三条美玲の炎上

中岡 始

文字の大きさ
19 / 41

19

しおりを挟む
3日目の朝、美玲は心地よく目覚めた。昨日の夜、隼人ともっと特別な時間を過ごせると思ったものの、彼はプロフェッショナルに距離を保ったままだった。だが、美玲はそれを「彼が仮面をかぶっているだけ」と解釈し、今日こそもう一歩進展するのではないかと期待に胸を膨らませていた。

「今日は朝食も隼人さんにお願いしよう…」と、彼女は自信に満ちた表情で内線を取り、朝食を部屋に運んでもらうよう依頼した。当然、担当は隼人を指名した。

しばらくしてドアがノックされ、彼女はワクワクしながらドアを開けた。だが、そこに立っていたのは隼人ではなく、隼人の相棒である翔だった。翔は丁寧な笑顔を浮かべ、隙のないプロフェッショナルな態度で挨拶をした。

「おはようございます、三条様。本日は私が朝食をお持ちいたしました」

美玲は一瞬驚きと落胆が入り混じった表情を見せたが、すぐに冷静を取り戻し、口元に微笑みを浮かべた。

「あれ…隼人さんはいないの?」

翔は穏やかで控えめな口調で答えた。

「佐々木は、今朝は他のお客様の対応にあたっております。申し訳ありませんが、本日は私が担当させていただきます。どうぞごゆっくりお召し上がりくださいませ」

彼の返答は完璧で、隙のないものだった。翔は隼人と同じくプロフェッショナルな姿勢を崩さず、丁寧にテーブルをセッティングしながら、美玲がリラックスできるように心を込めて対応していた。朝食は美しく盛り付けられ、翔は静かに、迅速かつ丁寧に動いていた。その所作からは、何もかもが一流のサービスであることが伝わった。

しかし、美玲の心の中では、隼人が来なかったことへの失望感が強く湧き上がっていた。彼女は丁寧に仕事をこなす翔の様子を観察しながらも、どこか物足りなさを感じていた。

「ありがとう」と美玲は言ったが、その声には少しの落胆が混じっていた。

「でも…隼人さんが来てくれないなんて…」

翔はその微妙なニュアンスに気づいていたが、あくまで礼儀正しく振る舞った。

「佐々木が戻りましたら、お伝えいたします。何かご要望がありましたら、いつでもお知らせください」

翔は一切の個人的な感情を表に出すことなく、静かに部屋を後にした。そのプロフェッショナルな姿勢には何の隙もなく、三条美玲が求める「特別」な対応を敢えて避けるような慎重さが感じられた。

部屋に一人残された美玲は、心の中で苛立ちを抑えきれなかった。「隼人さん、どうして来ないの? 昨日あんなに近づけたのに…」彼女は失望を感じつつも、すぐに頭を切り替えた。

「次こそ隼人さんを呼び出して、もっと特別な時間を過ごさなきゃ…」

彼女は次のステップを計画し始め、隼人との時間を再び確保するために、どうすればいいのかを考え始めた。彼女の期待はさらに膨らみ、隼人との距離を縮める機会を探り続けていた。

美玲は、朝食後にSNSを開き、隼人が担当しなかったことへの少しの落胆を含ませた投稿をすることにした。彼女は隼人への期待が高まっていただけに、フォロワーにその微妙な感情を伝えつつも、いつもの華やかさを失わないよう気を配った。

---

「おはようございます☀️ 今日も青海の宿での贅沢な朝が始まりました✨ ただ…朝食のセッティング、今日は隼人さんじゃなかったの😢 もちろん、代わりのスタッフさんも完璧に対応してくれたけど…やっぱり、隼人さんの気配りが恋しいな💫」

#青海の宿 #ラグジュアリースイート #贅沢な朝 #専属コンシェルジュ #隼人さん恋しい #VIP対応 #プロフェッショナルサービス #完璧な朝食 #また会いたい

---

美玲は、隼人の特別な存在感を匂わせつつ、フォロワーに彼の「不在」に対する軽い失望を伝えた。この投稿は、フォロワーたちの反響を呼び、隼人がいかに美玲にとって特別な存在であるかが強調される結果となった。

美玲の投稿は、すぐにフォロワーたちの興味を引き、隼人の「不在」に対するさまざまな反応が寄せられた。彼女が隼人を特別視していることに対する共感の声が多かった一方で、フォロー外からは冷静な意見や疑問も見られた。

---

**@lux_life_mai:**  
「えー!隼人さんじゃなかったの?残念すぎるね💔 やっぱり、彼の気配りは特別だもんね。次は絶対隼人さんに会えるといいね!」

**@wanderlust_rika:**  
「隼人さんとの特別な朝が待ち遠しいよね💖 でも、きっと次にまた素敵な時間が過ごせるよ!」

**@glam_traveller_sana:**  
「隼人さんが担当じゃないなんてショック😢 でも、次はきっともっと特別な対応があるかも!楽しみにしてるね💫」

**@jetsetter_yumi:**  
「隼人さんとの朝が完璧じゃないと満足できないのわかる…!彼のサービス、やっぱりVIPだよね✨」

---

**@realist_tomo (フォロー外):**  
「スタッフの誰が担当しても完璧なサービスを受けてるんだから、それで十分じゃないの?一人のスタッフに期待しすぎるのはどうかな…🤔」

**@skeptical_hana (フォロー外):**  
「隼人さんってそんなに特別な人なの?プロフェッショナルな対応をしてるだけじゃないのかな?少し大げさに感じるけど…」

**@truthseeker_kazu (フォロー外):**  
「もしかして、サービスを超えた何かを期待してるのかな?プロの仕事はプロとして評価するべきじゃない?」

---

フォロワーたちの多くは美玲の「隼人さん恋しさ」に共感し、次に彼との特別な時間が訪れることを期待するコメントを残していた。一方、フォロー外のリプライでは、隼人に対して過度に期待しすぎているのではないかという冷静な意見も目立ち始めた。

美玲はフォロワーたちの応援に満足しながらも、フォロー外からの冷静な意見に対しては少し気をとがらせつつも、自分の気持ちが正しいと信じていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

春に狂(くる)う

転生新語
恋愛
 先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。  小説家になろう、カクヨムに投稿しています。  小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/  カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

盗み聞き

凛子
恋愛
あ、そういうこと。

処理中です...