Aegis~裏切りに報いる影の正義

中岡 始

文字の大きさ
48 / 84
第5幕

「工藤」の登場

しおりを挟む
怜と大谷が工藤の話題で盛り上がり、カフェで楽しげに話している中、遠くの席から二人の様子を確認する忍が微かに頷き、イヤホン越しに小さく声をかけた。

「今がいいタイミングです、涼さん」

カフェの入口近くに位置していた涼が、冷静に店内に視線を巡らせ、怜と大谷が座るテーブルに自然な表情で視線を落とした。彼は「偶然見つけた」という表情を完璧に作り上げ、ふと気づいたように軽く目を見開き、怜に向かって歩み寄っていく。

その時、怜もまた、涼の姿に驚いたように目を見張った。

「工藤さん!」

驚きながらも、喜びを隠せないという表情で涼に声をかける怜。大谷は、怜が慕っているという「工藤」という人物がまさに目の前に現れたことに一瞬動揺したが、すぐに興味津々な表情に変わった。

涼は怜に軽く会釈し、冷静で丁寧な声で応じた。

「おや、怜さん。こんなところでお会いするとは、偶然ですね」

その言葉に怜は嬉しそうに微笑み、大谷に向き直ると、声を弾ませて言った。

「大谷さん、こちらが私の兄の友人で、工藤さんです」

「はじめまして、工藤と申します」

涼は大谷に手を差し出し、穏やかながらも自信に満ちた表情で挨拶した。大谷も笑顔で涼の手を握り返し、その握力や冷静な佇まいに、心の中で信頼できそうな人物だと直感したようだった。

「大谷信之です。怜さんからお噂は少し聞いていましたが、こうしてお会いできて光栄です」

涼は微かに頷きながら、視線を一瞬怜に向け、また大谷に戻した。あくまでビジネスマンとしての冷静な距離感を保ちながら、大谷への礼儀を忘れない、そういった態度が際立っていた。

「怜さんには、私の仕事について少しお話をしましたが、大谷さんは投資にご興味があると伺っています」

大谷は涼の話し方に誠実さを感じ、ますます興味を深めたようだった。

「ええ、実は少し投資をしていまして…。工藤さんはご自身で成功されているんですよね?」

涼は控えめに頷きつつも、謙遜した表情で続けた。

「成功かどうかは、まだまだこれからのところも多いですが…。とはいえ、お陰さまで少しずつ経験を積んでいます」

その言葉を聞き、大谷はますます涼に対する信頼感を抱いたようだった。涼の慎重な姿勢が、さらに大谷の心を引きつける。

怜もまた、涼の演技に合わせて少し緊張した様子で、大谷に涼のことをさらに説明した。

「工藤さんは、私の兄からも『堅実で信頼できる人』っていつも言われているんです。実際に私もお会いしてみて、本当に誠実な方だと感じました。」

涼は静かに怜の話を聞きながら、大谷に向けてさりげなく言葉を挟んだ。

「怜さんのお兄さんとは古い友人でして、投資の件もそうですが、ビジネスに関しては互いに刺激し合える関係です。こうしてお会いできて光栄です、大谷さん」

大谷は深く頷き、涼が怜の兄と信頼関係を築いていることに安心感を覚えた様子だった。

「こちらこそ、こんな機会をいただけて嬉しいです。やはり信頼関係があってのビジネスですよね」

涼は微かに微笑んで頷きつつも、大谷に対する冷静な距離感を崩さず、大谷の興味を引くような情報をほんの少しだけ小出しにすることを忘れなかった。

「ええ、その通りです。ビジネスは信頼関係が重要ですね。投資の話も、こうして直接お会いした方にしかお話しないことが多いですが…」

その言葉に大谷が食い付いた瞬間、涼はさりげなく話題を変え、直接的な情報を話さずに話を流した。怜は涼の立ち回りに心の中で感心しつつも、あくまで控えめに涼と大谷の間にいるように振る舞った。

その後も、涼はあえて話を具体的に踏み込まず、ビジネスの話や投資の可能性について、少し匂わせる程度にとどめていた。そのことで大谷の興味はますます高まり、次の機会にもっと詳しい話を聞きたいという意欲が見て取れた。

カフェを出た後、涼が再び忍に合図を送り、Aegisの計画は次の段階へと進んでいくことを確信した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

あやかし警察おとり捜査課

紫音みけ🐾書籍発売中
キャラ文芸
※第7回キャラ文芸大賞にて奨励賞を受賞しました。応援してくださった皆様、ありがとうございました。 【あらすじ】  二十三歳にして童顔・低身長で小中学生に見間違われる青年・栗丘みつきは、出世の見込みのない落ちこぼれ警察官。  しかしその小さな身に秘められた身体能力と、この世ならざるもの(=あやかし)を認知する霊視能力を買われた彼は、あやかし退治を主とする部署・特例災害対策室に任命され、あやかしを誘き寄せるための囮捜査に挑む。  反りが合わない年下エリートの相棒と、狐面を被った怪しい上司と共に繰り広げる退魔ファンタジー。  

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら

俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。 赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。 史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。 もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。

処理中です...