際立っていた。
唇が離れる。けれど距離は取らないまま、頬と頬がかすかに触れる。
榊の呼吸が少し乱れている。
陽翔はそのまま、指先で榊の腕をたどり、背中へと回す。
キスだけでは足りなかった。
ぬくもりを、もっと深く、もっと近くで感じたい。
ゆっくりと、榊の体を抱きしめる。
榊は抵抗しない。ただ、陽翔の腕の中に身を委ねるように静かに応えた。
布団の中の空気が、わずかに熱を持ちはじめる。
肩と肩が触れ合い、脚と脚が自然と絡む。
榊の体温が、陽翔の胸元に染み込んでいく。
肌と肌が重なるたびに、互いの息遣いが揃っていく。
キスが再び落ちる。
今度は首筋に、鎖骨のあたりに。
榊がうっすらと目を閉じて、陽翔の肩に額を寄せてきた。
静かな熱が、部屋の中で育っていく。
何も言わなくても、触れ合うだけで伝わるものがあった。
陽翔は心の中で、そっと呟いた。
この人と、何度だって確かめ合いたいと思った。
恋人だって、時々不安になる。
だからこうして触れて、重なって、また惚れ直す。
言葉よりも確かに。
何気ないぬくもりよりも深く。
腕に抱く榊の体は、思っていたよりも細くて、でもどこかしっかりしていた。
ふたりの身体が、ゆっくりと重なっていく。
リズムを合わせるように、呼吸がひとつに重なり始める。
無理をさせるつもりはなかった。けれど、榊の体が陽翔の動きに自然に応じてくれるのを感じた。
触れるたびに、甘さと同時にせつなさがこみあげてくる。
榊の指先が、シーツの上で陽翔の背中をそっとなぞる。
その微かな動きが、まるで言葉のようだった。
「……陽翔」
榊の声が、耳元で落ちた。
それは吐息のように小さくて、でもしっかりと名前を呼んでいた。
陽翔はその声に応えるように、榊を強く抱きしめた。
まるでふたりの鼓動がひとつになる瞬間を迎えたかのように、身体が静かに、そして確かに熱を結び合っていった。
声にしなくても伝わる。
それを知っているから、今夜は言葉が少なかった。
けれど、どんな夜よりも深く、ふたりは“恋人”であることを確認し合った。
沈黙の中で、指先がわずかに触れた。
榊の手が、遠慮がちに陽翔の指のあたりに触れる。その感触は熱っぽくて、でも驚くほど優しかった。陽翔は視線を動かさず、けれどゆっくりと自分の指を滑らせ、榊の手にそっと重ねた。
それだけで、榊の肩がわずかに揺れるのがわかる。
「……来てくれて、ありがとうございます」
囁くように言った陽翔の声は、呼吸の合間に溶けるようだった。
榊は反応しなかった。
ほんの数秒の沈黙が流れたあと、布団の中から聞こえた声は、少し掠れていた。
「……やかましい」
その言葉に、陽翔はくすっと小さく笑った。
けれど、榊の手は陽翔の手から離れなかった。
むしろ、ぎゅっと指先を絡めるように握り返してきた。その強さが、榊の気持ちを何よりも雄弁に語っていた。
ふたりの体が、ごく自然な流れで近づいていく。
枕を挟んだ距離が、呼吸の間隔で縮まっていく。
息がかかるほど近くなった顔と顔。視線が交差し、言葉を交わさずに見つめ合う。
榊の瞳は暗がりの中でもしっかりと陽翔を映していて、どこか戸惑いと甘さが混じったような光を帯びていた。
陽翔は、その視線から目を逸らさなかった。
そして、そっと唇を重ねる。
音もなく、ゆっくりと。
榊はわずかに息を吸い込むようにして、そのキスを受け入れた。互いの唇が触れ合い、わずかな湿り気と熱が伝わる。
陽翔が少しだけ角度を変えた。より深く、より確かに、榊の存在を確かめるように。
手は榊の首筋をなぞり、肩に滑らせる。
その動きに合わせて、榊の体が小さく震えた。
部屋の照明はすでに消えていて、唯一の光源はカーテンの隙間から漏れる街の灯り。ぼんやりと浮かぶ輪郭の中で、肌の色合いと動きだけが静かに際立っていた。
唇が離れる。けれど距離は取らないまま、頬と頬がかすかに触れる。
榊の呼吸が少し乱れている。
陽翔はそのまま、指先で榊の腕をたどり、背中へと回す。
キスだけでは足りなかった。
ぬくもりを、もっと深く、もっと近くで感じたい。
ゆっくりと、榊の体を抱きしめる。
榊は抵抗しない。ただ、陽翔の腕の中に身を委ねるように静かに応えた。
布団の中の空気が、わずかに熱を持ちはじめる。
肩と肩が触れ合い、脚と脚が自然と絡む。
榊の体温が、陽翔の胸元に染み込んでいく。
肌と肌が重なるたびに、互いの息遣いが揃っていく。
キスが再び落ちる。
今度は首筋に、鎖骨のあたりに。
榊がうっすらと目を閉じて、陽翔の肩に額を寄せてきた。
静かな熱が、部屋の中で育っていく。
何も言わなくても、触れ合うだけで伝わるものがあった。
陽翔は心の中で、そっと呟いた。
この人と、何度だって確かめ合いたいと思った。
恋人だって、時々不安になる。
だからこうして触れて、重なって、また惚れ直す。
言葉よりも確かに。
何気ないぬくもりよりも深く。
腕に抱く榊の体は、思っていたよりも細くて、でもどこかしっかりしていた。
ふたりの身体が、ゆっくりと重なっていく。
リズムを合わせるように、呼吸がひとつに重なり始める。
無理をさせるつもりはなかった。けれど、榊の体が陽翔の動きに自然に応じてくれるのを感じた。
触れるたびに、甘さと同時にせつなさがこみあげてくる。
榊の指先が、シーツの上で陽翔の背中をそっとなぞる。
その微かな動きが、まるで言葉のようだった。
「……陽翔」
榊の声が、耳元で落ちた。
それは吐息のように小さくて、でもしっかりと名前を呼んでいた。
陽翔はその声に応えるように、榊を強く抱きしめた。
まるでふたりの鼓動がひとつになる瞬間を迎えたかのように、身体が静かに、そして確かに熱を結び合っていった。
声にしなくても伝わる。
それを知っているから、今夜は言葉が少なかった。
けれど、どんな夜よりも深く、ふたりは“恋人”であることを確認し合った。
82
あなたにおすすめの小説
