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第119話 ヒューラン王

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『ここがヒューランかぁ!大きいなぁ!』
高い城壁に囲まれて外敵からの攻撃に備えた造りになっている。

(それにしても凄い列だね・・・中に入るだけで一苦労だよ。)


『身分証を見せてくれ。』

ロウはギルドカードを手渡す。

すると門兵の目尻が引き攣る。
『お、お前みたいなガキがSランクだと?!
そんな訳あるかぁぁぁぁ!!!
貴様!どこから来た?!』

『はぁ、ファイデル王国からです。そのギルドカードも本物ですよ。』

すると騒ぎを聞きつけた上司らしき獣人が様子を見に来た。
『どうした?!問題か?!』

『このガキがこれを・・・』
『こ、これは!Sランクか?!凄いな・・・
このギルドカードも間違い無く本物だな。
問題ないぞ!』

『えっ?!でも・・・』

上司は男を睨み付ける。
『馬鹿野郎!!!人を見かけで判断するな!!!分からねぇのか?!
このビンビンくる存在感が?!お前なんて指先1本であの世行きだぞ!!』

『あんた、悪かったな。
良ければ何者か教えてくれないか?』
上司は汗を垂らしながら頭を掻く。

ロウは少し嬉しくなりニッコリ笑う。
『僕はファイデル王国の〈英雄ハヤト〉の弟子が1人!〈竜神のロウ〉です。』

上司は満面の笑みを浮かべる。
『あーーー!!!!あんた【英雄の弟子達】かぁぁぁ!!!
通りで凄げぇと思ったぜ!!
ラージンが会いたがってたぞ!!案内するから来てくれ!!!』

(問答無用なんだな・・・面倒な事にならなければ良いけど・・・)


『ラージン!!ラージンは居るか?!』

『ここにいるぞ!大声で人の名前を叫ぶなといつ・・も・・・・何だ?!この強者の雰囲気は?!』
ラージンはロウの気配に気付いて言葉を切る。

『おい!ログ!お前の後ろに居るのはもしかして・・・』
ラージンが期待の眼差しで聞く。

ログがドヤ顔で
『そうだぁぁ!!〈英雄の弟子達〉の1人だぁぁ!〉

『あの、ロウと言います!お久しぶりです!ラージンさん。』

『おお!!!確かテイマーの!!よく来てくれた!!
今から飯にしようと思っていたんだ!
一緒に飯にしよう!!ハヤト殿の武勇伝を聞かせてくれ!!わっはっはっーー!!!』

(獣人さんは基本問答無用なんだね・・)

すると突然獣人が廊下の先から手を振り声を上げる!
『おい!ログ!!!王がお呼びだ!〈英雄の弟子達〉も連れて来いだってよ!!』

(なんか面倒な予感がビンビンするな・・)

ログと王の前で跪く。

『お呼びでしょうか?』

『うむ。其方が〈英雄の弟子達〉か?〉
『はい。その通りでございます。』
『其方は〈竜神〉らしいな。』
『はい。その通りでございます。』

突然ヒューラン王が立ち上がる!
『そうか!!此奴を牢屋に叩き込んでおけ!!』

ロウは跪いたまま闘気が溢れる。

それを感じたログが声を上げる!
『ヒューラン王!!おやめください!!
ファイデル王国と事を構えるつもりですか?!
それは国の滅亡を意味しますぞ!!』

『黙れ!!ドラゴンなんぞを行使する輩など
信用できんわ!!
我が国は獣王国だぞ!!ファイデル王国など恐るるに足らんわ!!』

遂にロウが立ち上がる。
『おい!黙れ愚王!!
お前はドラゴンを恐れる臆病者だろう?!
よくもファイデル王国を愚弄したな?!
ファイデル王に比べたら貴様なんかクズ以下だ!!お前にチャンスをやる!
今ここで謝罪しろ!しなければこの城ごと消し去るぞ!!よく考えろよ!!』

ロウがブチキレる!!

『こ、このガキがぁぁぁぁ!!調子に乗るなよ!!!このガキをこの場で切り捨てろぉぉぉぉ!!!』

その瞬間!ログが立ち上がる!

『やめろぉぉぉぉぉぉ!!!!この愚王!!
この国を滅ぼす気かぁぁぁぁ!!!』

周りの重臣達が固まり息を飲む。

『あんたはロウ殿の言う通り臆病者だ!!!
あんたのせいでどれだけのテイマーが露頭に迷った?!家族と離れ離れになった?!
よく考えろぉぉぉぉぉぉ!!!』

ヒューラン王が怒りを通り越し図星を突かれ何も言えなくなる。

『くっ、ログ!貴様!覚悟は出来ているんだろうな?!』
苦し紛れに王がいい放つが、ログは胸を張る!

『ふん!!俺の命1つで国が救われるなら持って行くがいい!
代わりにロウ殿に謝罪しろ!!でなければ国が滅ぶぞ!!
ファイデル王国を敵に回せば〈英雄ハヤト〉が来る!!
こんな国1時間と持たないぞ!!!』

『くっ、大袈裟さに言うでないわ!!そんな人間がおる訳なかろう?!
死にたければ死ね!!結果は変わらんわ!!!』

ロウは【索敵】で上に誰もいない事を確認すると闘気を解放する。

『お前のの答えは聞いたぞ!!!
1人の人間の可能性を見ろ!!!
【竜撃砲】!!!!』

両手を天に掲げ練り上げた闘気を打ち上げる
と黄金の光の本流が眩い光を放ちながら渦を巻き天へと昇ってゆく!!
その場にいた者は眩しく目を覆い何が起こっているのか分からなかった。

光が晴れる・・・風が流れる・・・皆が恐る恐る目を開ける・・・。

そこに居る者が等しく驚愕する。
自分達の20m程上から遮る物が無いのだ。
皆が空を仰ぐ・・・そしてここから更に驚愕する事になる!!
見えていた空が巨大な何かで遮られる!
何度も何度も・・・やがて謁見の間が影で覆われてしまう。

城の上空に数百のドラゴンがロウの呼び掛けに答え集結していたのだった・・・。


『何?!あれは?!ヒューランの方よね?!
あっ!こら!ドライド!どうしたの?!』
ドライドは真っ直ぐヒューラン城へ飛んでいく。


『何だ?!あの光の柱は?!ヒューランの方角だな?!
お、おい!お前達!!何処へ行く?!待て!!』
男は急いでドラゴンの背に飛び乗る!!
一体何が起こっているんだ?!』
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