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実家に帰らせていただきます(なお、恋人付き)
おまけSS 特別対談:榊家が語る、“圭吾と陽翔くん”という関係 ― 読者からの10の質問にお答えします ―
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「ふたりとも、よぉ食べとったなあ」
正月も明けたある日、榊家のリビングには、まだこたつとみかんがそのままの状態で残っていた。陽翔と圭吾が帰ってから、もう二日。なのに、どこか家の中にはまだ“ふたり”の気配が残っているようだった。
その空気のなかで、百合子と雅彦、そして父・雅人が、架空編集部から送られてきた「読者からの質問」に答えるという、少し不思議な時間が始まった。
Q1 陽翔くんが初めて家に来たとき、どんな印象でしたか?
百合子が最初に答えた。
「思ったより細かったな。でも、目がしっかりしとって。あの子、圭吾のこと、ちゃんと見てる目ぇしてた」
雅彦が頷きながら言葉を足す。
「靴を丁寧に揃えるタイプ。初対面の印象としては、それでだいたい分かる。緊張しとったけど、圭吾の隣に立ったとき、空気が落ち着いてた。あれは自然な相性や」
父・雅人は一言だけ、低く呟く。
「目、よう合う子や」
Q2 ふたりの距離感、見ててどう感じましたか?
百合子は目尻を下げた。
「うーん、夫婦、やな。何も言わんでも、通じとるような」
雅彦も同意するように笑う。
「圭吾が笑ってる。それがいちばんや」
雅人はまた短く言う。
「……歩幅、合っとったな」
Q3 おみくじでのやりとり、ほっこりしました。どう感じましたか?
百合子が両手を合わせた。
「陽翔くんが大吉で、私が末吉やったとき、“半分こしましょうか”って言うたやろ。あれ、心が温まったなあ」
雅彦は缶ビールを傾けながら呟く。
「あの歳で、あれが自然に出るのはすごい。育ちの賜物やと思う」
父はぽつりと一言。
「……甘いもんも分けとった」
Q4 卒業アルバム、出した理由は?そして反応は?
雅彦が声をあげて笑った。
「見せたかってん。圭吾の黒歴史は兄の特権や。陽翔くん、言うたやろ。“罪、深いですね”って。的確やった」
百合子も頷いた。
「なんやかんやで、あの子の照れた顔がいちばん本音やからな」
雅人は短く一言。
「……学ラン、似合っとった」
Q5 圭吾さんが“恋人を家に紹介する”って、どう感じましたか?
雅彦の声がやや低くなる。
「驚いた。でもな、自分の幸せを口にできるようになったんやって思ったら、すごく嬉しかった」
百合子も微笑む。
「あの子、昔はそういうの、全部呑み込んでしもうとったから。言えて、よかったよ」
雅人は静かに頷く。
「……やっと、やな」
Q6 百合子さん、陽翔くんのどんなとこが好きですか?
百合子の声が柔らかくなる。
「よう気ぃつくとこ。静かに、でもよく笑うとこ。あと、“圭吾さん”って呼ぶ声。あれ、すごくやさしい」
Q7 雅彦さん、陽翔くんを“弟の相手”として見て、どうですか?
雅彦は真顔で答える。
「あいつ、自分のことより弟のこと見てる。覚悟がある子やと思った。圭吾の扱い、よう分かっとる。そんだけで十分や」
Q8 雅人さん、陽翔くんを一言で言うと?
雅人は長考の末に、ぼそりと言った。
「……ええやつや」
その言葉に、百合子も雅彦も声を出さずに笑う。
Q9 またふたりが来年も来るとしたら、どんなふうに迎えたいですか?
百合子が張り切るように言う。
「羽根つき用意しとくわ。あの子ら、やってくれるかな」
雅彦は肩をすくめる。
「もっとラフな感じでええ。もう家族やしな」
父はまた静かに言う。
「……箸袋、また書いとく」
Q10 ふたりに伝えたいことをどうぞ
百合子の目が少し潤む。
「よう来てくれたな。陽翔くん、ありがとうな。圭吾のこと、これからも頼んだで」
雅彦が缶を置きながら言う。
「圭吾を頼むわ」
雅人は、最後まで目を合わせずに言った。
「……また、来い」
こたつの上で冷めかけたお茶の湯気が、天井に揺れていた。
この家のあたたかさは、たぶん言葉では測れない。
けれど“圭吾と陽翔”のふたりが帰ってきたときに、ちゃんと受け止めてくれる場所だと、それだけは間違いないと思えた。
正月も明けたある日、榊家のリビングには、まだこたつとみかんがそのままの状態で残っていた。陽翔と圭吾が帰ってから、もう二日。なのに、どこか家の中にはまだ“ふたり”の気配が残っているようだった。
その空気のなかで、百合子と雅彦、そして父・雅人が、架空編集部から送られてきた「読者からの質問」に答えるという、少し不思議な時間が始まった。
Q1 陽翔くんが初めて家に来たとき、どんな印象でしたか?
