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最終章 未来
私の恋
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『僕は、一人で生きていくための力を得たくてデクスター・カレッジを受験しました。僕は、僕だけの力で立てるようになりたい。誰にも踏みにじられず、誰にも奪われず、僕は自分の人生を生きていきたいのです。そのためなら、友人も要りません』
面接の記録を任されたその日、ある受験生の静かで凛とした声が聞こえ、私は思わず顔を上げた。
そんなことを言う人間の顔を見てやろうという気もあったのだとは思う。
それほどに、私にとっては衝撃的な言葉だった。
デクスター・カレッジの中では、誰もが卒業後のための人間関係を構築するのに躍起になっていた。もともと伯爵家の人間である私のもとには、スクール時代から交流を持ちたい人間が集まって来ていたが、カレッジに入ってからはますます苛烈になっていた。
特にプリフェクトに選ばれてからというもの、クラスメイトが近付いてくるようになり、今後ファグを選ぶときのことを考えて、気が重くなったものだ。
だがそれが、このカレッジの姿なのだと、私は納得済みだった。
脈々と受け継がれてきた習わしだ。それに異を唱えるつもりはなかった。
だがここに、伝統とも言えるその在り方に、否定的なことを言う人間が現れた。
しかもそれを、面接試験の場で言うというのは、あまりに愚かだ。
一体どこの誰がと視線を向けて、私は唖然とした。
その人物が、あまりにも可憐で、美しかったからだ。
プラチナブロンドに青紫の瞳。白く滑らかな肌。
緊張のためにか少し上気した薄紅色の頬。
幼さの残る丸みのある顔の輪郭。
整った顔をしているせいで、年相応には見えない。
そのせいで尚更、彼がこんな台詞を言うようになった、これまでの人生が気になった。
彼が退室するまで、私は記録を取るのも忘れて見入り、あとで教員から叱責された。
幸い、もう一人の記録係が書き留めてくれていたから何とかなったが。
教員たちは、次の生徒を呼ぶまでしばらくざわついていた。
ただ、学長だけが含み笑いの末に、「今年は見どころのある者がいる」とだけ言った。
入学試験が終わり、結果が発表された時も、私は密かに気になっていた。
彼は、合格できたのかと。
そして、入学式の場に彼を見つけて、胸が高鳴った。
あの感情は、今思えば恋の予感だったのかもしれない。
彼を見たクラスメイト達の反応で、私は彼の前途が苦難に満ちているであろうことを知った。なぜなら、彼を見かけた人間たちが、すぐにファグにしたいと騒ぎだしたからだ。
あの見た目なら、仕方がないとも言えるが、さらに周囲に媚びないタイプだからこそ、余計にヒートアップしたのだろう。
誰が彼──ノア・スタンリーをファグとするのか。
クラスメイトの間では、その話題で持ち切りとなっていた。
次々に断られる上級生たちを見て、やはり一筋縄ではいかない相手だと、私は遠巻きに見ていた。
そのうち、ノアが一人ではなく、友人たちと歩く姿を見かけるようになって、私は内心驚いていた。
友人も要らないと言っていたくらいだ。
きっと冷たくあしらって、傍にも寄せ付けないと思っていたが。
食堂で友人と過ごす姿に私は惹きつけられ、微笑ましく見守った。
彼は、友人に囲まれることで、変わっていけるのかもしれない。あの時の言葉をいつか撤回し、人の輪の中で生きていけるようになるだろうと考えた。
ちょうどその頃、私は生徒代表に選出された。
特に希望していたわけではないが、候補となり、選ばれることは栄誉ではある。
卒業後のことも見据えて、私は代表となることを受け入れ、他のカレッジ・ヘッドと共に、新体制で臨むこととなった。
その際に、私は考えていた。
これで、彼の願いの後押しができるかもしれない、と。
