神の手違い転生。悪と理不尽と運命を無双します!

yoshikazu

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第118話 スタンピード 覚醒

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(まずいわ!!もうすぐよ!!もう少しだけ耐えて!!!・・・それにしても・・やっぱりあの冒険者・・やるわね!)

サーシャは遥か彼方にウィランダの街を捉えて爆走するのであった。


「ロ、ロザリア・・・あれは一体・・何?」

メルンは数メートル先にいる殺気の塊を見据えながらゆっくりと立ち上がる。ロザリアも呼ばれて何気なく振り向くと全身に緊張が走った・・

「えっ?・・・あ・・う・・そ、そんな・・あ、あれは・・・ドラゴニュート・・・コ、コカトリス同様・・・危険度Aクラスよ・・・」

ロザリアは立ち上がる事が出来ずに座り込んでしまう。

「何でよ・・・どうしてこんな魔物が居るのよ・・・もう駄目よ・・」

「私達は・・・街の人を避難させたわ・・・それだけでも救いよ・・・うぅ・・・」

アメリとシリアも座り込んで項垂れていた。

しかしメルンは今にも飛び掛かって来そうなドラゴニュートに震えながら剣を構える。

「だ、駄目よ・・・諦めちゃ駄目・・私達にはログさんの力が宿ってるの!私は信じる!ログさんが笑顔で大丈夫って言ったの!!こんな理不尽な死に方は嫌よ!!!」

メルンは剣の柄を両手で絞り覚悟を決める。
そして座り込んでいる三人に檄を飛ばす!!

「皆んな!!立って!!お願い!!私に力を貸して!!私達なら出来るわ!!」

「無理よ・・・Aランクなんて・・・」

アメリが呟き三人は座り込んで俯いたままゆっくり首を振り動けなかった。

しかし無理もなかった・・・メルン達四人は1ヶ月前に冒険者登録したばかりの新米冒険者であった。しかし四人とも〈神の使人〉でありメルンはその中でも〈剣神の加護〉を持っていた。
それでも毎日Eランクのウルフに苦戦し数体のゴブリンに追いかけ回される日々であったのだ。今日もギルドの依頼を受け薬草を取りに行くはずだった。それが突然Aランクの魔物に囲まれているのだ。心が折れるのは当然であった。

「・・・いいわ・・見せてあげる・・・今の私達が戦えるって事を!!」

メルンは真一文字に唇を噛み締めドラゴニュートに向き合い構えた。

ドラゴニュートは”覚悟は出来たか?”と言わんばかりに首を傾げると地面を蹴り鋭い爪で襲い掛かる!!

「速い!!」

(ログさん!!師匠!!力を貸して!!)

ギギギィン!!!

「ぐくっ!!」

右上から振り下ろされた鋭い爪を上段で受け衝撃を左側に受け流す!!そしてバランスを崩したドラゴニュート目掛けて剣を振り上げる!

メルンの袈裟斬りがドラゴニュートの身体を捉えそのまま一気に振り下ろした!!

ガガッ!ギガギギギン!!!!

「なっ?!硬い!!」

メルンの渾身の袈裟斬りはドラゴニュートの硬い鱗に阻まれ鱗に傷が付く程度であった。
ドラゴニュートはそのまま何事も無かったように体制を立て直すと太く棘のある長い尻尾を挑発的に地面に打ち付けていた。

(くっ!闘気の練り方が足りない!!・・・でも!攻撃を受けれたのはログさんのおかげ!!攻撃を流せたのは師匠のおかげ!!私は確実に強くなってる!!)

メルンは諦める事なく自分の身長の倍近くあるドラゴニュートに斬り掛かっていく!!

ギギギィン!!ガギギィン!!ギィィン!!

メルンの猛攻であった。ドラゴニュートの攻撃を避け、受け流し、時には大きな爪が頬を掠めて血が流れようとも攻撃をやめる事は無かった。

その姿にアメリ、シリア、ロザリアが瞬きも忘れて見入っていた・・・

「す、凄い・・・Aランクの魔物に・・・」
「メルン・・あんなに傷だらけになって・・」
「でも・・かっこいい・・それに比べて私達は・・・何を諦めているの?!」

三人は恥ずかしさと情けなさと申し訳なさを 胸に唇を噛み締めながらゆらりと立ち上がる。

「メルン・・・ごめんなさい・・・」

メルンは攻撃を続けながら微笑んだ。そして背中越しに叫ぶ!

「そんな事どうだっていいわ!!私に10秒時間を頂戴!!!」

メルンの檄に三人の目に火が灯る!

「了解!!10秒でも20秒でもあげるわよぉぉぉ!!!!」


「炎の槍よ!敵を貫け!〈フレイムランス〉!!」
「大地よ敵を貫け!〈アースジャベリン〉!!」
「聖なる刃よ敵を切り裂け!〈セイントカッター〉!!」

三人の魔法がに襲い掛かる!!意表を突かれたのかドラゴニュートが怯み膝を付いた!

