オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?

中岡 始

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奏太さん、もっと近くにいてもいいですか~不器用で優しい君の、はじめての夜

おまけSS 瀬戸×佐倉 佐倉の糖分過剰なモノローグ

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「好きです、奏太さん」

初めてそう言われたときのことは、今でもはっきり覚えてる。  
あいつは、いつも無表情で、感情をあまり顔に出さへん。  
なのにそのときだけは、どこか言葉の奥に、温度が滲んでた。  
強くもなく、重くもなく。  
ただまっすぐで、揺るぎのない声やった。

あの声を聞いた瞬間、俺はたぶん、ひとつの覚悟を決めたんやと思う。

*

「手、繋いでると落ち着きます」

あれは、水族館の帰り道やったか。  
クラゲの前で、指先だけ重ねてきたくせに、言葉ではさらっとこんなことを言う。  
しかも、こっちがドキドキしてるのもお構いなしで、平然とした顔して。  

俺は心臓の音を聞かれへんように、少しだけ顔を背けた。  
でも、離せんかった。  
あいつの手の温度が、なんかやけに優しくて。

*

「僕、奏太さんのこと、もっと知りたいです」

この言葉を聞いたとき、俺はうまく返せんかった。  
なんやろな、嬉しかったんや。  
でもそのぶん、照れくさくて、怖くもあって。  

昔の俺なら、そういう言葉はスルーしてたと思う。  
軽く流して、「そんなん言うてもな」って笑ってごまかしてた。  
けど、瀬戸の目があまりにもまっすぐで、逃げられへんかった。

俺は、多分そのとき初めて、  
“誰かにちゃんと知ってもらいたい”と思ったんやと思う。

*

「……一緒に寝てもいいですか」

あの夜の声は、今思い出しても、胸の奥が熱うなる。  
まだふたりとも、手を繋ぐだけでどきどきしてた時期や。  
俺の部屋の狭いベッドに、ふたり並んで寝ようとしてる状況なんて、ちょっと前の俺やったら信じられんかった。

でも、瀬戸のその言葉には、欲とかそういうのがまったく感じられんくて。  
ただ“隣にいたい”って、それだけやった。  
それがなんか…沁みた。

「それでも、そばにいたいです」

あの一言で、俺は布団をめくった。  
身体より先に、気持ちが受け入れてた。

*

「……痛くないですか」

あの夜、身体を重ねようとしたとき、瀬戸は何度もそう訊いてきた。  
そのたびに、俺は大丈夫やって返してたけど、  
ほんまに“大丈夫”やったんは、たぶんあいつのそういうとこがあったからや。

触れ方が、やさしくて、不器用で。  
でも、ちゃんと伝えようとしてくれてるのが分かって。  
俺はずっと、誰かにそうやって触れてもらいたかったんやと思う。

*

「寝る前、奏太さんの声が最後に聞きたいです」

さすがにこれは反則やと思った。  
あんな顔して言うことか?  
ベッドのなかで、こっちはなんとか眠ろうとしてるのに、そんなこと言われてみ?

眠れるわけあらへんやろ。

俺は笑ってごまかしたけど、  
その晩、なかなか寝付かれへんかった。  
横に寝てるあいつの呼吸を聞きながら、何回も「……好きって、ほんま罪やな」って思った。

*

「夢の中でも奏太さんでした」

朝起きて、寝ぼけながら聞いたあいつのその一言で、  
一気に目が覚めた。

夢のなかでまで俺を見てるって、どういうことやねん。  
でも、言い方があまりに素直すぎて、怒る気にもならん。

俺はただ、布団に顔を沈めて  
「……お前、朝から飛ばしすぎや」  
って呟いた。

でも内心、悪ない気分やったのは、認めるしかない。

*

「“好き”って言っていいタイミング、まだ残ってます?」

何回も言ってきてるくせに、あいつはこうやって、  
毎回“言っていいか”って訊いてくる。  

それがなんか、ええなって思う。

好きって言葉が、あいつにとって“投げるもん”やなくて、“渡すもん”なんやなって思わせてくれる。

だから俺も、受け取るだけの器を持たなあかんって思う。  
雑に扱われへん。  
ちゃんと大事にしたいって思う。

*

瀬戸の言葉は、ひとつひとつがまっすぐや。  
嘘も駆け引きもなくて、  
ただ、“俺と一緒におる”ってことに、真剣や。

たまにその真っ直ぐさが眩しすぎて、  
目逸らしたくなるときもある。  

けど結局、そういうところが好きになったんやって、  
俺は自分でも分かってる。

あいつの言葉に、毎回ぐらっとくる。  
でも、それが悪くないって思えるようになったのは、  
俺のほうが少しずつ変わってきた証拠やろな。

これからも、あいつはたぶん同じように言うんやろ。

「好きです、奏太さん」

そのたびに、俺はちゃんと聞き取って、ちゃんと返していきたい。  
いつか、“俺のほうが好きかもしれん”って言える日が来てもええように。
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