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第45話 グロウド・エンフォード男爵の後悔

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『おそらく、お前達がぶっ飛ばした奴の親玉が近い内に仕返しに来るだろう。

『たとえ来たとしてもブッ飛ばせばいいんだろ?』
ギエンが笑いながら言う。皆んなも頷く!
俺は悪い顔をしながら
『ぶっ飛ばすのは簡単だ!だが、それでは後悔する暇が無い。
俺達に理不尽を振るった事を嫌って程、後悔させるんだ!!』
弟子達の顔も悪い顔になっている。
側でメル、マリ、エリが3人寄り添って見ている。
さながら悪の組織に見えるのだろか・・・?
そして作戦会議が始まった・・・。

しばらくすると食事の用意が出来たのでご飯を食べる所である。
『いただきまーす!』
弟子達の声があがる。
晩御飯に襲い掛かる弟子達。
環境に慣れれば・・・。アルノーの言葉を思い出す。フッ、まだまだ遠いと眺めている。

エルが最後のお肉を口に入れた時、索敵に反応が出る。弟子達も気付く。
『食後に来るなんて結構良い奴らだな。
後5分ぐらいで着くぞ!準備をしよう!』
『おーー!!』
俺はメイド達には屋敷から出ないように指示をした。
『仕事はそのまま続けてくれ、ちょっと行って来るから。』
メイド達は不安な顔をして返事をする。
『か、かしこまりました。お気をつけて。』

エントランスから外に出ると既に辺りは暗く、丁度馬車と馬が屋敷の前で止まりおっさん達が出てくる。
俺は屋敷に【エリアガード】をかけ、【ライト】で周りを明るくする。
『ギエン、門を開けてやれ。壊されるといけないからな。』
『はい!』
ギエンがブレて帰ってくる。
『師匠!開けて来ました!』
『ありがとう。じゃあ!手筈通りに布陣してくれ!』
『はい!!』弟子達が持ち場につく。
俺を先頭に一歩下がって右にエル左にロウその後ろにメル、マリ、エリ。
右前方にギエンとパル、左前方にジンとエマである。
『メル、マリ、エリ!打ち合わせ通り、お前達は【索敵】を覚えろ!屋敷の周り、敵の人数を探るように感覚を鍛えろ!出来たら教えてくれ!』
『『『は、はい。』』』
『ロウ、ドラゴンの用意はいいな?』
『はい!皆んなお腹を空かせてます!』
あとは、弟子達に目で確認して親玉を待っている。
すると、ダラダラとオッサン達が目の前に集まり出す。そしてその先頭に背が高い身なりの良いオッサンが立つ。両脇には怯えた息子達が顔を伏せている。
『お前か!?【英雄の弟子】とか言うガキ共の師匠とやらは!!』
『えっ!巷ではそんな風に言われているのか!?知らなかったよ!
そうだ!この弟子達の師匠は俺だ!今日は謝罪に来たのか?』
グロウドは顔を引き攣らせ怒鳴り散らす。
『な、なにをぉぉぉー!!息子達に大怪我させておいて謝罪だぁぁぁーー?!ふざけるのも良い加減にしろよぉぉぉーー!!』
『うるさいよ、オッサン!!』
魔力と殺気を軽く叩き込む。
グロウドは嫌な汗を流し何か言いたそうな口をパクパクさせている。
俺はエルの頭に手を乗せて
『エル、お前達を誘拐しようとしたクズは誰だ?』
エルはわざとらしく指を差す。
『あの右のデブだよ!!エル怖かったの!』
『そうか、あのデブだな?俺がメッてしてやるからな!』
俺もわざとらしくエルの頭を撫でる。
次はロウを見てわざとらしく言う。
『ロウ、お前達を理不尽に襲ったクズは誰だ?』
『あの左のデブです!相手は10人もいたんです!俺達必死で抵抗したんです。』
ロウの肩に手を置いて
『そうか、酷い目に遭ったな!俺がこれからフンッてしてやるからな!』
そしてグロウドを見据えて言い放つ。
『おい!オッサン!俺の可愛い弟子達にちょっかいかけたのは、お前のクズ息子共だろうが!!殺されなかっただけでも有り難く思え!!
そしてこれは警告だ!!
お前らがやった事を棚に上げて襲い掛かれば命はないぞ?
後悔しながら色々な死に方を体験させてやる!!でも最後は・・・・フフッ。
さあ!どうする!』

この時グロウドは迷った。嫌な汗が止まらない。膝は笑っている。この人数にも怯む様子もない。そしてこの余裕。
だが貴族である自分が下民に頭を下げるなどあってはならない!たった10人だ!こっちは120人いる!大丈夫だ!いけるはずだ!自分に言い聞かせてしまった。
グロウドは言ってしまう・・最悪なセリフを。
『何を言ってやがる!!貴族は下民に何をしても許されるんだ!!!下民如きが貴族に逆らうんじゃねーよ!!下民は貴族に差し出し、言う事を聞いてれば良いんだよ!!
クズ共がぁぁぁーー!!!
てめぇーら!!やっちまえぇぇぇ!!!』

その時、メルが叫ぶ!
『【索敵】出来ました!屋敷の裏に10人回り込んでます!!』
『よし!!よく頑張った!!』
『ロウご飯の時間だ!裏の10人だ!』
『はい!』
そして、目の前には既にパルのアースジャベリンで足だけ地面に縫い付けられたオッサン達。
さらに、ギエンとジンとエルが小枝で110人のオッサンを見にも止まらぬ速さで打ちまくっている。
そして、激痛にもがいて意識がなくなる寸前にエマが【エリアヒール】をかける。
また激痛の始まりである。
屋敷の裏からは悲鳴と断末魔の叫びが聞こえる。
俺の目の前にはアースジャベリンで直立不動のグロウドが激痛に耐えている。
息子共は反省してそうだから放置してある。

俺は魔力と殺気を出しながら静かに近寄る。
『おい!オッサン!貴族は俺達に何をしても良いだって?』
グロウドの左腕が飛ぶ!
『ぐあっっっー!!!』
『俺達は貴族に差し出せだって?』
グロウドの右腕が飛ぶ!!
『ぐがぁぁぁー!!』
グロウドは既に心は折れ後悔の嵐に飲み込まれていた。
息子達の言葉に耳を傾けていれば良かった!
帰って行った冒険者の言葉に耳を傾けて居れば良かった!
目の前の男に喧嘩を売らなければよかった!
俺が馬鹿だった・・・。
震える息子達を見て覚悟を決めるのだった。

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