隼人と翔の休日

中岡 始

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隼人は、紅葉が鮮やかに色づく山道を翔と並んで歩きながら、心の中で自分の気持ちを整理しようとしていた。頭上には木々の枝が揺れ、小川のせせらぎが遠くから聞こえてくる。その静かな自然の音が、隼人の心のざわめきを少しずつ和らげてくれるようだった。

隼人は翔を横目で見やった。彼は少し先を歩きながら、自然を楽しむように周囲を見回している。翔の姿を見るたびに、隼人はいつも少しだけ安心する自分に気づいていた。それは職場でも、日常のどんな場面でも同じだった。翔がそばにいるだけで、どんなに大変な時でも心が軽くなる気がしたのだ。

隼人は、自分がなぜそう感じるのか、その理由をずっと考えていた。翔は確かに大切な友人であり、信頼できる同僚だ。しかし、この感情は友情や信頼を超えたものではないかと感じる瞬間が、最近になって増えてきた。特に、美玲の事件の後から、翔がそばにいてくれることの意味が大きく変わったように思えたのだ。

「翔がいなかったら、もっとつらかったかもしれないな…」隼人は心の中でそうつぶやいた。彼は自分が抱える不安や迷いを翔に相談したことはなかったが、翔はそれでも静かに見守ってくれた。あの日、「いつでも話してくれていいからな」と言ってくれた時のことを思い出すと、胸が少し暖かくなる。

翔といると、隼人は自然に心を開くことができた。職場では常に冷静でいなければならない自分が、翔の前ではほんの少しだけ素の自分を出せる気がしていた。それが「特別な感情」なのか、まだはっきりとはわからない。しかし、この安らぎと安心感が翔によってもたらされているのだということは、疑いようのない事実だった。

隼人はふと立ち止まり、目の前に広がる紅葉の景色に目を向けた。美しく色づいた木々が風に揺れ、その中に佇む自分を取り巻いていた。翔が隣にいることがこんなにも心地よいと感じるのは、なぜなのだろうか。隼人はその答えを見つけることができずにいたが、少なくとも翔が自分にとって「かけがえのない存在」であることだけは、確かに感じ取っていた。

「隼人、どうした?」ふと気づいた翔が、振り返って声をかけてきた。

「いや…なんでもないよ。ただ、景色がきれいだなと思ってさ」隼人は微笑んで答えた。その笑顔の裏には、自分でもまだ整理しきれない複雑な感情が潜んでいたが、今はただこの静かな時間を大切にしたいと思った。翔と一緒にいることの心地よさを、少しずつかみしめながら。
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