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第三章
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しおりを挟むこれ以上、二人の言い合いなど聞きたくない
「エドウィー王子、お時間が迫ってますわ。門までご一緒させていただきます。…騎士は戻って頂戴」
此処で二人の気迫に怯みかけるが、そんな自分に負けないように気を引き締める
「俺も同行する」
そうね、そうよね、騎士から分かったとは言ってくれないのは予想がついたこと。
「なら、一言もしゃべらないで頂戴」
私は怒っているのよ!というアピールをする。
本当は嫌な空気にのまれて怯んでいるけど、それを見せる訳にはいかない。
「…サフィ、何を怒っている?」
「…怒っていないわ!とにかく見送りに貴方も着いてくると言うのなら、これ以上言い合いをしないで頂戴!それが出来ないのなら、先に部屋へ戻って頂戴」
ふん!と言わんばかりに、何倍も大きな身体の騎士を見上げながら言いたいことをいう。
「まるで猫のようだな。」
楽しそうな声で、何故か急に上機嫌の騎士に本当に苛立ちを覚え始める。
「猫じゃないわよ!…エドウィー王子、お時間取らせて申し訳ございません。お見送り致しますわ。」
騎士に向けた表情とは別に落ち着いた笑みで声をかければ、エドウィー王子が苦笑いをしていた。
門までの道のりは、騎士を無視してエドウィー王子と会話をしたいが要らぬ突っかかりを今にもしてきそうでろくに会話が出来ずじまい。
「サファリーアさん、お見送りありがとう。」
「エドウィー王子…お気をつけてお帰りください。」
次、会えるのは結婚式の日
その日まで会えないとなれば、手を握ってもバチは当たらないわよね。
向き合って話してるエドウィー王子の両手をそっと握りそのまま自分の胸もとまで持ってきて優しくぎゅっと握る。
私の行動に驚いた瞳がぶつかる。
「サファリーアさん」
「また、お会いしますその日まで。手を握ったことお許し下さい」
「許すも何も…本当に可愛らしい女性だ」
甘いマスクで、私の胸元の位置にある両手まで全身を屈めて、私の両手の甲に軽いキスをおとす。
「エドウィー王子…。」
なんて甘いのかしら!と照れてしまう。
「王子、タイムオーバーだ。馬車に乗れ」
急に背後から声がすると思えば騎士が見下ろすかのような目線でエドウィー王子を見ていた。
「騎士!」
「サフィ、限界だ。」
騎士はその言葉を合図かのように背後から私の両腕を持ち、テコの原理のような動きで力もそこまで入れずにエドウィー王子の手から離させ自分の胸元に抱き寄せる。
「ユーグス卿」
「また会うことがないことを祈る。」
騎士の行動にエドウィー王子もため息をついて名を呼べば、皮肉を吐く始末。
「エドウィー王子、お待ちしておりますわ」
「それでは」
最後ハグを交わすことも出来ず、エドウィー王子が帰って行く姿を馬車が遠くなるまで見続けていた。
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