ファグ制度の見直しもその一つだ。
だがそれには、かなりの年数がかかると思われた。
それでも、その第一歩を私の代で始めようと私は考えた。
カレッジ・ヘッドになってから、更にノアの名前を聞くようになった。
セオドフがノアにファグを断られ続けているという話をマシューから聞き、やはり彼の態度は変わらないのだと知った。マシュー自身も、ノアに興味を抱き始め、それまで我関せずの様子だったジョシュアまでもが、ノアの名前を口に上らせるようになる。
彼らがノアの名を出す度に、心がざわついた。
このままではいつか、途方もないことに彼は巻き込まれるだろう。
何も起こらず、無事に卒業させてやりたいが、そうはいかないかもしれない。
言葉も交わしたことのない相手だ。
なぜ自分がこうもノアに囚われているのかと、不思議に感じていた。
ただの興味だと自分に言い聞かせ、なるべく目にしないように気を付けていた矢先に、あの事件が起きた。
クラスメイトに媚薬を飲まされ、まさに今犯されようとしていた現場に、私は鉢合わせることになったのだ
最初は隣室の騒ぎを、いつものことだと考えて放置していたが、あまりにも長く続いたため、声を掛けに行った。そこで私は、あの凶行を見ることになる。
人垣の向こうにプラチナブロンドが見えた時には、息が止まるかと思った。
彼らを部屋から出させ、床に無惨にも倒れ込むノアに、私はそっと近づいた。
「だ、れ……?」
生徒代表である私を知らないのにも驚かされたが、薬のせいである可能性もある。
私は本名を告げて、ノアを介抱した。
譫言のように私の名前を呼び、身をすり寄せてキスを強請る姿は、面接の時の彼とは別人のようだった。媚薬の効き目は絶大で、髪に触れるだけで身体をビクつかせていた。望み通りにキスをすると、熱く濃厚なキスを仕掛けられた。
慣れているとは思えない。本能的に欲しているような、激しいものだった。
「んん……っは……ぅ」
何度かキスを交わしたところで、ノアは達した。
頬にかかる熱い吐息や私に向けられる眼差しに、理性が焼ききれて、こちらが暴走しそうになる。
キスだけでは治せないと股間を弄りながら、これは真に治療行為なのか、自分の欲望ではないのかと、自問自答し続けた。
「フェリル……きもち、いい……はっ……、ああ──っ」
狂おしいほどに私を求めるノアに、私は訊ねた。
「お前は、経験があるのか?」
「けい、けん?」
何を問われたかわからないといった風のノアに、私は直接的に問うた。
「男に抱かれたことは?」
馬鹿なことを訊いたと思った。
ノアに経験があろうとなかろうと、私の出る幕ではない。
治療のために抱こうとするそのこと自体が、私が冷静ではない証拠だ。
「やめておこう」
私はノアを後ろから抱き締め、彼の欲望を慰めることに専念した。
「フェ、リル……も、っと……ほし……っ」
「わかった。それなら、水をもう少し飲もうか」
水を口に含み、魔力を込めて飲ませる。
だが、ノアは水よりも私を求めた。
その薄い舌に絡みつかれて、じわりと再び欲望がもたげる。
「ノア、落ち着いて。水を飲むんだ」
「いや、だ……もっと、して……キス、したい……」
私は飲ませるのをやめて、深く濃厚なキスをした。
想いを込めて、これで終わらせようと、最後のキスをする。
「フェ、リル……フェリル……」
キスの合間に呼ぶ声は甘く、私は心を完全に奪われた。
媚薬から解放され、眠りについたノアに、私は水魔法をかけることにした。
彼の願いを叶えてやりたい。
一人で生きていきたいという彼に、私の存在は必要ない。
これは医療行為であって、私は医者の立場の人間でしかない。
だから、彼の記憶から私を消した。
これで関係は終わりだと自分に言い聞かせたというのに。
私は彼とプリフェクトの面接試験で、また会うことになった。
──「僕がプリフェクトになった暁には、サロンへの招待制度とファグ制度を廃止します」
