三条美玲の炎上

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青海の宿のマーケティング部では、美玲のさらなる投稿とそれに対する反応を引き続きモニタリングしていた。田村綾子を中心に、チームは美玲の自らを正当化する投稿に注目し、フォロワーたちがどのように反応しているかを慎重に分析していた。

綾子は、モニタリング画面に映るフォロワーの反応を見ながら、チームと話し合いを始めた。

「現在の状況を見ていると、フォロワーの反応も少しずつ変わり始めていますね。美玲さんの投稿に対して批判的な意見が増えていることから、もう少し様子を見てもいいかもしれません」

チームのスタッフも同意し、ひとまず積極的な対応を控え、自然に事態が収まるのを期待する方向で一致した。

「彼女の発信がエスカレートすることで、フォロワーや外部からも冷静な視点が増えてきています。今はSNSでの公式コメントを控え、動向を見守るのが得策かと思います」

と、スタッフの一人が意見を述べた。

綾子もそれに頷き、

「現段階でこちらから声明を出せば、かえって火に油を注ぐ可能性があるわ。もう少し状況を見てから、必要に応じて対策を考えましょう」

と、慎重な対応を指示した。

さらに綾子は、

「現状では、三条様の投稿によってホテルへの不満が広がる危険もあるけれど、フォロワーの意見の変化を見ていると、彼女への批判が増える兆しも見えます。このまま、フォロワー側が自然に冷静な声を届ける流れに期待しましょう」

と付け加えた。

マーケティング部では、この状況が時間と共に沈静化する可能性を見込み、過剰な反応を避け、しばらく静観する方針を固めた。

――

隼人と翔もまた、美玲の投稿が広がり、フォロワーの反応が徐々に批判的なものへと変わりつつあることを耳にしていた。彼らは美玲の滞在中に対応しただけに、彼女が怒りをぶつけ続けている現状について複雑な思いを抱いていた。

休憩室で隼人と顔を合わせた翔が、少し肩をすくめながら話しかけた。

「三条さんの投稿がまだ続いているって聞いたよ。最初は共感してるコメントが多かったみたいだけど、今は結構批判も入ってるらしい」

隼人は少し困惑した表情を浮かべながら、静かに頷いた。

「ああ、僕も聞いた。三条様が求めていたのは、たぶん単なるVIP対応じゃなくて、僕個人に対する特別な関係みたいなものだったのかもしれない。でも、それは仕事を超えた期待だし、対応するのは難しいよな」

翔は、隼人の対応が冷静でプロフェッショナルだったことを知っているだけに、同僚として彼の立場に同情を感じていた。

「隼人の対応は間違ってなかったと思うよ。VIPだからって、全てのリクエストに応えるのが必ずしも正解じゃないし、特に個人的な期待には応じられないよな」

隼人はため息をつき、視線を落とした。

「それでも、三条様には自分の期待を裏切られたと感じさせてしまったみたいだ。彼女のSNSでの影響力を考えると、ホテルにも大きな負担をかけることになってしまっている…」

翔は隼人の肩を軽く叩き、

「気にしすぎるなよ、隼人。これ以上の対応はホテル全体の問題だし、綾子さんや総支配人も慎重に対応してるから、俺たちは自分の仕事をしっかりやるだけさ。ここまで丁寧に対応したんだから、あとはホテルの方針に従っていけばいい」

と励ました。
隼人は、翔の言葉に少し表情を緩めた。

「ありがとう、翔。これからもプロとして、冷静に対応していくよ。ホテルの一員としてやるべきことを続けていこう」

こうして、隼人と翔は複雑な気持ちを抱えつつも、これ以上はホテル側の判断に委ね、自分たちは日々の業務に集中することを決意した。