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第116話 守り神

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『おばあちゃん!!お空に大きな鳥さんが飛んでるよ!!!』
男の子が空を見上げて指を差している。

『んーー、どれどれ、、、』
腰に手を回して空を見上げる。

『おー!あれはなぁ、この大陸の守り神、竜神様じゃ!
昔から、わしらが平和に暮らせる様に見守っておるのじゃよ!』

孫の頭を撫でながら話して聞かせる。

『へぇーーー!じゃあ竜神様は強いの?!』

『ほっほっほ!それは強いなんてもんじゃないよ!ドラゴン達が従うのじゃからな!
ただ・・・悪い事をする人は情け容赦なくドラゴンに食べられるのじゃぁぁぁ!!』

孫を軽く脅かすつもりが泣き出してしまいおばあちゃんが苦笑いしながら孫の機嫌を取るのだった。


『んっ!ふあぁぁーー!!よく寝たな。』
森の中の泉の辺りで伸びをする。

『さてと街に行ってお昼ご飯にしようか!
・・・ん?』

【索敵】に反応が出る。
(23人か・・・これは・・追われているね。)

ロウは森の中へ駆け出す!
木々をすり抜け疾風の如く走り抜ける。
すると子供を連れた男女が追い詰められていた。

『くっくっくっ!鬼ごっこは終わりの様だな!手こずらせやがって!
おい!女とガキを連れて行け!!
こいつはここでおさらばだ!!』

男がニヤつきながら剣を突きつける!
その瞬間!

スパン!!

剣を持つ男の腕が宙を舞う!そして男の足元に転がる。
男は何が起きたか分からない。
自分の右腕があった所に違和感を感じて恐る恐る見ると血が吹き出し流れ落ちていた。

『ぎやぁぁぁぁぁぁ!!!!俺の腕、俺の腕がぁぁぁぁぁ!!!』

男は激痛と腕が無くなったショックでのたうち回る!!

3人の前には剣を構えたロウが立っていた。
『大丈夫かい?何があったの?』

親子も混乱していて固まっていたが、父親が我に返り話し出す。
『あ、あいつら、盗賊だ!乗り合い馬車を襲ったんだ!
私達は隙を見て逃げたが・・この通りだ。』

ロウの雰囲気が一変する。
『貴方達は下がって。』

『おい!ガキ!英雄ぶってシャシャリ出て来るなよ!!死ぬだけだぞ!!』
盗賊の男が威嚇するように怒鳴りつける。

ロウはそんな言葉も無視して剣を突きつける!
『お前たちは弱い人を食い物にするクズだ!!
〈英雄ハヤト〉の名において成敗する!』

『けっ!カッコつけてんじゃねぇーよ!お前らやっちまe・・・』

男達が構えた瞬間!
背後に巨大な生き物が3体降り立つ!

ずずぅぅぅぅぅん!!!

レッドドラゴン、ブルードラゴン、ブラックドラゴンである。

親子も盗賊達も腰が抜けてへたり込む。

『そ、そんな・・・何でこんな所にドラゴンが・・・も、もう終わりだ・・・震える妻と子供を抱きしめる。』

ロウは背中越しに
『大丈夫だよ!あの子達は僕の友達さ!皆んな悪い奴らが大嫌いなんだよ!
でも今から起こる事は子供には見せない方がいいよ。』

震える親子がロウの背中を見てキョトンとする。
『さあ!お昼ご飯だ!!』
ロウが剣を振り下ろすとドラゴン達が盗賊に襲い掛かる!!

