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第44話 エンフォード男爵家

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『旦那様大変でございます!』扉の外からノックと共に執事の声がする。
グロウド・エンフォード男爵が面倒臭そうに声を上げる。
『なんだ!何があった!?』
執事が部屋に入り説明する。
『エウロ様とアウロイ様が大怪我をされました!只今、治療中です。』
『なんだと!2人共大丈夫なのか?!』
『命は取り止めましたが・・・残念ながら、お身体は元には戻らないようです・・・。』
グロウドは立ち上がり執事に詰め寄る。
『護衛は何をしていたのだ!!高い金を払って付けただろうが!!!』
顔を真っ赤にして執事に怒鳴りつける。
『は、はい。エウロ様の護衛2人は四肢をバラバラにされ全身の骨を砕かれ、アウロイ様の護衛8人は身体を両断され死亡しました。』
『なんだと!!全員レベル70オーバーの猛者だぞ!?なぜそんな事になっている?!
それよりも何者だ!?エンフォード家に喧嘩を売った奴は!!』
もう血管が浮き出て机を叩きながら激怒している。
『だ、旦那様、噂を耳にしたのですが、』
鬼の形相を執事に向け
『なんだ!言え!!』
執事は恐る恐る話し出す。
『冒険者達が【英雄の弟子達】と話していたそうです・・・。』
動きが止まる。【英雄の弟子達】どこかで聞いた事がある。確かスタンビートを止めた立役者だったか?尾ひれが付いて話が大きくなってたった7人でスタンビートを止めたとか眉唾な奴らだったな!
『おい!トム!そいつらは、どこにいる?!
出向いて皆殺しにしてやる!!どこだ!』
執事に詰め寄り胸ぐらを掴み揺らす。
『う、噂では・・郊外の・・屋敷に・・住んでいる・・らしいです・・・・』
『よし!人を集めろ!出来るだけ集めろ!
エンフォード男爵家に楯突いたらどうなるか教えてやる!!!息子達も連れて行くぞ!!』
解放された執事がフラつきながら立つ。もう言っても無駄だだと思い、もう一つの噂を告げなかった。
【英雄の弟子達】とその【師匠】には絶対手を出すな!


『おい!息子達は大丈夫なんだろうな?!』
治療にあたっている男に詰め寄る。
『命は大丈夫です。ですがエウロ様は全身の骨が砕けていまして、なんとか歩く事はできますが今まで通りの動きは出来ません。アウロイ様は右脚のつま先がありませんので杖が必要になります。』
グロウドは真っ赤な顔で男の胸ぐらを掴み揺らす!
『なぜ完全に治せんのだ!!お前ら手を抜いてるんだろ!!これぐらいの傷も治せんのか!!使えん奴らだ!!クソ!!』
グロウドは男を投げ捨て息子達の所へ行く。
息子達は上半身を起こし頭を下げて父親の顔を見れないでいる。
こんな醜態を晒したのだ。絶対怒られると分かっているのだ。
やはり予想は当たる!!
『お前ら!何をしている!!エンフォード家の人間が醜態を晒しおって!』
2人の頭に拳骨が落ちる。2人は頭を抱えてうずくまる。
『何があった!?言ってみろ!!』
エウロが口を開く
『ギ、ギルドで・・女5人を・・屋敷に連れて行こうとしたら、、その女共が抵抗したんだ・・・。訳が、分からない内にボロボロになってたんだ。』
泣きながら話す。
そして2発目の拳骨がエウロを襲う。
『お前は下民の女共に負けたのか!!!情けない!!エンフォード家の恥だ!!!この馬鹿者が!!』
『お父様!!違うんです!!あいつら異常に強いんです!!信じてください!!』
3発目の拳骨が落ちる!
『煩い!!言い訳するな!愚息が!』
『アウロイ!!お前はどうなんだ!!』
アウロイは涙を溜めながら話し出す。
『ぶ、武器屋で、ド、ドラゴンの魔石を持ったガキがいたんだ・・・。だ、だから、護衛をつ、連れて奪いに行ったんだ。
そ、そしたら抵抗しやがったんだ!!
突然足が無くなって、護衛が一瞬で真っ二つになって・・・・・』
また拳骨が落ちる!
『馬鹿者が!!ドラゴンの魔石!?そんな物ガキが持ってる訳無いだろう!!ガキが護衛を真っ二つ?!嘘もいい加減にしろ!!』
『お父様!!本当なんです!信じてください!!』
3発めの拳骨が落ちる。
グロウドは息子2人を睨みつけ口を開く。
『もういい!お前らの言っている事を確かめに行ってやる!!お前らも来い!!いいな?!』
2人は座り込み震えながらあの恐怖を思い出す。そして2人は逆らった事のない父親に必死に訴える。
『お父様!僕は行きません!!あいつらに手を出しては駄目なんです!絶対嫌です!!』
『僕も嫌です!あんな思いは嫌です!あいつらだけは、あいつらだけは、絶対に手を出しては駄目なんです!!』
グロウドは血管を浮き上がらせ2人に拳骨を落とす!
『この臆病者が!!いいから来い!!嫌でも連れて行くぞ!!!』
グロウドは泣き叫ぶ2人の息子の首根っこを掴んでを引きずって行った。

屋敷の敷地には300人のならず者が集まっている。
グロウドが号令をかける。
『お前ら!これから【英雄の弟子達】とか言うガキを皆殺しに行く!
1人金貨3枚だ!用意しろ!!』
ならず者達がざわめく。
(おい今【英雄の弟子達】て言ったよな?ギルドで見たあいつらだよな?
小枝1本で騎士団長12人をしばき倒したって噂のあいつらだよな?
その師匠はさらにバケモンらしいぞ!)
ならず者達でも命は惜しいのだ。目の当たりにした光景を思い出し身震いする。
『やってられるか!!金貨3枚で命捨てれるか!!お前らだけでやれ!!』
弟子達の実力を知るものはどんどん帰っていく。
グロウドは顔を真っ赤にして叫ぶ!!
『お前ら!!ガキ共にビビりやがって!
お前らにはもう2度と頼まんぞ!!』
『勝手に言ってやがれ!今日がお前の命日だよ!!』
気付けば目の前には120人程度残っていた。半分以上が帰ってしまったのだ!
グロウドは歯が折れんばかりに歯軋りして怒る!!
『くそぉぉぁー!!あいつら!!!臆病風に吹かれやがって!!!お前らだけでも行くぞ!!用意しやがれ!!』

ならず者達と息子達の訴えを聞いておけば良かったと後悔する事とになるとは微塵も思わない、グロウド・エンフォード男爵であった。
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