「まだまだぁぁぁぁぁぁ!!!」

三人の魔法攻撃は自分への鬱憤を晴らすかのように撃ち込まれていく!!

ズドドドドドドドドドォォォォォォ!!!!

ドラゴニュートは段々と威力が上がっていく魔法にその場に釘付けになっていた。

「その調子よ!!」

そしてメルンは距離を取った。剣を鞘に収め腰を屈めると居合の構えを取る。そして師匠の教えをイメージする。

「はぁぁぁぁぁ・・・」

”脱力から繰り出す速さは神速が如し”
”神速から繰り出す踏込みは激流が如し”
”激流を腕(かいな)に伝えるは竜巻の如し”
”竜巻より伝うる力は大瀑布が如し!”

ロベルト師匠・・・ありがとうございます。

メルンは今にも爆発しそうな力を抑え込むと身体から白いオーラが立ち昇り周りの景色が歪む・・・

「皆んな・・・ありがとう・・・OKよ!」

「メルン・・・身体が光って・・」
「いえ!!私達にも光が?!」
「一体何が・・・これがログさんの力?!」

ドラゴニュートが立ち上がり威嚇するように牙を剥く!

「グルルルルルル・・・」

「・・・終わりよ・・・居合奥義〈水神斬〉!!!!」

どぉん!!

メルンの足元が爆発した様に抉れた瞬間、ドラゴニュートの背後にメルンが現れ剣を鞘に収めた・・・

チンッ!

鍔鳴りが心地よく響く・・・

するとのドラゴニュートの両腕が地面に落ちた・・・その後3mの巨体に赤い三本の線が走るとそのまま崩れ落ちるのだった。

「はぁ、はぁ、はぁ・・・やった・・・」

メルンは肩の力を抜くとアメリ、シリア、ロザリアに身体ごと振り向き腰に手を添える!

「見たか!!!お馬鹿さん達!!これが私達の力よ!!!今度情け無い事言ったら許さないからね?!」

メルンは微笑みながら冗談混じりにほっぺを膨らました。

三人は命の恩人であるメルンに溢れる涙をそのままに飛び付き、しがみ付き、抱き付くのであった。

「ごべんなざいぃぃぃぃ!!!メルンぅぅぅぅ!!ごべんなざいぃぃぃぃぃ!!!」

「うあぁぁぁぁぁぁん!!!メルンぅぅぅぅ!!!本当にごべんなざいぃぃぃぃ!!」

「うえぇぇぇぇぇん!!!これからはメルンに付いて行くよぉぉぉぉ!!なんでも言う事聞くよぉぉぉぉぉ!!!!」

メルンは少しだけこめかみを震わす。

「ロ、ロゼリア・・早速なんだけど・・そんな所に顔を埋めるのはやめて・・・やん・・」

メルンが恥ずかしげに腰を捩るのであった。



ウィランダの街の入り口では冒険者達が逃げるのも忘れて唖然と一人の若者に見惚れていた・・・

「す、凄ぇぇ・・・一人で何匹相手してんだよ・・・一匹でもヤバいのに・・・」

ログは冒険者達と一緒に徐々に後退し街の中に退避しようと戦っていた。

「早く街に入ってください!!街に入り込んだ魔物をお願いします!!」

「お、おう!」

くっ!やっぱり数が多い・・街の中にも入って行った・・・くそっ・・僕にもっと力があれば・・・

そしてログの集中力が一瞬途切れドラゴニュートの攻撃を流せずに力が入り身体が流れる!!

ガキィィンン!!!

「くっ!!しまっ・・・」

ログの一瞬の隙を突きドラゴニュートの強力な尻尾が振り抜かれログの脇腹にめり込んだ!

ズドォン!!

「ごはぁぁぁ!!!」

ログは衝撃で数メートル吹き飛ばされて転がった。傷は致命傷ではないものの激痛で立つ事が出来ずに意識が遠のいて行く・・・ログの意識が無くなれば皆にかけた魔法が解除されてしまうのだ。

「くっ・・くそっ・・だ、駄目だ・・・今倒れる訳には・・・行かな・・・い・・・」

ログは意思とは無関係に意識を手放してしまった・・・しかし冒険者達に掛けた魔法は解除される事は無かった・・・そして次の瞬間冒険者達が見たものはゆっくりと立ち上がるログの姿であった・・・

「お、おい・・立ち上がったぞ・・あ、あいつ・・どうなってるんだ・・・」

冒険者達がログの姿に釘付けになっていると何故か魔物達も動きを止めて心なしか怯えているようだった。
そしてログは髪をかき上げて空を仰いだ。

「ふふふ・・・良いねぇぇぇ・・この理不尽・・・ぶっ飛ばし甲斐があるじゃないか・・・ふう・・・さあ!!第2ラウンドと行こうかぁぁぁぁぁ!!!」

煌めく白いオーラを纏ったログが嬉々とした顔で魔物の群れへと向かって行くのであった。
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