百合子が最初に答えた。
「思ったより細かったな。でも、目がしっかりしとって。あの子、圭吾のこと、ちゃんと見てる目ぇしてた」
雅彦が頷きながら言葉を足す。
「靴を丁寧に揃えるタイプ。初対面の印象としては、それでだいたい分かる。緊張しとったけど、圭吾の隣に立ったとき、空気が落ち着いてた。あれは自然な相性や」
父・雅人は一言だけ、低く呟く。
「目、よう合う子や」
Q2 ふたりの距離感、見ててどう感じましたか?
百合子は目尻を下げた。
「うーん、夫婦、やな。何も言わんでも、通じとるような」
雅彦も同意するように笑う。
「圭吾が笑ってる。それがいちばんや」
雅人はまた短く言う。
「……歩幅、合っとったな」
Q3 おみくじでのやりとり、ほっこりしました。どう感じましたか?
百合子が両手を合わせた。
「陽翔くんが大吉で、私が末吉やったとき、“半分こしましょうか”って言うたやろ。あれ、心が温まったなあ」
雅彦は缶ビールを傾けながら呟く。
「あの歳で、あれが自然に出るのはすごい。育ちの賜物やと思う」
父はぽつりと一言。
「……甘いもんも分けとった」
Q4 卒業アルバム、出した理由は?そして反応は?
雅彦が声をあげて笑った。
「見せたかってん。圭吾の黒歴史は兄の特権や。陽翔くん、言うたやろ。“罪、深いですね”って。的確やった」
百合子も頷いた。
「なんやかんやで、あの子の照れた顔がいちばん本音やからな」
雅人は短く一言。
「……学ラン、似合っとった」
Q5 圭吾さんが“恋人を家に紹介する”って、どう感じましたか?
雅彦の声がやや低くなる。
「驚いた。でもな、自分の幸せを口にできるようになったんやって思ったら、すごく嬉しかった」
百合子も微笑む。
「あの子、昔はそういうの、全部呑み込んでしもうとったから。言えて、よかったよ」
雅人は静かに頷く。
「……やっと、やな」
Q6 百合子さん、陽翔くんのどんなとこが好きですか?
百合子の声が柔らかくなる。
「よう気ぃつくとこ。静かに、でもよく笑うとこ。あと、“圭吾さん”って呼ぶ声。あれ、すごくやさしい」
Q7 雅彦さん、陽翔くんを“弟の相手”として見て、どうですか?
雅彦は真顔で答える。
「あいつ、自分のことより弟のこと見てる。覚悟がある子やと思った。圭吾の扱い、よう分かっとる。そんだけで十分や」
Q8 雅人さん、陽翔くんを一言で言うと?
雅人は長考の末に、ぼそりと言った。
「……ええやつや」
その言葉に、百合子も雅彦も声を出さずに笑う。
Q9 またふたりが来年も来るとしたら、どんなふうに迎えたいですか?
百合子が張り切るように言う。
「羽根つき用意しとくわ。あの子ら、やってくれるかな」
雅彦は肩をすくめる。
「もっとラフな感じでええ。もう家族やしな」
父はまた静かに言う。
「……箸袋、また書いとく」
Q10 ふたりに伝えたいことをどうぞ
百合子の目が少し潤む。
「よう来てくれたな。陽翔くん、ありがとうな。圭吾のこと、これからも頼んだで」
雅彦が缶を置きながら言う。
「圭吾を頼むわ」
雅人は、最後まで目を合わせずに言った。
「……また、来い」
こたつの上で冷めかけたお茶の湯気が、天井に揺れていた。
この家のあたたかさは、たぶん言葉では測れない。
けれど“圭吾と陽翔”のふたりが帰ってきたときに、ちゃんと受け止めてくれる場所だと、それだけは間違いないと思えた。
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