【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】
紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。
相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。
超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。
失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。
彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。
※番外編を公開しました(2024.10.21)
生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。
※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。
ワンナイトした男がハイスペ弁護士だったので付き合ってみることにした
おもちDX
BL
弁護士なのに未成年とシちゃった……!?と焦りつつ好きになったので突き進む攻めと、嘘をついて付き合ってみたら本気になっちゃってこじれる受けのお話。
初めてワンナイトした相手に即落ちした純情男 × 誰とも深い関係にならない遊び人の大学生
ハイスペックストーカーに追われています
たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!!
と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。
完結しました。
課長、甘やかさないでください!
鬼塚ベジータ
BL
地方支社に異動してきたのは、元日本代表のプロバレー選手・染谷拓海。だが彼は人を寄せつけず、無愛想で攻撃的な態度をとって孤立していた。
そんな染谷を受け入れたのは、穏やかで面倒見のいい課長・真木千歳だった。
15歳差の不器用なふたりが、職場という日常のなかで少しずつ育んでいく、臆病で真っ直ぐな大人の恋の物語。
またのご利用をお待ちしています。
あらき奏多
BL
職場の同僚にすすめられた、とあるマッサージ店。
緊張しつつもゴッドハンドで全身とろとろに癒され、初めての感覚に下半身が誤作動してしまい……?!
・マッサージ師×客
・年下敬語攻め
・男前土木作業員受け
・ノリ軽め
※年齢順イメージ
九重≒達也>坂田(店長)≫四ノ宮
【登場人物】
▼坂田 祐介(さかた ゆうすけ) 攻
・マッサージ店の店長
・爽やかイケメン
・優しくて低めのセクシーボイス
・良識はある人
▼杉村 達也(すぎむら たつや) 受
・土木作業員
・敏感体質
・快楽に流されやすい。すぐ喘ぐ
・性格も見た目も男前
【登場人物(第二弾の人たち)】
▼四ノ宮 葵(しのみや あおい) 攻
・マッサージ店の施術者のひとり。
・店では年齢は下から二番目。経歴は店長の次に長い。敏腕。
・顔と名前だけ中性的。愛想は人並み。
・自覚済隠れS。仕事とプライベートは区別してる。はずだった。
▼九重 柚葉(ここのえ ゆずは) 受
・愛称『ココ』『ココさん』『ココちゃん』
・名前だけ可愛い。性格は可愛くない。見た目も別に可愛くない。
・理性が強め。隠れコミュ障。
・無自覚ドM。乱れるときは乱れる
作品はすべて個人サイト(http://lyze.jp/nyanko03/)からの転載です。
徐々に移動していきたいと思いますが、作品数は個人サイトが一番多いです。
よろしくお願いいたします。
相性最高な最悪の男 ~ラブホで会った大嫌いな同僚に執着されて逃げられない~
柊 千鶴
BL
【執着攻め×強気受け】
人付き合いを好まず、常に周囲と一定の距離を置いてきた篠崎には、唯一激しく口論を交わす男がいた。
その仲の悪さから「天敵」と称される同期の男だ。
完璧人間と名高い男とは性格も意見も合わず、顔を合わせればいがみ合う日々を送っていた。
ところがある日。
篠崎が人肌恋しさを慰めるため、出会い系サイトで男を見繕いホテルに向かうと、部屋の中では件の「天敵」月島亮介が待っていた。
「ど、どうしてお前がここにいる⁉」「それはこちらの台詞だ…!」
一夜の過ちとして終わるかと思われた関係は、徐々にふたりの間に変化をもたらし、月島の秘められた執着心が明らかになっていく。
いつも嫌味を言い合っているライバルとマッチングしてしまい、一晩だけの関係で終わるには惜しいほど身体の相性は良く、抜け出せないまま囲われ執着され溺愛されていく話。小説家になろうに投稿した小説の改訂版です。
合わせて漫画もよろしくお願いします。(https://www.alphapolis.co.jp/manga/763604729/304424900)
イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした
天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです!
元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。
持ち主は、顔面国宝の一年生。
なんで俺の写真? なんでロック画?
問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。
頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ!
☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる