Aegis~裏切りに報いる影の正義

中岡 始

文字の大きさ
75 / 84
終章

その後の涼の行動

しおりを挟む
涼はAegis(イージス)の撤収に向け、粛々と準備を進めていた。最終的な取引も無事に終え、必要な資金もすべて手元に揃った段階で、彼には二つの重要な役割が残されていた。一つは、大谷とのやり取りに関する全ての記録を整理し、依頼者へ報告するための資料を厳選すること。もう一つは、依頼者に返還する額を差し引いた収益の最終的なリターン額を確定し、チームの報酬分配計画をまとめることだった。

涼はまず、自らが作成した契約書を一つひとつ見直し始めた。契約内容に不自然な点がないか、後に疑われる可能性がわずかでも残っていないかを、プロフェッショナルな視点で丁寧に確認していく。契約の条項、条件、保証、細かな補足文に至るまで、どれもが大谷の信頼を獲得するために緻密に設計されていたが、撤収にあたり改めて再精査しておくことで、ほんの些細な誤解の芽さえも摘み取ろうとしていた。これまでのメッセージのやり取りについても同様で、大谷に対する誘導と信頼構築の過程がわかる重要なやり取りを選び抜き、LANを通じて依頼者に報告する資料としてまとめる準備に取り掛かった。

すべての確認を終えた後、彼は証拠として不要になったデジタルデータや書類の破棄を安全に行った。大谷とのやり取りで得た情報の一部は依頼者への報告に必要であったが、それ以外の、自身やAegisの足跡となり得るものは一切残さずに処理する。涼は暗号化とセキュリティを徹底し、万が一の漏洩にも備えた保管処理を施した後、次の工程である最終リターンの計算と分配に取り掛かった。

すでに、全体の収益と依頼者への返還額の計算は完了していた。涼は収益の内訳を最終確認し、依頼者への返還金とメンバーそれぞれの報酬分配を確定。迅速にその内訳をチームメンバーに共有し、特に怜や忍には個別に知らせて、最終報酬の受け渡しについて調整を進めた。さらに依頼者に提出する報告書もまとめ、LAN側と連携しながら最終的な確認を行い、報告が依頼者にとっても信頼のおけるものであるよう細部にわたり配慮した。

準備が整うと、涼はメンバーたちとの最後のミーティングを開いた。忍や怜が現場から撤収する際、どのようなルートを取るべきか、疑われることのないように細かく調整を加えていく。それぞれのスケジュールを再確認し、関係者に怪しまれないよう、かつ確実にすべての足跡を消す手順を再度徹底させた。涼は各メンバーの撤収までの役割が終えたタイミングを見計らい、最終的な解散指示を出した。

「これで全員、無事に撤収だ。やるべきことはすべて終えた。お疲れ様」

冷静に告げられた涼の一言で、Aegisのメンバーたちはそれぞれ、達成感とともに静かにその場を後にした。今はそれぞれの次の任務に向け、心の準備を整える時だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

あやかし警察おとり捜査課

紫音みけ🐾書籍発売中
キャラ文芸
※第7回キャラ文芸大賞にて奨励賞を受賞しました。応援してくださった皆様、ありがとうございました。 【あらすじ】  二十三歳にして童顔・低身長で小中学生に見間違われる青年・栗丘みつきは、出世の見込みのない落ちこぼれ警察官。  しかしその小さな身に秘められた身体能力と、この世ならざるもの(=あやかし)を認知する霊視能力を買われた彼は、あやかし退治を主とする部署・特例災害対策室に任命され、あやかしを誘き寄せるための囮捜査に挑む。  反りが合わない年下エリートの相棒と、狐面を被った怪しい上司と共に繰り広げる退魔ファンタジー。  

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら

俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。 赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。 史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。 もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。

処理中です...