彼の答えを聞いて、私は人知れず圧倒されていた。
あれだけのことがあっても尚、ノアは変わらない。
カレッジ・ヘッドのサロンに入る気も、ファグになるつもりもないのだと、あれは一種の宣戦布告だった。
何と潔く、美しい存在なのか。
私は、あの事件において、自分の行動は正しかったのだと感じた。
このまま、彼に悟られることなく済めばいい。
だが、あの祭りの日に、ふとしたきっかけでノアは思い出してしまった。
うさぎの着ぐるみの中身がノアだと気付けなかった私は、気配を消さずに不用意に近付いた。ハンカチで顔を拭いた私の手を掴んだ、あの熱い手。指先が震え、恋焦がれた相手を見るような視線が注がれた。
相手が私であることに、失望しただろう。
あのまま、忘れ去っていた方が彼の為だった。
旧校舎で会うようになり、互いの距離が縮まることを喜ぶ一方で、私にはわかっていた。
ノアの想いを受け入れれば、それでこの関係は終わる。ノアは自分の望みのために、これまで近付いた人間同様、私との関係を断つに違いない。
私に受け入れられない限りは、彼は私を追い求める。
決してこの想いを、ノアに悟られてはならない。
彼と共にいるためには、彼を求めてはならない。
彼の人生の邪魔にならないよう、ひっそりと見守るしかないのだ。
そう決意したはずだった。
だがあの夜、ノアに告白され、私に拒絶されて泣く姿を見て、もう耐え切れなかった。
──「お願いです。今夜だけでもいいです。僕を、抱いて……ください」
あんな言葉を告げられて、断れる人間などいない。
私の決意は、彼の青紫の瞳を見つめた瞬間に、脆く崩れ去った。
──「フェリル……もっと、あなたが……ほしい」
──「きもち、いい……フェリル……っああ……も、っと……ほし……っ」
私の下で喘ぐノアは可愛くて、私は夢中で抱いた。
互いの欲望をさらけ出し、一つになる感覚を味わった。
幸せな時間は短く、朝はすぐにやってきた。
そして、やはりノアは私から逃げた。
私を避け、一人に戻ろうとする。
だが私は、もうノアを一人に戻すことはできそうになかった。
彼を、愛してしまったからだ。
面接の記録を任されたその日、ある受験生の静かで凛とした声が聞こえ、私は思わず顔を上げた。
そんなことを言う人間の顔を見てやろうという気もあったのだとは思う。
それほどに、私にとっては衝撃的な言葉だった。
デクスター・カレッジの中では、誰もが卒業後のための人間関係を構築するのに躍起になっていた。もともと伯爵家の人間である私のもとには、スクール時代から交流を持ちたい人間が集まって来ていたが、カレッジに入ってからはますます苛烈になっていた。
特にプリフェクトに選ばれてからというもの、クラスメイトが近付いてくるようになり、今後ファグを選ぶときのことを考えて、気が重くなったものだ。
だがそれが、このカレッジの姿なのだと、私は納得済みだった。
脈々と受け継がれてきた習わしだ。それに異を唱えるつもりはなかった。
だがここに、伝統とも言えるその在り方に、否定的なことを言う人間が現れた。
しかもそれを、面接試験の場で言うというのは、あまりに愚かだ。
一体どこの誰がと視線を向けて、私は唖然とした。
その人物が、あまりにも可憐で、美しかったからだ。
プラチナブロンドに青紫の瞳。白く滑らかな肌。
緊張のためにか少し上気した薄紅色の頬。
幼さの残る丸みのある顔の輪郭。
整った顔をしているせいで、年相応には見えない。
そのせいで尚更、彼がこんな台詞を言うようになった、これまでの人生が気になった。
彼が退室するまで、私は記録を取るのも忘れて見入り、あとで教員から叱責された。
幸い、もう一人の記録係が書き留めてくれていたから何とかなったが。
教員たちは、次の生徒を呼ぶまでしばらくざわついていた。
ただ、学長だけが含み笑いの末に、「今年は見どころのある者がいる」とだけ言った。
