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ep.11 好きの代わりに
(5)***
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一ノ瀬は顔を上げて、取り出していたローションの蓋を開けた。
そして、中身をたらりと手のひらに出して、温め始める。
私に使うためにしてくれているのはわかるが、目の前で見せられるのは恥ずかしい。
もしかしたら、わざと見せつけているのだろうか。
そう考えてしまうほどに、一ノ瀬は私を揶揄って愉しむ癖がある。
ようやく温まったのか、後ろに指で触れて、そっと中に入れてきた。
細く長い指が中に入っていき、くりっと前立腺を押し上げてくる。
「ふ……っく……あぅ……あ」
こんなに簡単に探し当てて弄ってくるのは、やはり一ノ瀬が上手いからなのか。
ローションのぬめりを借りて中を解し、円を描くように弄って広げていく。
二本目の指を入れたところで、またぱくりとモノを口に咥えた。
前と後ろ、両方同時に刺激されて、逃げ場がなくなった。
「駄目、だ……っそんなに……された、ら……」
「もう少し、我慢してくださいね。指だけでイかないで」
「う……っく……」
そう言うなら、執拗に弄ったり舐めたりしなければいい。
激しい愛撫に身体も頭もついていかない。
ただ喘ぐしかできなくなった頃、私をうつ伏せに返して、指を増やしてきた。
前を弄られなくなったことにホッとしたが、後ろを弄られることに神経が集中してしまって、快感は弥増した。
「あ……っああ……っは……んん」
ぐちゅぐちゅとローションが濡れた音を立てるまで掻き混ぜて押し広げ、愛撫にしなる背中にキスをしてくる。ぞわりと鳥肌が立つほどに神経が鋭くなり、一際高い声で私は啼いた。
後ろを指で弄られるのは、どうしても恥ずかしい。
それに、焦れったくもある。
もっと深く抉ってほしい。
一ノ瀬のモノでいっぱいになる瞬間が待ち遠しい。
熱く滾るモノを受け入れるのは苦しいというのに、私は貫かれる瞬間を待ち望んでいた。
「いちの、せ……も、う……っ」
「美浜さん、尻が揺れてますよ。いい眺めだ」
「……っ」
とんでもないことを言われて身を捩ろうとしたが、がっちりと押さえつけられて動けない。一ノ瀬は、私を寝そべらせたまま、尻を割り開いてモノを押し付けてきた。ぬるぬると先端を擦りつけ、穴を探るように動く。見えているはずなのに、わざと挿入してこないのは、焦らしたいからに決まっている。
肩越しに振り返って、文句の一つでも言ってやろうかとしたところで、ずぶりとモノが挿入された。
「あう……っああ……く……うぁ」
隘路を分け入り、押し開くモノは熱くて、内側から灼かれる心地がする。
太く長いものが奥まで入り込み、擦り立てていく。
一ノ瀬は腰を揺すりながら奥を目指し、中に進むたびに私の身体はガクガクと震えた。
「力を抜いて。そう、上手ですよ」
子供に言い聞かせるように一ノ瀬は言い、長さを知らしめるように深々と穿つ。
「あ……あっ……ふ……っんん」
「逃げないで力を抜いて。大丈夫だから」
何が大丈夫なものか。
こんなに苦しくて、得も言われぬ快感に襲われて、平気でいられるわけがない。
言い返したくても、もうそんな言葉は形作れない。
ただ、声が押し出されるだけだ。
「美浜さん……」
甘い声で私の名を呼び、うなじにキスをしてくる。
しっとりと濡れた柔らかな存在に、ぞくぞく身体に快感が染み渡る。
「動きますよ」
そう言い置いて、一ノ瀬は出し入れを始める。
最奥まで鋭く入り込んで抉り、ゆっくりと引き抜く。
最初はゆったりとした動きだが、やがて後ろの縁がめくれるほどに激しく抽送をし出した、
