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第61話 襲撃の後で

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ファイデル王が青筋を立てて激怒している。
『ゲランドめぇぇぇ!!1度ならずも2度までも我が民に手をだしおって許さんぞ!
武闘大会など生温いわ!
城ごと粉砕してくれる!!
このファイデル王を舐めるとどうなるか教えてやるわ!!!』

ファイデル王は深呼吸を1つする。

『ハヤトと連絡を取れ!
ゲランド帝国への対応を協議する!!』
『はっ!!』



『お姉ちゃん!!』
ニーナがセシルに飛びつく。
『ニーナ!!なんでここに?!』
ニーナは涙と鼻水を擦り付けて喜んでいる。

『お姉ちゃんが死んだって聞いたの!
だから【英雄】捕獲部隊に参加してたの!』

『なんて無茶な事を!!!下手をすれば死んでたのよ!!・・もう・・・』
セシルはニーナを抱きしめる。
『ニーナ・・・心配かけてごめんね・・』

セシルはハヤトに頭を下げる。
『ハヤトさん!ニーナを助けてくれてありがとう!本当にありがとう!』

『まあ、成るべくして成ったんだ。
お前達の日頃の行いが良かったんだよ。
ついでに奴隷紋も消しといたから自由にすれば良いぞ!』

ニーナが驚く!
『えっ?!いつの間に?!どうやって?!』
セシルはニーナの肩に手を置く。
『ニーナもハヤトさんのステータス見たんでしょう?
もう私達の常識は通用しないの。ここは常識の外に居ると思って!』

『う、うん。そうだよね。魔力が2千万越えたらなんでも出来そうだもんね。』
ニーナもハヤトのステータスを思い出して納得した。

『ハ、ハヤト様!』
いきなり呼ばれてビックリして振り返ると、メル・マリ・エリが一振りの刀を差し出した。
『ハヤト様、私達が今出来る限りの力を注ぎ私達の思いを全力で注いだ一振りです。
是非、お側に置いてください。』

彼女達の気迫が伝わってくる。レベル差を無視した圧力だ。嫌な汗が流れる。
思わず刀を鑑定する。


魔力吸収・極
斬撃・極
不壊
$€£%#$£€・極

最後の何?!鑑定でも分からない!!
俺は恐る恐る刀を手に取る。

『あ、ありがとう。』
俺は刀の異様な威力を感じた。

俺は覚悟してゆっくりと刀を鞘から抜くと、
刀身は真っ赤で陽炎が揺らめいてる。

俺は素振りすら許さない一振りだと感じた。
彼女達の全力の一振り。思いの一振り。
俺はゆっくりと鞘に納める。

そして彼女達を抱きしめる。
『ありがとう。お前達の気持ちは受け取った。この刀は俺の最終兵器だ!
本当にありがとう!!』

彼女達は涙を浮かべながら
『ありがとうございます。全力を込めた甲斐がありました!』

皆がその姿を見て目頭を熱くした。


『ハヤト様、よろしいでしょうか?』
振り返るとアルノーが一礼する。
『カルメン様がお見えになりました。』

『あぁ、ファイデル王が呼んでるのだろう。このまま出掛けるよ。皆んな後は頼んだぞ!』
『はい!!』

『行ってらっしゃいませ。』
アルノーが一礼する。


『ハヤトよ、よう来てくれた。面倒をかけるのう。今回も大変だったな。』
ファイデル王が労う。

『お気持ち感謝します。しかし、それほどの事では有りません。』

『お主にかかれば大抵の事は大した事はないか!フォッフォッフォッ!
して、今回の襲撃をどう思う?』

『はっ!武闘大会の宣言の後の事から考えると、上からの命令ではなく部下の汚名挽回による暴走だと考えます。』

『成る程・・そう考えるのが妥当か・・。』
王は顎を撫でながら冷静になって考える。

『ファイデル王、俺の考えをお話しいたします。』
俺はファイデル王が先走らないように武闘大会での作戦の全容をファイデル王に話して
聞かせた。

ファイデル王は聞き終わると笑い出した。
『ファッハッハッハッ!!それはいい!
ハヤトよ、お主も悪よのう!!』

『フフフッ。お褒めにあずかり光栄です。』

それを聞いていた周りの貴族や文官、側近達は、改めて敵に回しては駄目だと身震いするのだった。


一方、ゲランド帝国では騎士団参謀リゲルが激しい叱責を受けていた。
『リゲル!!貴様!勝手に一軍を動かした上に34人が全滅だと!?
それに鑑定士まで失った?!
貴様!どう責任を取るつもりだ!!!奴隷落ちも覚悟しておけ!!』

リゲルは焦る。奴隷落ちは避けなければならない。
『ゲランド皇帝!お、お待ちください!
一軍の団長3人はレベル200を越えていました!
その3人が全滅したのです!相手の戦力はそれ以上なのです。
こちらも対策をしなければ懐に誘っても危険です!!』

ゲランド皇帝はリゲルの言葉に冷静になる。
『ほほう。貴様は相手の戦力を測る為に一軍を動かしたと言うのか?』

リゲルは口元を緩ませる。
『はっ!その通りです。
実力だけ測り、戻る様に指示しましたが彼らのプライドが邪魔をしたのでしょう。』

『成る程、そうだったか・・・。
ふん!今回は大目に見てやる。下がれ!』

リゲルはニヤけるのを我慢して部屋を出ていった。

ゲランド皇帝はため息をつく。
『ベラント、奴に声を掛けておけ。
性格は最悪だが腕は立つ。金と女を用意してやれ。』

ベラントは顔をしかめる。
『本当によろしいのですか?あ奴は暴れ出したら手がつけられません・・・。』

『仕方あるまい!クズでもレベル500を越える我が帝国の切り札だ!』


【神さまの部屋】
『レベル300を越えてる奴がいたんだな!』

『そう言えば15年ぐらい前に転生させた人間が居たような・・・』

『まあ、でもこれで少しは面白くなってきたよね!』

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