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第113話 エルフォン王国

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ザラフ盗賊団の隠れ家から戻ると三闘士と子供達が遊んでいた。
何とも微笑ましい魔人の姿だった。

『エマお姉ちゃんお帰り!!』
子供達がエマにしがみつく。

助け出した子供達が声を上げる!
『あっ!マロ!マロじゃない!!』
『えっ!ランちゃん!!ルーナも!ジーナも!!』

子供達が抱き合って喜んでいる。

『皆んな友達なの?』
エマが聞く。
『うん!!エルフォン王国の孤児院で一緒にいたの!!』

聞けば21人中16人が同じ孤児院だった。身寄りのない子供達が狙われたのだ。
子供達が安心して暮らせる様にしなければと強く思うのだった。


バーニンが意を決して話しかける。
『エマ殿・・・子供達の事で後回しにしていたが・・・【リザレクション】、【パーフェクトヒール】・・・数十人の集団発動魔法だよな?!それを1人で使えるのか?!それも連続で?!』

エマは呆れた顔をする。
『今更何を言ってるの?レベル3400越えてるんだから当然でしょ?
もうそろそろ慣れてよね!』

『そ、そうだな・・・ところで俺の水虫も治るのか?』
バーニンは思い切って聞いてみる。

エマは笑顔で
『金貨1枚で治してあげるわ!!』

『か、金取るのか?!でも小遣い貯めてお願いしようかな・・・』
バーニンが本気で呟いていた。


『さあ!見えて来たわね!』

目の前に大きな城門が見えてくる。
入門するのに受け付けがある様で皆が並んでいる。

エマは子供達の所へ向かう。
『皆んな!少し時間がかかるから待っててね!』
『はーい!!』
元気な声が返ってくる。

『それとジルバ達は子供達と孤児院へ行って待って欲しいの。いいわね?』

『はっ!了解しました!』
ジルバ達がキレのいい返事をする。

しばらくして順番が来ると門兵が寄ってくる。
『積荷を確認する。しばらく待て。』
バーニンが頷くと門兵が子供達の馬車へ向かう。
すると門兵が怪訝な顔をして戻って来てバーニンに詰め寄る。

『あの子供達はどうしたんだ?!ここへは何しに来た?!』

バーニンは冷静に話す。
『あの子達はここの孤児院の子供達だ。
道中ザラフ盗賊団に攫われて監禁されていたのを助け出したんだ。
今日はエルフォン国王に謁見して別件と今回の件も合わせて報告する為に来たんだ。』

門兵の顔が引き攣る・・・。
『そ、そうか・・・。暫し待ってくれ。』
門兵が奥へ小走りで消えて行く。

しばらくして門兵が戻って来る。
『上司が詳しい事を聞きたいとの事だ!
案内するからついて来てくれ!』

エマはバーニンの脇腹をつつく。
(バーニンさん。警戒してね。
王様に報告されると都合の悪い奴が居るみたいよ・・・。)

門兵に連れられ古びた建物の前に馬車を停める。

『ここだ。中で上司が待っている。』

『分かった。ありがとう。』
バーニンが棒読みで返事をする。

(16人か・・・これで確実に襲ってくるわね。)

エマが子供達の所へ行く。
『皆んな!ちょっと待っててね!
〈お・は・な・し〉してくるからね!』

『ジルバ、分かっているわね?
子供達に近づく奴等は全て死なない程度に殺しなさい!』

『はっ!心得ております!エマ様もお気をつけて!』

『じゃあ行ってくるわ!』
エマが手を振りながら建物に入って行く。

『あの、ジルバさん。これから何が始まるの?』
女の子が不安気に聞く。

ジルバは笑顔を作る。
『心配ない。〈お・は・な・し〉だ。』

建物の中に入ると薄暗く埃っぽい。
目の前には二階へ上がる為の大きな階段があり、階段の最上段に人影が見える。

すると階段の脇から男達が現れ、階段の上から男のドスの効いた声がする。

『お前等が何者か知らんがガキ共は頂く!
お前等は死ね!お前等!殺せ!!』

(気持ち良いぐらいクズね!やり易いわ!!)

『バーニンさん!下がって!!』
バーニンの目の前に立ち魔法を放つ!

『【シャイニングアロー】!!!!』

男達に問答無用で光の矢が突き刺さる!

『ぐあっっっぅ!!ぐがぁぁぁぁ!!』
『がはっっっ!!うぐっっっっ!!』
男達は次々と四肢を吹き飛ばされ、身体を貫かれ倒れて行く。

そして目の前の階段が砕け散り男が落ちて床に叩きつけられる。

どっごぉぉぉん!

『ごはぁぁぁぁ!!!』

男は痛みでのたうち回ると男達の血痕で真っ赤になった。

『ぶはっ!!ぐはっ!!な、なんだこれは!』

男が起き上がると目の前には男達の無惨な死屍が散乱し血の海と化していた。

『うあぁぁぁぁぁ!!!何だこれは!!どうなってる?!』

エマは男を見据える。
『あんたが私達に問答無用で喧嘩を売ったから、私達も問答無用で買ってあげたのよ!
何か変かしら?』

男の顔から血の気が引いて行く。

『お、お前等!こ、こんな事してタダで済むと思うなよ!!!
お、俺はグライド・ジーランス伯爵だぞ!!』

エマがニヤリと笑う。
『あら!自分から名乗ったわね!バーニンさん。あいつの名前あるかしら?』

バーニンが帳簿をめくり出す。
『えっと・・グライド・・・グライド・・
あった!!グライド・ジーランス!
奴隷ばっかり要求しているな・・・』

『やっぱりね!ザラフ盗賊団と繋がりがあるのね!
これであんたは終わりよ!』

グライドが焦り出す。
『な、何の事だ?!知らんぞ!知らん!!』

『本当に馬鹿ね!ここに動かぬ証拠があるのよ!ザラフ盗賊団の頭から頂いた帳簿がね!』

『くっ!!わ、分かった!!それを買い取ろうじゃないか!!
いくらだ?!言い値で買い取るぞ!!』

『残念!!今からあんたをぶっ飛ばすから無理!!』
エマはグライドの顎をモーニングスターで打ち上げる!!

どこぉぉぉぉーん!!

『ぐっぎぁぁぁぁぁ!!!』

グライドは天井に刺さり揺れていた・・・。

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