「ああ……っあ……う……ん……っああ……っ」
挿入したまま身を起こし、私の膝を立てさせて腰を打ち付ける。
私はシーツに縋って手繰り寄せ、前後に揺れる身体を支えた。
あまりの快感に頭を振って逃そうとしたが、モノを掴んで扱かれて、それどころではなくなる。
「いや、だ……それ……イってしま……っ」
せっかく中に一ノ瀬を感じられたというのに、このままではすぐに終わってしまう。
必死に我慢しようとしても、モノを擦られては陥落しそうだ。
もうあとちょっとで射精してしまうというところで、一ノ瀬はずるりとモノを引き抜いた。
「あ……っは……ふ」
ぱたりと床に沈み、私は喘ぎながら呼吸を続けた。
一ノ瀬は私を仰向けに返し、膝を開かせてから再び挿入してきた。
向かい合ったことで顔が見えるようになり、生理的な涙で潤んだ視界に、口元を綻ばせる顔が映り込んだ。
視線が絡み合うと笑みを深め、私の目元にキスをしてくる。
「掴まってください」
言われたままに一ノ瀬の背中に腕を回して掴まると、律動が始まった。
「あ……っう……ああ……っあ……」
前立腺に押し付け、擦るように小刻みに動かれて、私は啼き続けた。
「ああ……っあ……きもち、……い……っそこ」
一ノ瀬に縋って快感を訴え、自らも尻を振り立てる。
気持ち良さに眩暈がし、私は目を閉じて快楽に溺れた。
長く続く行為に、ただうっとりと身を任せていると、不意に一ノ瀬は身を起こした。
繋げたままの格好で、私の足首を掴み、大きく腰をグラインドさせる。
ぐぷぐぷといやらしい音がするほどに掻き混ぜ、奥を穿ち、トントンと突いてくる。
同じ動きを続けられているうちに、身体の奥底から快感が湧き起こってくる。
最初は堪え切れたというのに、徐々に感覚が鋭敏になり、抑えきれないほどの愉悦が広がる。
「ゆらさ、ないで……くれっ」
「どうして? 気持ちいいでしょう?」
「そこ、いやなんだ……っいちの、せ……やめ……っ」
そうしているうちに、今度は親指でモノと尻穴の間を揉まれた。
会陰と呼ばれる場所をぐりぐりと指で弄られると、身体がカッと熱く火照り出す。
「何……? 変だ、そこ……やめ……っひあ」
突然、全身に震えが起き。快感が膨れ上がった。
「いやっ……だ……いちの、せ……たのむ、から……っうごかな……んんっ」
一ノ瀬は私の唇を唇で塞ぎ、同じ動きを繰り返す。
だんだんと激しくなり、視界が揺れるほどに中を行き来される。
「揺らさない、で……っくれ……だめ、だ……ひっ……あうっ!」
ぎゅっと目を瞑っても快感は膨れ上がる一方で、私は怖くなった。
「おねがい、やめ……っおかしくな……」
やがて音が掻き消え、目の前が眩しくなった。
視界が白濁し、快感が全身に襲ってくる。
「うあ……っああ……っあ……ああ……っんく……ああ──っ」
私は叫び声をあげ、ぐっと奥歯を噛み締めてやり過ごそうとした。
汗が吹き出し、鼓膜まで塞がれたように感じられた。
何が起きたかわからない。
がくりと身体から力が抜け、びくんびくんと足先まで跳ねてしまう。
ぶるりと身を震わせて、必死に空気を求めていると、一ノ瀬は私の目元を指で拭った。
そして、指に付着した雫を舐め取ってから言う。
「ドライでイけるようになりましたね」
「ドラ、イ……?」
何を言われたのか、その場ではわからなかった。
後になって調べてみて、ドライ・オーガズムというものがあるのだと知る。
射精を伴わない絶頂。そんなことがこの身に起きるなんて、想像したこともない。
「気持ち良かったでしょう?」
そう問われても、何も言い返せない。
「ドライのいいところは──」
「はう……っあ……な、に……?」
一ノ瀬はまた動き出し、私を激しく揺すぶってくる。
「何度でも、連続してイけちゃうところにあるんですよ」