入学試験が終わり、結果が発表された時も、私は密かに気になっていた。
彼は、合格できたのかと。
そして、入学式の場に彼を見つけて、胸が高鳴った。
あの感情は、今思えば恋の予感だったのかもしれない。
彼を見たクラスメイト達の反応で、私は彼の前途が苦難に満ちているであろうことを知った。なぜなら、彼を見かけた人間たちが、すぐにファグにしたいと騒ぎだしたからだ。
あの見た目なら、仕方がないとも言えるが、さらに周囲に媚びないタイプだからこそ、余計にヒートアップしたのだろう。
誰が彼──ノア・スタンリーをファグとするのか。
クラスメイトの間では、その話題で持ち切りとなっていた。
次々に断られる上級生たちを見て、やはり一筋縄ではいかない相手だと、私は遠巻きに見ていた。
そのうち、ノアが一人ではなく、友人たちと歩く姿を見かけるようになって、私は内心驚いていた。
友人も要らないと言っていたくらいだ。
きっと冷たくあしらって、傍にも寄せ付けないと思っていたが。
食堂で友人と過ごす姿に私は惹きつけられ、微笑ましく見守った。
彼は、友人に囲まれることで、変わっていけるのかもしれない。あの時の言葉をいつか撤回し、人の輪の中で生きていけるようになるだろうと考えた。
ちょうどその頃、私は生徒代表に選出された。
特に希望していたわけではないが、候補となり、選ばれることは栄誉ではある。
卒業後のことも見据えて、私は代表となることを受け入れ、他のカレッジ・ヘッドと共に、新体制で臨むこととなった。
その際に、私は考えていた。
これで、彼の願いの後押しができるかもしれない、と。
ファグ制度の見直しもその一つだ。
だがそれには、かなりの年数がかかると思われた。
それでも、その第一歩を私の代で始めようと私は考えた。
カレッジ・ヘッドになってから、更にノアの名前を聞くようになった。
セオドフがノアにファグを断られ続けているという話をマシューから聞き、やはり彼の態度は変わらないのだと知った。マシュー自身も、ノアに興味を抱き始め、それまで我関せずの様子だったジョシュアまでもが、ノアの名前を口に上らせるようになる。
彼らがノアの名を出す度に、心がざわついた。
このままではいつか、途方もないことに彼は巻き込まれるだろう。
何も起こらず、無事に卒業させてやりたいが、そうはいかないかもしれない。
言葉も交わしたことのない相手だ。
なぜ自分がこうもノアに囚われているのかと、不思議に感じていた。
ただの興味だと自分に言い聞かせ、なるべく目にしないように気を付けていた矢先に、あの事件が起きた。
クラスメイトに媚薬を飲まされ、まさに今犯されようとしていた現場に、私は鉢合わせることになったのだ
最初は隣室の騒ぎを、いつものことだと考えて放置していたが、あまりにも長く続いたため、声を掛けに行った。そこで私は、あの凶行を見ることになる。
人垣の向こうにプラチナブロンドが見えた時には、息が止まるかと思った。
彼らを部屋から出させ、床に無惨にも倒れ込むノアに、私はそっと近づいた。
「だ、れ……?」
生徒代表である私を知らないのにも驚かされたが、薬のせいである可能性もある。
私は本名を告げて、ノアを介抱した。
譫言のように私の名前を呼び、身をすり寄せてキスを強請る姿は、面接の時の彼とは別人のようだった。媚薬の効き目は絶大で、髪に触れるだけで身体をビクつかせていた。望み通りにキスをすると、熱く濃厚なキスを仕掛けられた。
慣れているとは思えない。本能的に欲しているような、激しいものだった。
「んん……っは……ぅ」
何度かキスを交わしたところで、ノアは達した。
頬にかかる熱い吐息や私に向けられる眼差しに、理性が焼ききれて、こちらが暴走しそうになる。
キスだけでは治せないと股間を弄りながら、これは真に治療行為なのか、自分の欲望ではないのかと、自問自答し続けた。