咄嗟に母親が子供の目を手で覆う。

『ぎいやぁぁぁぁぁ!!!助けて、助け・・・』

バキバキ・・ぐちゃ、ぶちゃ・・・

『おごあぁぁぁぁ!!ぶぎぁぁぁぁ!!助けて・・・』

ごりっ!ぐちゃ・・・くちゃっ・・

両親でさえ目の前の光景に目を覆いたくなる惨状であった。

ドラゴンに足で押さえつけられて食いちぎられる者、頭から食われる者、盗賊達の末路が目の前にあった。

盗賊達がドラゴンの腹に入ると3体のドラゴンがロウに近づいて顎を地面に付ける。

ロウはドラゴン達を撫でて労う。
『よくやってくれたね!ありがとう。』

すると女の子が母親の手から離れてドラゴンに走り寄りドラゴンに手を伸ばす!
両親が一瞬声を上げそうになるが、ドラゴンは黙って撫でられているのだった。

父親が立ち上がり頭を下げる。
『ありがとうございました。お陰で助かりました。本当にありがとうございます。
あの、良ければ名前を教えてください。』

ロウは笑顔で
『僕は〈英雄ハヤト〉の弟子が1人!〈竜神〉のロウです!』

両親が打ち震え目を見開く!!
『り、竜神・・・竜神様!!!ま、間違いない!!
ドラゴンを従え悪は情け容赦なくドラゴンの食われる!!
昔から聞かされていた話し通りだ!!』

両親が跪いて頭を下げる!!

『竜神様!本当にありがとうございました。是非、私達の村へお越し下さい!』

『そんな事より他の人達も助けないと!馬車の所へ案内して!!』
ロウが声を上げる。

『あ、は、はい!!ここを真っ直ぐ行った所で襲われました!!』
父親が慌てて指を差す。

『僕は先に行くから、貴方達は後から来てね!
道中はドラゴンが見ているから大丈夫だよ。
それじゃあ!』

ロウは再び走り出す。

馬車が見えて来ると見張りの盗賊らしき男が5人見える。

ロウは盗賊達の前に現れる。
『貴方達は盗賊で間違いないですか?』

『何だぁぁぁぁ?!このガキは?!構わねぇ!捕まえろぉぉぉ!!』

盗賊達はロウに襲い掛かるが既にロウは盗賊の背後にいた。
すると盗賊達の首に赤い線が現れ、胴体からずり落ちる。

『ふう、あんた達と遊んでる暇はないんだ。』
ロウのは目の前に倒れている男性3人に駆け寄る。

『パパ!パパを助けて!!お願い!!』
縛られたままの女の子が悲痛な叫びを上げる。
見ると男性は事切れる寸前だった。
ロウは慌ててエリクサーを取り出して口に流し込む!!
すると呼吸が安定して顔色が良くなって行く。
そして他の2人にもエリクサーを飲ませる。

男達の傷が癒えていく。そして何事もなかった様に起き上がった。

『お、俺は・・・盗賊に・・い、生きているのか?!』

『ふう、間に合って良かったよ』
ロウは縄を切って皆を自由にすると家族が男達を抱きしめる。

『パパ!パパ!良かったの!良かったの!』
『あなた!!良かったぁぁぁぁ!!』

皆がロウに振り向き殺到する。
『ありがとうございます!!ありがとうございます!!何と俺を言ったら良いか!!』

女の子が足にしがみつき、涙と鼻水を擦り付けながら
『パパをありがとう!パパをありがとう!』
必死にお礼を言っている。

ロウは頭掻きながら
『まあ、取り敢えず良かった!!助ける力があれば助けるのは当然ですよ!』

ロウが立ち去ろうとするとさっき助けた親子が駆け寄って来て跪く。

『竜神様!!奇跡をありがとうございます!!
是非!私達の村へお越しください!!』

『え?!え?!り、竜神様?!』

『ま、まさか?!でも・・・俺は生き返った・・・』

さっきの母親が皆に声を上げる。
『皆なさん!この方は竜神様です!!私達はドラゴン達に助けられました!!
盗賊達は目の前でドラゴンに食べられたのです!!』

皆んなが顔を見合わせて突然跪く。
『竜神様!!奇跡をありがとうございます!
是非、私達にお礼をさせてください!!』

(うーん。困ったな・・・まぁ・・いいか。)

ロウはため息をついて
『僕はまだやる事があるから少しだけだよ!』

『あぁ、ありがとうございます!私達の村はこの先の〈ミラフ村〉です!
竜神様を祀る村なのです!』

(僕は祀られるのか?!面倒な事になったな・・・)
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