騎士とお嬢様。

奏 -sou-

文字の大きさ
21 / 58
第二章

07

しおりを挟む

エドウィー王子の声と共にビュンと音がしたかと思えば騎士と私の目の前に鋭い刃先が見えた。

今手を離されると頭から地面にダイブしかねない程、後ろへ折れ曲がるような体制になっていた私を抱きしめる力は変わらず、ゆっくり上半身を持ち上げながら刃先の向こうを見据えていた。

「…何のつもりだ」
「何のつもりだと?私の妻になる女性を婚約者の前で手を出そうとしている貴方が何のつもりか是非聞きたいものですね。」

「…サフィの目の前にある剣をしまえ」
「えぇ、是非ともしまいたいのでサファリーアさんからその手を離してはいただけませんかね?」

エドウィー王子が私と騎士へ距離を詰めていることもあり刃先が騎士の喉仏へと近づく。

私を離せと言うけれど、体勢を元に戻しかけて止まってる私的には、剣が邪魔な上に今騎士に手を離されたらバランス崩して地面に後頭部からダイブよ。


「おいおい、これはどういう状況なんだ?」

エドウィー王子でも騎士でもない、聞き覚えのある声がした方向に視線をやれば、テラスの出入口のドアに片手で押し開けてつったている兄さんが困惑した表情でこちらを見ていた。

やっと救世主が到着したということね。

「…兄さま」

と、ホッと肩の力をぬけば、エドウィー王子が静かに剣を仕舞い、騎士も私をしっかりと立たせて手を離してくれた。その勢いで騎士から離れて兄さんの元へと駆け寄る。

「サファリーア」

駆け寄った私を片手で抱き寄せて心配そうな目で見つめてくる兄に微笑んでみせる。

「兄さま、おかえりなさい」
「ただいま、サファリーア」

少し安心したかのような表情で兄さんが頭を撫でてくれるその手が暖かくて目を細めていれば兄さんが騎士の方に目を向ける。

「ユーグス、この状況はなんだ?」
「……サフィを目の前の男から護っただけだ。」
「目の前の男とは、エドウィー王子のことか?」
「あぁ」

兄さんが、エドウィー王子の方を向いて、私を背後に腰を軽く折り曲げて会釈をする。

「今日は我が妹、サファリーアの喜ばしき17歳の誕生日を祝いに遠い所から遥々、お越し頂き誠に感謝をしています。」

「こちらこそ、この度は麗しきサファリーアさんの誕生日パーティーに招いて頂きありがとうございます。」

にこやかな笑みで会話している兄さんとエドウィー王子が怖くてたまらない。

「妹の姿がみえないと思い探せばこんな寒空の下でエドウィー王子が剣をユーグスに向けている、それだけなら何かしら事情があったのだと声をかける事はしないつもりでしたが、どういうことか妹がユーグスに抱きしめられている上に剣先が妹の顔の前にあった。…これは、どういう事なのかユーグスに聞けば護った。の一言、妹の顔の前に刃先があるにも関わらず何をどう護ったと言えるのか、エドウィー王子から是非ともご説明頂きたい。」

兄さんが静かに怒っていることが、言葉の節々から伝わってくる。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

冗談のつもりでいたら本気だったらしい

下菊みこと
恋愛
やばいタイプのヤンデレに捕まってしまったお話。 めちゃくちゃご都合主義のSS。 小説家になろう様でも投稿しています。

わんこ系婚約者の大誤算

甘寧
恋愛
女にだらしないワンコ系婚約者と、そんな婚約者を傍で優しく見守る主人公のディアナ。 そんなある日… 「婚約破棄して他の男と婚約!?」 そんな噂が飛び交い、優男の婚約者が豹変。冷たい眼差しで愛する人を見つめ、嫉妬し執着する。 その姿にディアナはゾクゾクしながら頬を染める。 小型犬から猛犬へ矯正完了!?

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

主人公の義兄がヤンデレになるとか聞いてないんですけど!?

玉響なつめ
恋愛
暗殺者として生きるセレンはふとしたタイミングで前世を思い出す。 ここは自身が読んでいた小説と酷似した世界――そして自分はその小説の中で死亡する、ちょい役であることを思い出す。 これはいかんと一念発起、いっそのこと主人公側について保護してもらおう!と思い立つ。 そして物語がいい感じで進んだところで退職金をもらって夢の田舎暮らしを実現させるのだ! そう意気込んでみたはいいものの、何故だかヒロインの義兄が上司になって以降、やたらとセレンを気にして――? おかしいな、貴方はヒロインに一途なキャラでしょ!? ※小説家になろう・カクヨムにも掲載

幼馴染の許嫁

山見月 あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。 彼は、私の許嫁だ。 ___あの日までは その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった 連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった 連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった 女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース 誰が見ても、愛らしいと思う子だった。 それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡 どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服 どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう 「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」 可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる 「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」 例のってことは、前から私のことを話していたのか。 それだけでも、ショックだった。 その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした 「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」 頭を殴られた感覚だった。 いや、それ以上だったかもしれない。 「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」 受け入れたくない。 けど、これが連の本心なんだ。 受け入れるしかない 一つだけ、わかったことがある 私は、連に 「許嫁、やめますっ」 選ばれなかったんだ… 八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

処理中です...