「フェリル……きもち、いい……はっ……、ああ──っ」
狂おしいほどに私を求めるノアに、私は訊ねた。
「お前は、経験があるのか?」
「けい、けん?」
何を問われたかわからないといった風のノアに、私は直接的に問うた。
「男に抱かれたことは?」
馬鹿なことを訊いたと思った。
ノアに経験があろうとなかろうと、私の出る幕ではない。
治療のために抱こうとするそのこと自体が、私が冷静ではない証拠だ。
「やめておこう」
私はノアを後ろから抱き締め、彼の欲望を慰めることに専念した。
「フェ、リル……も、っと……ほし……っ」
「わかった。それなら、水をもう少し飲もうか」
水を口に含み、魔力を込めて飲ませる。
だが、ノアは水よりも私を求めた。
その薄い舌に絡みつかれて、じわりと再び欲望がもたげる。
「ノア、落ち着いて。水を飲むんだ」
「いや、だ……もっと、して……キス、したい……」
私は飲ませるのをやめて、深く濃厚なキスをした。
想いを込めて、これで終わらせようと、最後のキスをする。
「フェ、リル……フェリル……」
キスの合間に呼ぶ声は甘く、私は心を完全に奪われた。
媚薬から解放され、眠りについたノアに、私は水魔法をかけることにした。
彼の願いを叶えてやりたい。
一人で生きていきたいという彼に、私の存在は必要ない。
これは医療行為であって、私は医者の立場の人間でしかない。
だから、彼の記憶から私を消した。
これで関係は終わりだと自分に言い聞かせたというのに。
私は彼とプリフェクトの面接試験で、また会うことになった。
──「僕がプリフェクトになった暁には、サロンへの招待制度とファグ制度を廃止します」
彼の答えを聞いて、私は人知れず圧倒されていた。
あれだけのことがあっても尚、ノアは変わらない。
カレッジ・ヘッドのサロンに入る気も、ファグになるつもりもないのだと、あれは一種の宣戦布告だった。
何と潔く、美しい存在なのか。
私は、あの事件において、自分の行動は正しかったのだと感じた。
このまま、彼に悟られることなく済めばいい。
だが、あの祭りの日に、ふとしたきっかけでノアは思い出してしまった。
うさぎの着ぐるみの中身がノアだと気付けなかった私は、気配を消さずに不用意に近付いた。ハンカチで顔を拭いた私の手を掴んだ、あの熱い手。指先が震え、恋焦がれた相手を見るような視線が注がれた。
相手が私であることに、失望しただろう。
あのまま、忘れ去っていた方が彼の為だった。
旧校舎で会うようになり、互いの距離が縮まることを喜ぶ一方で、私にはわかっていた。
ノアの想いを受け入れれば、それでこの関係は終わる。ノアは自分の望みのために、これまで近付いた人間同様、私との関係を断つに違いない。
私に受け入れられない限りは、彼は私を追い求める。
決してこの想いを、ノアに悟られてはならない。
彼と共にいるためには、彼を求めてはならない。
彼の人生の邪魔にならないよう、ひっそりと見守るしかないのだ。
そう決意したはずだった。
だがあの夜、ノアに告白され、私に拒絶されて泣く姿を見て、もう耐え切れなかった。
──「お願いです。今夜だけでもいいです。僕を、抱いて……ください」
あんな言葉を告げられて、断れる人間などいない。
私の決意は、彼の青紫の瞳を見つめた瞬間に、脆く崩れ去った。
──「フェリル……もっと、あなたが……ほしい」
──「きもち、いい……フェリル……っああ……も、っと……ほし……っ」
私の下で喘ぐノアは可愛くて、私は夢中で抱いた。
互いの欲望をさらけ出し、一つになる感覚を味わった。
幸せな時間は短く、朝はすぐにやってきた。
そして、やはりノアは私から逃げた。
私を避け、一人に戻ろうとする。
だが私は、もうノアを一人に戻すことはできそうになかった。
彼を、愛してしまったからだ。
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