「いや……っだめ、だ……また……イく……っあう」
何とかやめさせようともがいても、一ノ瀬は私を抱き続け、滅茶苦茶にした。
自分が壊れる、と思ったほどだ。
受け止められないほどの快楽と愉悦に溺れ、飲み込めない唾液が顎を伝った。
「可愛いですね。──もっと、俺を感じてください」
「もう、むり……だ……っああ……はっ」
どんなに言っても、一ノ瀬は私を貪るのを止めなかった。
ドライというものが、どれほど辛く、甘美なものなのか。
私はその日、嫌というほどに叩き込まれた。
次の日の朝には、ベッドから起き上がれないほどになった。
そんな私を、一ノ瀬は愛おしそうに目を細めて見てくる。
「君とランニングがしたかったというのに。これでは走れない」
照れ隠しもあって、私はぶっきらぼうにそう言った。
ベッドに仰向けになり、手足を投げ出して寝ていると、一ノ瀬は私にキスをしてきた。
「すみません。あなたがあまりに可愛くて、抑えきれなかった」
あんな涙と唾液でぐしゃぐしゃになった顔の、何が可愛いというのか。
じろりと睨みつけると、悪戯っ子のように一ノ瀬はフフっと笑った。
「今度、縛ってみたいです」
「……っ」
一ノ瀬には、そんな願望があったのか。
こんなに清潔そうに笑い、優し気な手つきで髪を撫でてくるというのに。
だが、言われた途端に身体の芯が疼き、顔が火照り出した。
一ノ瀬の言葉に当てられて、期待してしまっている。
今出さえこれほどの愉悦を覚えているというのに、縛られたらどうなるのか。
想像するだけで唇が戦慄き、身体が打ち震える。
私にも、こんな被虐趣味があったということか。
「……君に、一任する」
ぼそりと答えると、一ノ瀬は目を瞬かせ、嬉しそうに笑ってから私を抱き締めた。
「好きです、美浜さん」
私の方こそ、一ノ瀬にここまで溺れるとは思っていなかった。
好きだと答える代わりに、またキスを強請る。
私は一ノ瀬に身を任せ、愛されている喜びに浸った。
-ep. 11 「好きの代わりに」END-
『それより俺は、もっとあなたとキスがしたい』完
そして、中身をたらりと手のひらに出して、温め始める。
私に使うためにしてくれているのはわかるが、目の前で見せられるのは恥ずかしい。
もしかしたら、わざと見せつけているのだろうか。
そう考えてしまうほどに、一ノ瀬は私を揶揄って愉しむ癖がある。
ようやく温まったのか、後ろに指で触れて、そっと中に入れてきた。
細く長い指が中に入っていき、くりっと前立腺を押し上げてくる。
「ふ……っく……あぅ……あ」
こんなに簡単に探し当てて弄ってくるのは、やはり一ノ瀬が上手いからなのか。
ローションのぬめりを借りて中を解し、円を描くように弄って広げていく。
二本目の指を入れたところで、またぱくりとモノを口に咥えた。
前と後ろ、両方同時に刺激されて、逃げ場がなくなった。
「駄目、だ……っそんなに……された、ら……」
「もう少し、我慢してくださいね。指だけでイかないで」
「う……っく……」
そう言うなら、執拗に弄ったり舐めたりしなければいい。
激しい愛撫に身体も頭もついていかない。
ただ喘ぐしかできなくなった頃、私をうつ伏せに返して、指を増やしてきた。
前を弄られなくなったことにホッとしたが、後ろを弄られることに神経が集中してしまって、快感は弥増した。
「あ……っああ……っは……んん」
ぐちゅぐちゅとローションが濡れた音を立てるまで掻き混ぜて押し広げ、愛撫にしなる背中にキスをしてくる。ぞわりと鳥肌が立つほどに神経が鋭くなり、一際高い声で私は啼いた。
後ろを指で弄られるのは、どうしても恥ずかしい。
それに、焦れったくもある。
もっと深く抉ってほしい。
一ノ瀬のモノでいっぱいになる瞬間が待ち遠しい。
