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第12話 懐かしい場所
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『ただいま。片付いたわ。さあ行きましょうか。』
アンリルがよいしょと座ると馬車が動き始める。
『アンリルさん。大丈夫だったの?』
ソフィアが口を開く。
『えぇ、1人〈神の使人〉が居たけどミハエル君のお陰で助かったわ。』
〈神の使人〉か・・・僕と同じ加護を持った人間なんだよね・・。神か・・・。
まともな〈神の使人〉会ったら話を聞いてみたいな。
ミハエルは村長の予想通り山賊団との戦いで〈神の枷〉が外れていたのだ。それと同時に元の人格まで解放されていた。
だが転生前の記憶は無く自分と同じ加護を持つ人間に興味があったのだ。
馬車の窓から夕日に染められたクラインド王国の城が見えてくる。
目の前に懐かしそうに車窓を眺めるソフィアの姿があった。
ソフィアが想いに耽っていると門兵の声で我に返る。
『止まってくれ!身分証を見せてくれ!』
『私が行ってくるわ!』
アンリルが馬車を降りて出て行く。
『はい、これよ。』
若い門兵が身分証を受け取り確認する。
『なっ?!S級?!〈賢者〉アンリル!?あ、あの〈真実の剣〉のアンリル?!』
アンリルの名は有名らしく門兵すらもテンションが上がる。
『えぇ、そうよ。急いでいるからお願いね。』
『あぁ。クラインド王国へようこそ!〈真実の剣〉の活躍は有名だよ!会えて光栄だ!!
ところで、ここへは依頼で来たんですか?』
門兵は笑顔で身分証を返しながら何気なく聞く。
アンリルは馬車を見ながら答える。
『えぇ、護衛兼雑用よ。クラインド王に謁見する為に来たのよ。』
若い門兵は王に謁見と聞きくと仕事の顔になる。
『仕事なので確認させてもらう。』
『えぇ、どうぞ。』
アンリルが馬車の入り口へと行き扉を開ける。
若い門兵が中にいるソフィアを確認すると質問を始めた。
『クラインド王に謁見するらしいが、どう言う要件だ?』
ソフィアは少し困った顔をする。
どうしようかしら・・こんな所で話す事でも無いし・・ミハエルを早く休ませて上げたいのに。
『話すと長くなるの。それに貴方に話す事でもないの。
私はソフィアよ。貴方の上司に伝えたら分かると思うわ。』
しかし若い門兵は自分では話にならないと言われたと感じ苛立ってしまう。
『なに?!ここでは言えないのか?!あやしい奴だ・・・』
すると門の奥から懐かしい声がする。
『おい!ドイル!何かあったのか?』
セイルが声を掛けて近付くとドイルは直立不動になり一礼する。
『はっ!この者がクラインド王に謁見したいと言うのですが理由を話さないのです!』
ドイルがソフィアに指を差す。
『ほう。王に謁見か・・・分かった。俺が話そう。』
セイルはそう言って馬車の中ソフィアを見た瞬間、目を見開き肩を震わす。
『ソ、ソフィア様ぁぁぁぁ!!!・・・よ、よくぞご無事で!!』
セイルは馬車に乗り込むとソフィアの前に座る。
『良かった!・・・良かった!心配しましたぞ!!よくぞ戻って来てくれた!』
セイルが目頭を熱くする。
『セイルさん。心配掛けてごめんなさいね。
戻って来たのは、クラインド王に今までの事のお礼を言いにきたの。』
セイルは、はっとしてソフィアを見る。
『そうか・・知ってしまったのだな・・・黙っていて申し訳なかった。
王の名を利用する者が近付くのを避ける為に伏せてあったのだ。許してくれ。』
セイルは頭を下げる。
『セイルさん。いいんです。私はそのお陰で何不自由なく生きて来れたのです。
今だって村の方達に支えられて楽しく生活していますよ。』
『そうか・・・とにかく無事でよかった。
ミハエル様もこんなに大きくなられて・・・うぅ・・』
セイルが大変であったであろう日々を想像して目頭を押さえる。
『さ、さあ!日も暮れて来た。私の屋敷に泊まってくれ!!
アンリル殿も一緒でいいぞ!
