オッサン転生 ~イケメン勇者だが腰は痛い~

中岡 始

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パーティメンバー募集

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 ギルドの掲示板に、一枚の紙を貼り付ける。  

 「勇者パーティ結成! 経験豊富なベテランリーダーがあなたを導きます!」  

 龍司は腕を組み、一歩下がって出来栄えを確認した。  

 異世界で生活していくには、やはりパーティを組むのが一番だ。護衛や魔法、商売に長けた仲間がいれば、より効率的に依頼をこなせる。  

 そして何より、一人で行動するよりも危険が少ない。  

 パーティリーダーとしての経験はないが、社会人としての管理職経験は十分にある。チームをまとめることには自信があった。  

 「よし、あとは応募者を待つだけだな」  

 そう呟きながらカウンターへ向かおうとしたその時、後ろからひそひそとした声が聞こえてきた。  

 「なあ、あのオッサン、本気でパーティ募集してるのか?」  

 「いや、どう見てもそうだろ。でも、おっさんと組むのはちょっと…」  

 「そもそも、パーティって年齢制限ないのか?」  

 聞こえてくる会話に、龍司はピクリと眉を動かした。  

 後ろを振り返ると、ギルドの若手冒険者たちが、自分の貼った紙を見て失笑している。  

 「おいおい、俺だってお前らより社会経験は長いんだから、リーダー向きだろ!」  

 冗談めかして言うが、若者たちは苦笑いを浮かべたままだった。  

 「いや、それって冒険と関係あるんですか?」  

 「戦闘経験とか、あんまりなさそうだしな」  

 「せいぜい雑用役じゃね?」  

 (くっそ、なめられた……)  

 龍司は内心で歯ぎしりしながら、ぐっと耐えた。  

 確かに、見た目は若々しく鍛え上げられているが、内面は四十代のサラリーマン。彼らからすれば、年上の新人がいきなりリーダーを名乗るのは違和感があるのかもしれない。  

 それでも、誰か一人くらいは興味を持ってくれるはずだ。  

 気を取り直し、しばらく待っていると、掲示板の前に一人の少女が立った。  

 赤みのある金髪をなびかせ、長身のローブをまとっている。鋭い目つきと自信に満ちた表情が印象的だった。  

 少女は張り紙をじっと見つめたあと、龍司の方へ向き直った。  

 「ねえ、あんたが勇者って本当?」  

 「おう、そうだけど」  

 「ふーん…」  

 彼女は腕を組みながら龍司を見上げ、じっくりと品定めするような目つきを向けてきた。  

 「こんなオッサンが勇者とはね」  

 「オッサンって言うな」  

 「だって、見た目はともかく、中身はどう見てもそうじゃない」  

 ぐっと言葉に詰まる。  

 転生して若い肉体を手に入れたものの、中身が変わっていないことは事実だ。  

 少女は少し考え込む素振りを見せたあと、ため息混じりに肩をすくめた。  

 「まあいいわ。私はリリィ・アルカナ。天才魔法使いよ」  

 「ほう、天才ねえ」  

 「そうよ。だからパーティに入ってあげてもいいわよ」  

 「なんで上から目線なんだよ」  

 リリィは気にした様子もなく、「で、他のメンバーは?」と尋ねる。  

 「まだ決まってない。一緒に探してもいいぞ」  

 「…仕方ないわね」  

 彼女は頷き、龍司の横に並んだ。  

 次に現れたのは、長身の青年だった。  

 黒髪を短く刈り込み、鋭い目つきをしている。  

 背には大きな剣を背負い、全身から落ち着いた雰囲気が漂っていた。  

 「ここに、戦闘経験のあるパーティを探していると聞いたが」  

 低く落ち着いた声で、青年は言った。  

 「お前が勇者なら、力を貸す」  

 「お、しっかりしてそうな奴が来たな」  

 龍司は思わず嬉しくなる。  

 明らかに戦闘慣れしているし、無駄な動きがない。パーティにはこういう実力者が必要だ。  

 「名前は?」  

 「クロード・バルザー」  

 「クロードか。お前みたいな剣士が入ってくれるなら心強いな」  

 クロードは無言で頷き、リリィの隣に並んだ。  

 そして最後に、一人の少年が現れた。  

 茶髪を後ろで束ね、小柄ながらも目つきが鋭い。  

 年齢は明らかに低く、十五歳ほどに見えた。  

 少年は、龍司の姿を一瞥すると、口元に薄い笑みを浮かべた。  

 「へえ、あんたが噂のオッサン勇者か」  

 「だからオッサンって言うな」  

 「俺はマルコ・フェンディ。商人をやってる」  

 「商人?」  

 「そう。パーティに一人くらい、金の管理ができる奴が必要だろ?」  

 龍司は少し驚いたが、すぐに納得した。  

 確かに、戦闘だけでなく、金銭管理や物資調達を担当する人間がいれば、遠征やダンジョン攻略の効率が格段に上がる。  

 「なるほど。お前、ただの商人じゃなさそうだな」  

 「さあね。俺は儲かるパーティにしか入らない主義なんだ」  

 ニヤリと笑うマルコに、龍司も思わず笑みを返した。  

 「いいだろう。お前の目が確かか、試してみろ」  

 こうして、異世界の勇者パーティは結成された。
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