熱く滾るモノを受け入れるのは苦しいというのに、私は貫かれる瞬間を待ち望んでいた。
「いちの、せ……も、う……っ」
「美浜さん、尻が揺れてますよ。いい眺めだ」
「……っ」
とんでもないことを言われて身を捩ろうとしたが、がっちりと押さえつけられて動けない。一ノ瀬は、私を寝そべらせたまま、尻を割り開いてモノを押し付けてきた。ぬるぬると先端を擦りつけ、穴を探るように動く。見えているはずなのに、わざと挿入してこないのは、焦らしたいからに決まっている。
肩越しに振り返って、文句の一つでも言ってやろうかとしたところで、ずぶりとモノが挿入された。
「あう……っああ……く……うぁ」
隘路を分け入り、押し開くモノは熱くて、内側から灼かれる心地がする。
太く長いものが奥まで入り込み、擦り立てていく。
一ノ瀬は腰を揺すりながら奥を目指し、中に進むたびに私の身体はガクガクと震えた。
「力を抜いて。そう、上手ですよ」
子供に言い聞かせるように一ノ瀬は言い、長さを知らしめるように深々と穿つ。
「あ……あっ……ふ……っんん」
「逃げないで力を抜いて。大丈夫だから」
何が大丈夫なものか。
こんなに苦しくて、得も言われぬ快感に襲われて、平気でいられるわけがない。
言い返したくても、もうそんな言葉は形作れない。
ただ、声が押し出されるだけだ。
「美浜さん……」
甘い声で私の名を呼び、うなじにキスをしてくる。
しっとりと濡れた柔らかな存在に、ぞくぞく身体に快感が染み渡る。
「動きますよ」
そう言い置いて、一ノ瀬は出し入れを始める。
最奥まで鋭く入り込んで抉り、ゆっくりと引き抜く。
最初はゆったりとした動きだが、やがて後ろの縁がめくれるほどに激しく抽送をし出した、
「ああ……っあ……う……ん……っああ……っ」
挿入したまま身を起こし、私の膝を立てさせて腰を打ち付ける。
私はシーツに縋って手繰り寄せ、前後に揺れる身体を支えた。
あまりの快感に頭を振って逃そうとしたが、モノを掴んで扱かれて、それどころではなくなる。
「いや、だ……それ……イってしま……っ」
せっかく中に一ノ瀬を感じられたというのに、このままではすぐに終わってしまう。
必死に我慢しようとしても、モノを擦られては陥落しそうだ。
もうあとちょっとで射精してしまうというところで、一ノ瀬はずるりとモノを引き抜いた。
「あ……っは……ふ」
ぱたりと床に沈み、私は喘ぎながら呼吸を続けた。
一ノ瀬は私を仰向けに返し、膝を開かせてから再び挿入してきた。
向かい合ったことで顔が見えるようになり、生理的な涙で潤んだ視界に、口元を綻ばせる顔が映り込んだ。
視線が絡み合うと笑みを深め、私の目元にキスをしてくる。
「掴まってください」
言われたままに一ノ瀬の背中に腕を回して掴まると、律動が始まった。
「あ……っう……ああ……っあ……」
前立腺に押し付け、擦るように小刻みに動かれて、私は啼き続けた。
「ああ……っあ……きもち、……い……っそこ」
一ノ瀬に縋って快感を訴え、自らも尻を振り立てる。
気持ち良さに眩暈がし、私は目を閉じて快楽に溺れた。
長く続く行為に、ただうっとりと身を任せていると、不意に一ノ瀬は身を起こした。
繋げたままの格好で、私の足首を掴み、大きく腰をグラインドさせる。
ぐぷぐぷといやらしい音がするほどに掻き混ぜ、奥を穿ち、トントンと突いてくる。
同じ動きを続けられているうちに、身体の奥底から快感が湧き起こってくる。
最初は堪え切れたというのに、徐々に感覚が鋭敏になり、抑えきれないほどの愉悦が広がる。
「ゆらさ、ないで……くれっ」
「どうして? 気持ちいいでしょう?」
「そこ、いやなんだ……っいちの、せ……やめ……っ」
そうしているうちに、今度は親指でモノと尻穴の間を揉まれた。
会陰と呼ばれる場所をぐりぐりと指で弄られると、身体がカッと熱く火照り出す。
