「好きって言ったら負け!」完璧すぎる生徒会コンビの恋愛頭脳戦は今日も平行線です~恋は勝ち負けじゃないと知るまでの攻防戦

中岡 始

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まゆと御堂筋、観察モードに突入

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生徒会準備室の片隅、午後の放課後のざわめきが遠くに聞こえる中で、ひときわ静かな熱気を放つ二人がいた。

御堂筋はタブレットを机に横並びで二枚展開し、端から過去ログを時系列に整列させていた。隣にはまゆが自前のスマホを構え、凪と結翔それぞれのアカウント画面を交互に切り替えて表示している。照明に反射する光が彼女のレンズに一瞬宿り、その目元に宿るのは、明らかに“戦場”を見据える者のそれだった。

「凪くんの最終投稿がこれ」

御堂筋が指で画面をタップし、凪のリア垢を表示する。スクリーンには、障子越しの朝日にうっすらと浮かぶ寝姿とともに添えられた一文があった。

「触れられる距離が、いちばん遠い」

まゆが思わず小さく息を呑む。何度も見返してきた言葉だ。けれど、こうして改めて見るたびに、その投稿が持つ余白と含みが胸に重くのしかかる。

「この投稿に対して、結翔くんは――」

御堂筋の指がもう一枚の画面へと移る。  
投稿はない。  
コメントも、ストーリーも、リアクションも、タグ付けも、何もなかった。

「沈黙」  
その二文字を、まるで“死の宣告”であるかのように御堂筋は呟いた。

「これは完全に、戦線凍結。口火を切った側が沈黙を受け取ったまま沈んでいる構図です」  
御堂筋の声は落ち着いていたが、その目は明らかに炎を孕んでいた。

「しかも十日経ってもまだ投稿がないって……いやもうこれ、冷戦じゃん」  
まゆが叫びを抑えた声で返す。

「このままだと終戦せずに冬迎えるパターンだよ?やばくない?私たちの供給、今止まってるんだよ!?こんな空白、あの二人にありえた!?」

御堂筋は冷静に頷いた。「ありえません。投稿頻度の推移を見る限り、ここまでの空白は初です。ましてや、両者同時の沈黙というのは、前代未聞」

ふたりは再度、凪と結翔それぞれの投稿履歴を並べて時系列で照らし合わせていく。最初は意味深な投稿の“交差”が続いていた。  
同じ時間帯に似た構図。  
引用するような文章。  
意図的とも思える一致した投稿スタイル。

だが、「触れられる距離が、いちばん遠い」以降、すべてが止まった。

「というかさ…これって、いわゆる“返事がなかった”ってやつじゃん?」  
まゆの声が少し掠れる。

「戦略的な投稿をしてた側が、本気になった瞬間、返事がなかったパターン…つまり」

御堂筋が続ける。「傷ついた、ですね」

まゆは唇を噛んだまま、スマホを握る手に力を込める。  
恋の駆け引きが、本物の想いに触れた瞬間、ゲームでなくなってしまったのだ。

「これ、私ら何もできないの?」  
「見守るしかないですね。あとは、周辺の声がどれだけ届くか…」

そう呟いた御堂筋が画面を切り替えると、そこにはSNSのまとめアカウントが表示されていた。

「#一ノ瀬×神城匂わせ考察2025」  
そのタグが、いま密かにトレンド入りしつつある。  
ファンアート、考察スレッド、過去の投稿を時系列で再編集した動画まで。  
一部では「これ付き合ってたけど別れた説」まで出ていた。

「このタグ、だいぶ盛り上がってきてる。逆に、今が一番注目されてるってことかも」  
まゆの目が冴える。

「じゃあ、逆に考えよう。  
沈黙ってことは、まだ終わってないんだよ。戦ってたら、いつかまた動きがある。  
終わってたら、とっくに何か言ってる。投稿がないってことは…まだ、戦場の中にいるってことじゃない?」

御堂筋がそれに頷く。「沈黙は、ある種の臨戦態勢と捉えられます。心がまだ、整理されていない証拠」

ふたりのあいだに、一瞬だけ沈黙が落ちた。  
けれど、それは不安ではなかった。  
むしろ、嵐の前の静けさのような、確信に近いものだった。

「私たちは、見てる側だからこそわかる。  
この沈黙は、まだ終わってないってこと」  
まゆが、タブレットの画面を指でなぞりながら言った。

「じゃあ次に動くのは、どっちだろう」  
御堂筋が問いかける。

まゆは少し微笑んだ。

「さあ。けど、どっちが先でもいいんじゃない?  
勝ち負けなんて、とっくに関係なくなってるって、たぶん本人たちも気づきかけてるんだから」

そして、ふたりは再び画面を見つめた。  
静かな分析会議の中、教室の遠くでは、凪と結翔がまた言葉少なにすれ違っていた。  
投稿されない言葉たちが、いまもまだ、心のどこかでくすぶり続けている。
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