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第83話 レイラ・メーランド

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『ハァハァハァ、、、このゴミクズめぇぇぇ!!死ね!死ね!いろんな意味で死ねぇぇぇぇ!』

レイラがクレイの股間を踏み躙りながら罵っている。
クレイは既に白目を剥いて泡を吹いて気絶していた。

俺はそれをドン引きで見ていた。
(お、恐ろしい・・・・この辺で帰ろう。)

俺は執事に帰る事を伝えて気付かれない様に外に出た。

そしてレイドが我に返る。
『ハァハァ、そう言えばハヤト殿はどこに?!』

『ハヤト様は後は貴族同士の問題なのでと言い残してお帰りになりました。』

執事が呆れながら答える。

レイドは顔を真っ赤にして怒鳴る。
『なんで引き止めなかったぁぁぁ!!
恩人を1人で返したのかぁぁぁ!!!』

執事は頭を下げながら
『申し訳ありません。ですがハヤト様のご希望でしたのでその様に致しました。』

レイドは自分が我を忘れていたのを思い出し冷静になる。

『そ、そうか。セバス、悪かったな。』

『いいえ、ご理解ありがとうございます。』

レイラも落ち着いて冷静になって聞く。
『お父様、なぜ私は急に良くなったのですか?』

レイドは当たり前の様に
『ハヤト殿がお前を治してくれたのだ。
お前が会いたがっていたハヤト殿だ!』

レイラは固まる。
『ハヤト様・・・?英雄ハヤト様・・・?』

『そうだ!お前が会いたがっていた英雄ハヤト殿だ!』
レイドがドヤ顔で言う。

レイラが嫌な汗を流す。
英雄ハヤト様の前ではしたない言葉を使い、男の股間を踏み躙りながら・・・・

『いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』
恥ずかしさの余り頭を抱えて蹲る。

『このクソ親父ぃぃぃぃ!!なんで早く言わないのよぉぉぉぉぉ!!
第一印象最悪じゃないのよぉぉぉぉ!!
男の股間を踏み躙る女よぉぉぉぉ!!!
それは黙って帰るわぁぁぁぁぁ!!!』

レイドは考える。
『我を失って何も覚えてない!!
あんな事をされたんだ!!仕方ないだろう?!どうだ?!』

レイラはもうそれしか無いと決断する。
『そうね、それしか無いわね・・。
私は何も覚えてない!それで行きましょう!!なんとしてもハヤト様の誤解を解くのよ!!』

(誤解ではないのですが・・・)
セバスを始めメイド達が密かに思うのだった。


『この大馬鹿者がぁぁぁぁぁぁ!!!!』
貴様は何をしでかしたのか分かっとるのかぁぁぁぁ!!!!』

屋敷の庭で父親であるライドが青筋を立ててクレイの頭を踏み躙っている。

『この大馬鹿息子がぁぁぁ!!!
貴様は今度こそ勘当だぁぁぁぁ!!!
レイモンド家から出て行けぇぇぇぇ!!』

ライドはクライの首根っこを掴み引きずって行く。

クライは泣きながら
『お、お父様お許し下さい!!!
ほんの恋心です!お許し下さい!!』

ライドは問答無用で門を開けて叩き出し
金貨が数枚入った袋を投げつける。

『そんな恋心要らんわぁぁぁぁ!!
今後この屋敷の周りを彷徨いたら罪人として捕らえるからな!!!失せろ!消えろ!』

ライドは門を閉めて屋敷へ向かう。

『お父様!!!お許しをー!!お願いですぅぅぅぅ、、、、』

クライは門の前で両手を付いて項垂れる。

『クソぉぉぉ!何が英雄ハヤトだ!!
余計な真似しやがって!
みてろよぉぉぉ!』

更なる絶望の始まりであった。


朝のひと時、紅茶を飲みながら窓の外を眺めている。
噴水の周りでフェンと弟子達が戯れている。
エルがフェンに甘噛み?!されて持ち上げられているが、エルは楽しそうだ。
恐らく普通の人間なら一溜りもないだろう・
・・。

すると豪華な馬車が門の前で止まる。

『やっぱり来たか・・・。』

『おはよう御座います。
レイド・メーランド公爵様。今日はどの様な御用向きでしょうか?』
アルノーが出迎えている。

『おお!今日はハヤト殿に改めて礼をしようと思ってな!
娘も礼が言いたいと言うので連れてきたんだ。』

『そうでございましたか。』
アルノーが一礼して案内する。

『今日はお弟子さんは外にいますので中に入れると思いますよ。』

するとレイラが弟子達を見て叫ぶ!
『きゃあぁぁ!!あの子大きな犬に食べられているわ!!!』

レイラが焦って震えている。

『レイラ様、あれは戯れているだけでございます。
何も心配はありません。いつもの事でございます。』
アルノーが笑いながら説明する。

レイラは信じられないと言う顔をしてもう一度弟子達を見ると、
笑いながら犬にムシャムシャされている。

『嘘・・・。どうなってるの?!』

『レイラ様は絶対に真似してはいけませんよ。英雄の弟子達だから出来る事なんですから。』
アルノーが釘を刺す。

レイラは首をカクカク上下に振りながら
『言われなくても絶対真似しないわ・・・』

レイドとレイラが部屋に案内される。

俺は作り笑いをして
『レイド殿、おはよう御座います。さあ、お座りください。』
メイド達が紅茶を淹れてくれる。

『あれからレイラ様のお身体はどうですか?』

『あぁ、お陰様で元気過ぎるくらいだよ。
ハヤト殿!レイラの事は本当に感謝する!
これを受け取ってくれ!』

レイドが大金貨が数枚入った袋を差し出した。

俺は素直に受け取る。
『ありがとうございます。この件はこれで貸し借り無しという事にしましょう。』

『わはははっ!!本当にハヤト殿は欲が無いな!!』
レイドはチラリとレイラを見て目で合図する。

『ハヤト殿、今日はレイラがどうしても感謝を伝えたいと言うので連れてきたのだ。』
レイドが目配せをする。

レイラは優雅に立ち上がる。
『英雄ハヤト様、私はレイラ・メーランドでございます。
この度は危ないところを助けて頂きありがとうございました。
実のところベッドで目が覚めた所までしか記憶が無くハヤト様へのお礼が遅れてしまいました。
本当にありがとうございました。』
深々とおじきをする。

(こうして見ると文句の付けようの無い女性なんだが・・・見た目では何とやらか・・
ここはお世辞の一つでも言っておくか・・)

『元気になって良かったです。
レイラ様はお綺麗ですから男達の嫉妬に巻き込まれる事がありますから気をつけてくださいね。』

レイラは頬を赤らめてもじもじしながら
『うふ、、ハヤト様ったらお上手ですわね。
今度屋敷にご招待致しますわ!
その時にハヤト様の武勇伝をお聞かせくださいね。』

(ここは余りガツガツ行ったら駄目よね。)

頃合いをみてレイドが立ち上がる。
『ハヤト殿!今日はこれで失礼する。
今度、遊びに来てくれ!!』

『はい。近いうちに。』

アルノーがエントランスの扉を開けると、レイドとレイラが外に出る。
しかし2人の視界の縁に見てはいけない物が映った・・・。
恐る恐る見ると、赤い大きな生き物が唸りながら人に甘えていた。
そして目が合った・・。

『グォルル・・・』

2人共固まったまま動けない。
するとレイラは震えながら腰を抜かし失禁してしまった。

『あ、あう、こ、ここは何なの?! 
何なのよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!』

レイラの作戦は失敗に終わり叫び声が虚しく響いていた。
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