隼人と翔の休日

４

秋も深まったある日。
松永総支配人に呼ばれた隼人と翔は、少し緊張した面持ちでオフィスに入った。松永は二人に穏やかな視線を向けると、机の上に置かれたパンフレットを手に取った。

「君たち、ここ最近の仕事ぶりには感謝しているよ。本当に大変な時期だったと思う。だからこそ、少し休んでもらいたいんだ」

その言葉に、隼人は少し驚きを隠せなかった。仕事を休むという提案が、総支配人の口から出るとは思っていなかったのだ。翔も同様に驚いた様子で、松永が差し出したパンフレットに目をやった。

「これは……温泉宿のパンフレットですか？」

翔が尋ねると、松永はうなずいた。

「そう。『深緑の宿』という、私の知人が経営している旅館だ。山間にひっそりと佇む隠れ家のような場所でね、昔から評判が良いんだ。3日間の休暇を手配しているから、君たちが承諾してくれるなら、すぐにでも話を進めるつもりだよ」

松永は続けた。

「宿の女将にはもう連絡を取ってある。君たちの滞在を快く受け入れてくれるはずだ。日常の喧騒から離れて、リラックスしてほしい」

隼人はパンフレットに視線を落としながら、温泉宿の写真に目を止めた。山々に囲まれ、静寂が感じられるその風景は、彼の心にふと安らぎをもたらすようだった。翔もまた、その提案に興味を抱いた様子で、隼人の顔をうかがった。

「ありがとうございます。まさか休暇をいただけるとは思っていませんでしたが……ぜひ、その宿に行かせていただきます」

隼人が丁寧に頭を下げて答えると、翔も

「良い機会ですし、ぜひ行ってみたいです」

と続けた。

松永は満足げにうなずき、二人を見つめた。

「良かった。深緑の宿の女将は親身になって話を聞いてくれる人だ。もし何か抱えているものがあれば、気軽に相談してみるといいだろう」

隼人はその言葉に何か意味が含まれているように感じたが、深くは考えず、

「ありがとうございます。楽しみにしています」

とだけ答えた。翔もまた、静かにうなずき、心の中でこの休暇がどのような時間になるのかを思い描いていた。