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第114話 エルフォン国王への報告

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外へ出ると馬車の周りに男達が倒れていた。
(やっぱりここも襲われたのね・・・)

『ぐえぇぇぇぇ!!!』

『こんな所で吐くな!!子供達に病気が感染るだろう!!!』

どふぅぅぅぅ!!!
『ぐぎゃぁぁぁぁ!!』

がっしゃぁぁぁぁーん!!

丁度最後の1人が力尽きた所だった。

エマが顔を出してニッコリ笑う。
『お疲れ様!助かったわ!』
ジルバ達がエマに気付き歩み寄る。

『はっ!容易い事です。肩慣らしにもなりませんでした。』
キレのいいお辞儀をする。

『うん!さすがね!それじゃあ、予定通り孤児院で待っててね!』

エマが笑顔でジルバ達に手を振り馬車に乗り込んで走り去って行く。

ジルバ達は走り去る馬車を見送る。

ジルバ達は光悦な表情でため息をつく。
『エマ様が笑顔で手を振ってくださった・・・あぁ、、、尊い、、、』


お城の前に着くと門兵がぶっきらぼうな話しかけて来る。
『用件はなんだ?』

『ゾルファの街のギルドマスターをやっているバーニンだ。
魔人復活についての報告がある。
至急エルフォン王に謁見願いたい!!』

『暫し待て。』
門兵が奥へ消えていく。
しばらくすると門が開かれ中へ通される。


エルフォン王の前で跪く。
『ゾルファの街のギルドマスター、バーニンです。報告がございます。』

『うむ。聞こう。』

バーニンは顔を上げ緊張しながら口を開く。
『ゾルファの街の領主ネルバ・ノーランドが魔人を復活させ奴隷としておりました。』

エルフォン王が勢いよく立ち上がる!
『何だと?!魔人を復活させただと?!
ネルバには封印の祭壇の管理を任せていたのだぞ?!』

『これは事実でございます。それにネルバはザラフ盗賊団と結託し子供達を攫い奴隷にしておりました。』

エルフォン王が唖然とする。
『な、何だと・・・我国でそんな事が・・・そう言えば孤児院の子供達が行方不明になったと報告があったが・・・』

バーニンは王様の目を見る。
『はい。その子達です。
ですが、ネルバの屋敷にいた子供達は保護しました。』

エルフォン王は少し表情が緩む。
『おお、そうか!大義であった。
わで、魔人はどうした?何も被害は報告されておらんぞ?!』

バーニンはチラリとエマを見る。
『はっ!実はネルバの屋敷で魔人と戦い、子供達を助け出したのは、ここに控える者です。

エルフォン王は怪訝な顔をする。
『何と?!その娘が魔人と戦っただと?!
バーニン!冗談を言う場ではないぞ!!』

チラリとエマを見ると肩か小刻みに震えていた。
(エ、エマ殿、お、抑えてくれ!)
バーニンが耳打ちして声を上げる。

『エルフォン王!冗談ではございません!!
見た目で判断してはなりません!
この方は【英雄の弟子達】の1人なのです!』

エルフォン王が目を見開く!
『何と!!本当か?!あの噂の【英雄の弟子達】か?!』

エルフォン王は文官を呼ぶ。
『おい!騎士団長のカーズをすぐに呼べ!』
文官は全力で謁見の間を出て行く。

そしてエルフォン王がエマを見る。
『さて、娘よ。名を聞こう。』

エマは立ち上がりエルフォン王を見据える。
『私は【英雄ハヤト】の弟子が1人〈聖神のエマ〉です。
王様、私からも聞いてもらいたい事があります。』

すると扉が開き騎士団長のカーズが入って来て王様の前で跪く。

『お呼びにより参上しました。』

『うむ。カーズよ!この者を知っておるか?』

カーズはエマを見ると目を見開き口元が緩む。
『はっ!この方は、私の恩人〈英雄ハヤト〉殿の弟子の1人に間違いありません!!』

『うむ。そうか。』

エルフォン王は口元を綻ばせる。
『エマよ疑ってすまなかったの。其方達は我が国の騎士団長達を解放してくれた恩人だ。
何か言いたい事があるのなら言ってみよ。』

(この王様はファイデル王と似ているわ。少し安心したわ。)
エマは肩の力を抜いて話し出す。

『はい。ありがとうございます。
まず、ネルバは魔人に殺されました。奴隷紋が消えたのです。
しかし魔人は子供達を助けて、子供達の為に涙を流せる者でした。
もう暴れる事はないでしょう。』

『ま、魔人が?!そ、そうか・・・ただ恐れるばかりでは分からぬ事があるのだな・・。』

エマは更に続ける。
『王様、ここへ来る道中にザラフ盗賊団に襲われました。
ザラフ盗賊団は貴族御用達だと頭が言っていました。
これがザラフ盗賊団と繋がりがある貴族と取引内容が書かれた帳簿です。』

帳簿を王様に差し出すと控えていた男が慌てて声を上げる!
『エルフォン王!そ、そんな物ある訳が無いですぞ!!信じてはなりません!!!』

それをきっかけに数人の男達が声を上げる。
『そ、そうですぞ!そんな物信じてはなりません!』

『ね、捏造に決まっておりますぞ!!』

エルフォン王が声を上げる。
『黙れぇぇぇ!!!お主達は何を焦っておる?!ある訳が無いとはどう意味じゃ?』

男達は大人しくなり嫌な汗を垂らしている。

エルフォン王は帳簿を手に取りページをめくっていく・・。
帳簿を持つ手が震え出す。目尻が引き攣る。
王様が怒りを爆破させる!!

『貴様等ぁぁぁぁぁ!!!!ここへ出て来い!!!
余が自ら成敗してくれるわ!!!』

『カーズ!この帳簿にある奴らを牢にぶち込んでおけ!』

カーズが圧倒されながら帳簿を受け取る。
『はっ!直ぐに!!』

男達は震えながら床に頭を付けている。
『よくも、わしの顔に泥を塗ってくれたな!!
我国で子供達を攫い、暗殺?!密輸だと?!好き放題してくれたなぁぁぁぁ!!!
貴様等は国民の前で晒し首じぁぁぁぁ!!
牢にぶち込んでおけ!!』

『王様!!ご慈悲をーーー!!』
『私は知りませぬぅぅぅ!!!』
『誤解でございますぅぅぅ!!!』

男達は叫びながら衛兵に引き摺られて出て行った。

『さて、エマよ見苦し所を見せたの。
お主は一体何が言いたいのじゃ?』

『はい。私はここへ来る間に子供達の泣き顔ばかり見て来ました。
これは国としてとても寂しい事だと思います。
奴隷という制度がある限りいつの世も子供達が安心して暮らせないのです!!
子供達は国の宝です!人の宝です!
子供達を理不尽から守りたい!
それが〈英雄ハヤト〉の理想!願いなのです!それを広める為に私達は旅をしています!』

エルフォン王の頬に涙が溢れる。
『な、なんと大きな男よ〈英雄ハヤト〉・・
わしも話をしてみたいものじゃ・・・
エマよ分かったぞ。
この度の事はわしの落ち度でもある。
奴隷制度は撤廃を宣言しよう!!』

『王様。ありがとう。』
エマが跪き頭を下げる。

『エルフォン王を動かすとは・・〈英雄ハヤト〉一派か・・・凄え奴らだ・・・』

バーニンがエマを見ながら呟くのだった。
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