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第129話 竜神のアイラ

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受け付けの女性が固まっている。

100人の募集をかけていたオーク殲滅依頼をたった2人で片付けてしまった上に上位個体の〈オークチャンピオン〉〈オークジェネラル〉更には進化した〈オークデーモン〉まで討伐してしまったのだ。

『あ、あ、あの・・・少々お待ちください・・・確認して来ます・・・。』

女性はぎこちなく討伐部位の入った大きな袋を抱えて奥へと消えて行った。
しばらく待っていると目つきの鋭い長い髪の女性が受け付け嬢と出て来た。

『2人でオークを殲滅したってのはあんた達かい・・・って・・・な、な、何だいそのステータスはぁぁぁぁぁ!!!!』

女性は【鑑定】が使えるらしく周りの冒険者が注目するほどの大声を張り上げた。

『あ、あんた達!こ、ここでは話しずらいから中へ来て!!早く!!』

強引に奥の部屋に押し込められる。

『私はギルドマスターのライリーだ!お前達は何者だ?』
ライリーが興奮しながら詰め寄る。

『ライリーさん説明しますから落ち着いて座ってください。』

ロウがライリーを促すと我に返り大人しくソファに身体を預ける。

『あ、あぁ、すまない・・・話を続けよう。』

ロウは紅茶を一口飲んで一息つく。
『僕はファイデル王国の〈英雄ハヤト〉の弟子が1人〈竜神のロウ〉と言います。
隣りにいるのは僕の弟子の〈竜神のアイラ〉です。』

アイラは慣れない呼び名で照れ笑いをしている。

ライリーも〈英雄の弟子達〉の話は知っていたらしく納得した顔をする。

『なるほどね・・・噂には聞いていたけど改めて見るととんでもないステータスなんだね・・・。
これなら納得だよ!!これが報酬よ。』

がしゃ!!

『白金貨4枚よ!上位個体の殲滅と〈オークデーモン〉討伐報酬も入っているわ!』

ロウは袋を受け取りアイラに渡すと、アイラは震える手で袋を開けてみる。
『白金貨・・・初めて見た・・・』

『それは頑張ったアイラにあげるよ。』

『えぇ?!いいんですか?!こんなにも?!』
アイラが白金貨とロウの顔を何度も交互に見る。

『うん!いいよ!ライリーさんこれで失礼しますね!』

『ああ、個人的に聞きたい事は沢山あるけどまたの機会にするわ。』

ロウ達がギルドの奥から出てくるとギルド内で騒ぎが起きていた。

『居るのは分かっているんだ!!あのガキ共を出せ!!!貴族に逆らった事を後悔させてやる!!』

松葉杖を付いて包帯を巻いた見たこのある男が喚いていた。

『師匠、あれは朝ぶっ飛ばした奴ですよ。』
『そうだね・・・懲りない人だ。』
ロウが首を振る。
するとこちらに気付いて向かってくる。

『あっ!!やっぱり居やがったな!?ガキ共!!
お父様!アイツらです!!あいつらが僕に逆らった馬鹿共です!!』

隣に居た背の高い初老の男がロウ達を見て固まる。
(どこかで見た事が・・・・ある・・・っ!
!あぁぁ!!!城の屋根を吹き飛ばして王に啖呵を切った〈英雄の弟子〉ではないか!?
まずい!!まずいぞ!!
恐らくサルドの馬鹿がやらかしたに違いない!!どうすれば・・・』

エルイド侯爵は徐に後ろからサルドの頭に拳骨を落とす!!

ごごん!!!
『あうっっ!!!』

『この馬鹿者がぁぁぁぁぁぁ!!貴様は誰に粗相したのか分かっているのか?!〈英雄の弟子〉に喧嘩を売ったのだぞ!?
分かっているのか?!』

頭を摩り涙目になっているサルドがロウ達を見る。
周りの傍観していた冒険者達も驚いてロウ達を見る。

『通りで馬鹿強いと思ったぜ!』
『俺も絡まなくて良かったよ・・・』

『くっ!!こんなガキ共が〈英雄の弟子〉?!馬鹿n』

ごごん!!
『あうっ!!』
再びサルドの頭に拳骨が落ちる!!

『貴様の後始末にどれだけ労力を使っていると思っている?!自分の尻は自分で拭け!!』

エルイド侯爵はロウに向き返る。
『ロウ殿、この度はこの馬鹿息子が失礼をした。連れ帰りしっかりと言い聞かせるので許してくれぬか?』

ロウはアイラと顔を見合わせて肩をすくめる。
『エルイド侯爵、是非厳しく教育をお願いしますよ。
今後、この街で弱い者が強い者に泣かされる事があったら〈英雄ハヤト〉一派〈竜神のアイラ〉が黙っていませんよ?!』

アイラがロウの顔を見る。
そしてロウが旅立つのを知るのだった。

『ロウ殿、分かった。しっかりと言い聞かせる事を約束する。それでは失礼する。』
ロウ達に一礼してサルドを引きずりながらギルドを出て行った。

すると冒険者達から称賛の拍手が上がる!!

『スカッとしたぜ!!ありがとよ!!』

『アイツらには手を焼いていたんだ!!助かったよ!!!』

『〈英雄の弟子達〉万歳だな!!!〉

ロウは頭を掻きながら照れ笑いをしながら皆に手を振ってギルドを出て行った。

アイラが意を決して言う。
『師匠!!もう行くんですか?』

ロウは空を見上げる。
『そうだね。僕にはやらなきゃいけない事があるからね。
アイラ、〈獣王国ヒューラン〉を頼んだよ!!』

アイラは目を潤ませる。

『は・・い!!師匠の教えを広めて理不尽をぶっ飛ばしてやります!!』

ロウはアイラにニッコリ笑って頷くとシルビィを元の大きさに戻して背中に乗り込む。

『また近くに来たら寄るよ!ちゃんと精進しておいてね!またね!!』

シルビィがロウを乗せて空に登っていく。

『師匠!!!ありがとうございましたぁぁぁぁぁ!!!!』

アイラは両手をいつまでも振りながらロウを見送るのであった・・・。

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