今日は楽しい夜になりそうだ!!』
その夜はセイルにとって楽しく有意義な時間となるのだった。
アンリルがよいしょと座ると馬車が動き始める。
『アンリルさん。大丈夫だったの?』
ソフィアが口を開く。
『えぇ、1人〈神の使人〉が居たけどミハエル君のお陰で助かったわ。』
〈神の使人〉か・・・僕と同じ加護を持った人間なんだよね・・。神か・・・。
まともな〈神の使人〉会ったら話を聞いてみたいな。
ミハエルは村長の予想通り山賊団との戦いで〈神の枷〉が外れていたのだ。それと同時に元の人格まで解放されていた。
だが転生前の記憶は無く自分と同じ加護を持つ人間に興味があったのだ。
馬車の窓から夕日に染められたクラインド王国の城が見えてくる。
目の前に懐かしそうに車窓を眺めるソフィアの姿があった。
ソフィアが想いに耽っていると門兵の声で我に返る。
『止まってくれ!身分証を見せてくれ!』
『私が行ってくるわ!』
アンリルが馬車を降りて出て行く。
『はい、これよ。』
若い門兵が身分証を受け取り確認する。
『なっ?!S級?!〈賢者〉アンリル!?あ、あの〈真実の剣〉のアンリル?!』
アンリルの名は有名らしく門兵すらもテンションが上がる。
『えぇ、そうよ。急いでいるからお願いね。』
『あぁ。クラインド王国へようこそ!〈真実の剣〉の活躍は有名だよ!会えて光栄だ!!
ところで、ここへは依頼で来たんですか?』
門兵は笑顔で身分証を返しながら何気なく聞く。
アンリルは馬車を見ながら答える。
『えぇ、護衛兼雑用よ。クラインド王に謁見する為に来たのよ。』
若い門兵は王に謁見と聞きくと仕事の顔になる。
『仕事なので確認させてもらう。』
『えぇ、どうぞ。』
アンリルが馬車の入り口へと行き扉を開ける。
若い門兵が中にいるソフィアを確認すると質問を始めた。
『クラインド王に謁見するらしいが、どう言う要件だ?』
ソフィアは少し困った顔をする。
どうしようかしら・・こんな所で話す事でも無いし・・ミハエルを早く休ませて上げたいのに。
『話すと長くなるの。それに貴方に話す事でもないの。
私はソフィアよ。貴方の上司に伝えたら分かると思うわ。』
しかし若い門兵は自分では話にならないと言われたと感じ苛立ってしまう。
『なに?!ここでは言えないのか?!あやしい奴だ・・・』
すると門の奥から懐かしい声がする。
『おい!ドイル!何かあったのか?』
セイルが声を掛けて近付くとドイルは直立不動になり一礼する。
『はっ!この者がクラインド王に謁見したいと言うのですが理由を話さないのです!』
ドイルがソフィアに指を差す。
『ほう。王に謁見か・・・分かった。俺が話そう。』
セイルはそう言って馬車の中ソフィアを見た瞬間、目を見開き肩を震わす。
『ソ、ソフィア様ぁぁぁぁ!!!・・・よ、よくぞご無事で!!』
セイルは馬車に乗り込むとソフィアの前に座る。
『良かった!・・・良かった!心配しましたぞ!!よくぞ戻って来てくれた!』
セイルが目頭を熱くする。
『セイルさん。心配掛けてごめんなさいね。
戻って来たのは、クラインド王に今までの事のお礼を言いにきたの。』
セイルは、はっとしてソフィアを見る。
『そうか・・知ってしまったのだな・・・黙っていて申し訳なかった。
王の名を利用する者が近付くのを避ける為に伏せてあったのだ。許してくれ。』
セイルは頭を下げる。
『セイルさん。いいんです。私はそのお陰で何不自由なく生きて来れたのです。
今だって村の方達に支えられて楽しく生活していますよ。』
『そうか・・・とにかく無事でよかった。
ミハエル様もこんなに大きくなられて・・・うぅ・・』
セイルが大変であったであろう日々を想像して目頭を押さえる。
『さ、さあ!日も暮れて来た。私の屋敷に泊まってくれ!!
アンリル殿も一緒でいいぞ!
今日は楽しい夜になりそうだ!!』
その夜はセイルにとって楽しく有意義な時間となるのだった。
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