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第二章

見ている分には羨ましいだろうけど、ハーレムって結構大変。――7

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 俺の予想どおり、試合は一方的な展開になった。

「サンダーボルトよ、リック!」
『グルルル……』

 エリーゼ先輩の相手が操るのはサンダービースト。この世界でSランクに認定されているモンスターだ。

 レベルも88で、充分に育成されていると言えるだろう。

 しかし、エリーゼ先輩の従魔には遠く及ばない。

『ガウッ!』

 サンダービーストのリックが、サンダーボルトを発動させる。

 稲光いなびかりが槍となり、エリーゼ先輩の従魔を襲う。

『GOOOOHH!』

 雷槍をまともに食らったが、エリーゼ先輩の従魔はまったく応えていない。

 それもそうだろう。『あいつ』のレベルは120あり、リックとは比べものにならないし、そもそもにおいて、土属性の『あいつ』は、雷属性に強いのだから。

「行け、ファブニル!」
『GOOOOOOOOHHHH!』

 エリーゼ先輩の従魔、ファブニルが反撃に出た。

 3メートルもある巨体が突進を放つ。

 物理攻撃スキル『バレットタックル』。茶色い巨躯きょくが高速で飛び出すさまは、さながら岩石の砲弾だ。

『ギャウッ!!』

 ファブニルのバレットタックルが、リックを吹き飛ばした。

 リックのHPが削り取られ、魔石となる。

「そ、そんな……たった1体の従魔に敗れるなんて……」

 エリーゼ先輩の対戦相手が項垂れる。

 ショックを受けるのも仕方ないだろう。エリーゼ先輩は、ファブニル1体で、相手の従魔を全滅させたんだから。

「よくやったな、ファブニル」
『GOOOOHH♪』

 エリーゼ先輩に撫でられて、ファブニルは嬉しそうに体を揺らす。エリーゼ先輩と敵対していたとは思えない、友好的な態度だ。

 エリーゼ先輩の対戦相手が、ハァ、と嘆息する。

「あなた、よく『アースドラゴン』なんて使役できたわね」

 エリーゼ先輩の対戦相手の眼差しには、感嘆かんたん羨望せんぼうが混ざっていた。

 そう。ファブニルは、『クリム高原こうげん』でエリーゼ先輩を襲ったドラゴン系モンスター、アースドラゴンなんだ。

 エリーゼ先輩が苦笑する。

「わたしひとりの力じゃない。この子を従えられたのは、恩人のおかげさ」

 エリーゼ先輩の答えに、対戦相手の女子生徒は首をかしげた。




「エリーゼ先輩が健闘していなかったら、ユーのバーサクリバストでも倒せなかったけどな」

 観戦していた俺も、エリーゼ先輩と同じように苦笑する。

 あの日、アースドラゴンを倒したあと、

「こいつ、エリーゼ先輩の従魔にしたらどうですか?」

 と俺は提案した。

「トドメを刺したのはマサラニアくんだ。きみが従えるべきだよ」

 エリーゼ先輩は遠慮したが、

「明らかに優秀なモンスターは面白くない。不遇モンスターを輝かせて、みんなの度肝どぎもを抜きたいんすよ、俺は」

 そう言いながら魔石を差し出すと、

「きみらしい理由だな」

  エリーゼ先輩はおかしそうに笑って、受けとってくれたんだ。

「流石は四天王。従えているモンスターもひと味違うね」

 アクトが感心するように溜息をついた。

「たしかにその通りだが、強力な従魔がいるだけじゃ四天王は名乗れねぇよ」
「エリーゼ先輩の強みは、ほかにもあるってことかい?」

 アクトの問いに、俺はうなずく。

「やっぱり四天王は別格だ」

 俺はファブニルの装備品に注目していた。右前足につけられた、茶色い腕輪に。

「アースドラゴンを譲ったのは正解だったな」

 呟く俺は、自然と好戦的な笑みを浮かべていた。
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