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第二章

見ている分には羨ましいだろうけど、ハーレムって結構大変。――6

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「あ、ロッド、こっちこっち――っ!!」

 東の競技場に移動すると、俺を見つけたケイトが、ブンブンと手を振った。

 エッジとの試合後も、俺は勝利を積み重ね、難なく予選を突破した。

 最終試合のあとに時間が余ったため、エリーゼ先輩が戦っている東の競技場を訪れたわけだ。

「呆気なく勝ち抜いちゃったね、ロッド。ぶっちゃけ、憎たらしいくらいだよ」
「なんといってもロッドくんですからね!」

 ケイトが冗談めかして嫌味を口にし、レイシーが我がことのように、エッヘン! と胸を張る。

「観戦していたひとたちも、みんなポカンとしていたよ」
「そうそう! あたし、おかしくて笑っちゃった!」

 アクトの言うとおり、俺が勝利するたび、観客たちは言葉を失っていた。

 選抜された学生たちを、不遇モンスターを用いる俺が、赤子の手をひねるように下し続けたからだろう。

不遇モンスタークロとユーの活躍が、よっぽど信じられなかったんだろうな」
「だろうね。転校して間もないから、僕もいまだにビックリするよ」
「相手が油断するからやりやすいけど、いまいち物足りないんだよなあ」
「『戦闘狂』って言葉はロッドのためにあるんだろうね」

 ぼやく俺に、アクトが苦笑する。

「レイシーの旦那さまはスゴいよねー」
「ケケケケイトさんっ!?」

 俺とアクトのかたわらで、ケイトがニヤニヤ笑いを浮かべ、レイシーが真っ赤になっていた。ケイトが小声でなにか言っていたようだが、なんの話だろうか?

「そそそそれより! エリーゼ先輩のほうも最終試合ですよ!」

 話題を逸らすように、レイシーが、アタフタしながらステージを指差した。

 見ると、エリーゼ先輩が、対戦相手の女子生徒と対峙している。

「やっぱり勝ち上がっていたか。流石はエリーゼ先輩だな」

 凜々りりしい眼差しで、エリーゼ先輩は相手を見据えていた。

 先輩が勝ち抜けば、俺と戦う機会も訪れるだろう。そのときが待ち遠しい。

 エリーゼ先輩との試合を想像してワクワクしていると、レイシーとケイトが、スゥ、と息を吸い込んだ。

「「エリーゼ先輩、頑張ってぇ――――っ!!」」

 ふたりの声援に、エリーゼ先輩が微笑みを浮かべ、片手を挙げて応える。

 なぜかわからないが、俺たちの周りにいる女性客が、「きゃあ――――っ!!」と黄色い声を上げた。

「どっちが勝つと思う?」
「十中八九、エリーゼ先輩」

 アクトの問いかけに、俺は迷いなく答える。

随分ずいぶんエリーゼ先輩を信用しているんだね」
「信用云々うんぬんじゃない、客観的な判断だ」

 クスクスと笑み漏らすアクトに、俺は冷静に返した。

「相手が余程よほどの実力者じゃない限り、エリーゼ先輩には敵わないからな」
「たしかに、四天王クラスじゃなければ無理だろうね」
「いや、いまのエリーゼ先輩は、四天王でも止められねぇよ」

 なにしろ、

「エリーゼ先輩には、『あいつ』がいるからな」
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