「何……? 変だ、そこ……やめ……っひあ」
突然、全身に震えが起き。快感が膨れ上がった。
「いやっ……だ……いちの、せ……たのむ、から……っうごかな……んんっ」
一ノ瀬は私の唇を唇で塞ぎ、同じ動きを繰り返す。
だんだんと激しくなり、視界が揺れるほどに中を行き来される。
「揺らさない、で……っくれ……だめ、だ……ひっ……あうっ!」
ぎゅっと目を瞑っても快感は膨れ上がる一方で、私は怖くなった。
「おねがい、やめ……っおかしくな……」
やがて音が掻き消え、目の前が眩しくなった。
視界が白濁し、快感が全身に襲ってくる。
「うあ……っああ……っあ……ああ……っんく……ああ──っ」
私は叫び声をあげ、ぐっと奥歯を噛み締めてやり過ごそうとした。
汗が吹き出し、鼓膜まで塞がれたように感じられた。
何が起きたかわからない。
がくりと身体から力が抜け、びくんびくんと足先まで跳ねてしまう。
ぶるりと身を震わせて、必死に空気を求めていると、一ノ瀬は私の目元を指で拭った。
そして、指に付着した雫を舐め取ってから言う。
「ドライでイけるようになりましたね」
「ドラ、イ……?」
何を言われたのか、その場ではわからなかった。
後になって調べてみて、ドライ・オーガズムというものがあるのだと知る。
射精を伴わない絶頂。そんなことがこの身に起きるなんて、想像したこともない。
「気持ち良かったでしょう?」
そう問われても、何も言い返せない。
「ドライのいいところは──」
「はう……っあ……な、に……?」
一ノ瀬はまた動き出し、私を激しく揺すぶってくる。
「何度でも、連続してイけちゃうところにあるんですよ」
「いや……っだめ、だ……また……イく……っあう」
何とかやめさせようともがいても、一ノ瀬は私を抱き続け、滅茶苦茶にした。
自分が壊れる、と思ったほどだ。
受け止められないほどの快楽と愉悦に溺れ、飲み込めない唾液が顎を伝った。
「可愛いですね。──もっと、俺を感じてください」
「もう、むり……だ……っああ……はっ」
どんなに言っても、一ノ瀬は私を貪るのを止めなかった。
ドライというものが、どれほど辛く、甘美なものなのか。
私はその日、嫌というほどに叩き込まれた。
次の日の朝には、ベッドから起き上がれないほどになった。
そんな私を、一ノ瀬は愛おしそうに目を細めて見てくる。
「君とランニングがしたかったというのに。これでは走れない」
照れ隠しもあって、私はぶっきらぼうにそう言った。
ベッドに仰向けになり、手足を投げ出して寝ていると、一ノ瀬は私にキスをしてきた。
「すみません。あなたがあまりに可愛くて、抑えきれなかった」
あんな涙と唾液でぐしゃぐしゃになった顔の、何が可愛いというのか。
じろりと睨みつけると、悪戯っ子のように一ノ瀬はフフっと笑った。
「今度、縛ってみたいです」
「……っ」
一ノ瀬には、そんな願望があったのか。
こんなに清潔そうに笑い、優し気な手つきで髪を撫でてくるというのに。
だが、言われた途端に身体の芯が疼き、顔が火照り出した。
一ノ瀬の言葉に当てられて、期待してしまっている。
今出さえこれほどの愉悦を覚えているというのに、縛られたらどうなるのか。
想像するだけで唇が戦慄き、身体が打ち震える。
私にも、こんな被虐趣味があったということか。
「……君に、一任する」
ぼそりと答えると、一ノ瀬は目を瞬かせ、嬉しそうに笑ってから私を抱き締めた。
「好きです、美浜さん」
私の方こそ、一ノ瀬にここまで溺れるとは思っていなかった。
好きだと答える代わりに、またキスを強請る。
私は一ノ瀬に身を任せ、愛されている喜びに浸った。
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