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第127話 オーク殲滅戦 3

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〈オークジェネラル〉がゲイクの頭を鷲掴みにして持ち上げる。

『がっ!は、離せ!このっ!』
ゲイクはもがいて何とかしようとするが
右腕を掴まれて握り潰される。

べきぃ!!

『ぐあぁぁぁぁぁ!!!』

さらに右膝を掴まれて握り潰される!

ぼきゃ!!!

『うぐぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』
ゲイクは泣き叫ぶしか出来なかった・・・。

そしてゲイクを大きな肉切り包丁を持ったオークの前に放り投げる。

どざぁぁぁ!!

『あぐっ!!』

オークは泣き叫ぶゲイクの左腕を掴んで引きずって行くのだった。


【索敵】がオーク達の行動の変化を告げる。

『強個体のオーク達が移動してる?!勢力を広げよとしているみたいだね!
この方向は・・王都か・・・大きく出たね。
戻りたい所だけど・・・気になる気配があるんだよね・・・』

ロウがアイラの顔を見る。

『そうですね・・・これはゲイク・・・また余計な事をしたんでしょうね・・・師匠!
ゲイクは私が助けます!』

ロウはすぐさま方向転換する。
『うん!そっちは任せたよ!
終わったらすぐに来てね!食い止めておくから!それとこれを持って行って!』

アイテムボックスからポーションを取り出してアイラに投げ渡す。

アイラはポーションを受け取る。
『はい!私の分も残しておいてくださいね!』
ロウは頷くと疾風の様に消えて行った。

『さてと、どうしようもない馬鹿を助けに行きますか!!』
アイラもため息をつきながらオークの集落へと急ぐのだった。


ゲイクが引きずられて来たのは血だらけの平たい岩が横たわる解体場であった。
オークに投げ飛ばされ岩に叩きつけられる!

『ごふっ!!・・・クソッ!!こんな所で死んでたまるか!!

ゲイクは動ける限りもがいて片足で立ち上がる!
左手には落ちていた大きめの石を持って〈ハイオーク〉と対峙する。

『来てみろ!!豚がぁぁぁ!!俺は〈竜人〉だぞ!!お前ら如き片手で十分だぁぁぁ!!』

満身創痍の状態で全力で威嚇する。

しかし〈ハイオーク〉は躊躇なく襲って来た!
右上から袈裟斬りに振り下ろされる包丁を
辛うじて避けるが体制を崩して地面に転がる。
すかさず〈ハイオーク〉はゲイクの腹を踏みつけて動けないようにすると肉切り包丁を上段に構える!!

『ぐぶぅぅぅ!!!』

『げふぅぅぅぅ!!!こ、ここまでなのか?!俺の人生ここまでなのか?!くそぉぉぉぉぉぉ!!』

ゲイクが覚悟をした瞬間!

〈ハイオーク〉の首と腕がずれて地面に落ちた。

・・・どさっ・・・

ゲイクが呆然としていると聞き慣れた女の声がする。

『はぁ、本当に情けないわね・・・私達の足を引っ張らないでよね!!』

アイラはうんざりした顔をしながら見っともなく仰向けのまま呆然としたゲイクの近くに行って見下す。

『口を開けなさい!!』
アイラがポーションを取り出すと
ゲイクは言われなくても口がポカンと開いていた・・・。

『ほら!師匠に感謝しなさいよ!!』

アイラは立ったままでゲイクの口を目掛けてポーションを半分程滝のように流しだす。

『ぶはっ!ぶべっ!な、何しやがる!!』

ゲイクは我に返り悪態を吐きながら立ち上がる!
そして普通に立ち上がり今までの痛みがない事に気付く。

『あ、あれ?!痛みが・・・ない・・?!』
自分の身体を確認しながらさっきのポーションを思い出す。

アイラは残りのオーク達を見据えながらゲイクに言い放つ!

『邪魔だから早く行きなさい!チョロチョロしてるとオークと一緒に叩っ斬るわよ!!』

『ま、待てよ!!この数のオークを1人で相手をするのか?!無茶だろ?!
一緒に逃げよう!!今ならドラゴンを呼べる!』

ゲイクはアイラの手を握り走り出そうとするが振り払われ蹴り飛ばされる!

『私に触るな!!』

『ぐはっ!!』
『ずささぁぁぁーーー!!』

ゲイクは呆然としてアイラを見る。

『逃げたいなら1人で逃げなさい!!私は急いでいるの!!
あんたみたいにゴミみたいなプライドを振り翳す弱虫なんか大嫌い!!』

アイラはオーク達を見据えると剣を抜き200匹のオークの群れに走り出した!

『うりぁぁぁ!!!【竜烈斬】!!!』

〈竜王〉となったアイラの攻撃にオーク達はなす術もなく切り刻まれて行く!
〈オークジェネラル〉でさえも一刀両断されて崩れ去る。
ゲイクはその光景をただ呆然と見ていた。

『お、俺は何をしていたんだ・・・。自分だけが強いなんて勘違いして・・・最低じゃないか・・なんてかっこ悪い男なんだ・・俺は・・ふっ・・』
ゲイクはへたり込んだまま自分に失笑して項垂れる。
そして失意の中ドラゴンを呼び何処へともなく飛び去って行くのだった。

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