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13:支援型異術

金属のブレスレット

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 あれから、大神官様は私たちにこう言った。

『第二王子は、未成年預かり証の延長を申し出る書類の申請をすぐにしてくれ。副団長は、ここに残って神具の説明を聞いてくれ』

 それに従い、ルワール様は先に神殿に帰ってしまったの。
 今は、さっきの教会のようなところにまで戻って、私はレオンハルト様のお隣の席に腰をおろして大神官様の言葉に耳を傾けているってところ。
 ここでは爵位とか階級関係なしにいつでも質問をして良いって言われたの。だから、ちょっとだけ気が楽。

「さてと。ブレスレットが重くなっていると言うのは、本当かな」
「はい……」
「ふむ。神殿では、通常異力を感じないよう調整されてるのだがの。全く、不思議な子じゃ」
「あの、これが重くなるのって異術に関係してるのでしょうか」
「ちょっと失礼するぞい」
「ひゃっ!?」

 早速質問をすると、立っていた大神官様が私に向かってゆっくりと歩いてくるじゃないの! 手をワキワキされた記憶しかないから、それを見た私は背もたれギリギリまで後ろに下がった。質問に答えてよ!
 でも、大丈夫みたい。隣に居るレオンハルト様が、私を守ってくれるように片腕を広げてガードしてくださっている。それが、とても安心するわ。

「大神官殿、あまりステラ嬢をいじめないでください」
「ほほほ、今時そんな純粋な子は珍しいからの。いじめたくなる気持ちはわかって欲しいのう」
「では、ステラ嬢。冷たいお水を飲みに、宮殿へ帰りましょう」
「あ、はい。ありがとうございます」
「ちょーーー!! 悪かった! 私が悪かったから!」

 今のって、いじめられたの? いじめってほどではないと思ったけど……。
 よくわからないままレオンハルト様に従い席を立つと、ものすごいスピードで大神官様が謝罪をしてくる。……神聖なお方って聞いていたのに、あれは嘘だったのかしら。

 とりあえず、私は促されるままに席に戻った。

「こっちだって、仕事の合間に来てるんですよ。無駄話せずに早く済ませてください」
「えっ」
「とか言って! ステラ・ベルナールと一緒に居るのが嬉しくて仕方ない顔をしとるぞ」
「!?」

 嘘!? お仕事の合間に来させちゃったの!?
 というか、普通に考えればそうよね……。こんな昼間だし、団服着てるしカッコ良いし……。団服って良いわね。本当に格好良いのよ。ずっと見てても飽きないというか。

 いえ、今はすぐに謝りましょう。
 ごめんなさいって。1人でも話は聞けるのでって……思って急いでレオンハルト様の方を向いたのだけど、どうしてかお顔を真っ赤にして慌てた様子で私を見てきた。

「どうしましたか?」
「いえ、なんでもないです。ご一緒できて光栄です……」
「あ、は、はい。私もです……?」

 謝ろうと思ったのに、タイミングを逃してしまったわ。とりあえず、ご迷惑はかけていないような? あとで、ちゃんと謝りましょう。今は、大神官様のお話を聞かないと。

 改めてお話を聞く体勢になるとすぐに、なぜかレオンハルト様の手が私の片手を握ってきた。びっくりしたけど、とても温かい。
 こうやってゆっくり握るのって、以前外にお出かけして以来かも。もちろん、喜んで握り返した。
 でも、私って醜いな。ソフィーに嫌われていることに気づいたからって、レオンハルト様の好意にすぐ甘えてしまうんだもの。1人が怖いだなんて、汚いわ。わかっていながら、離せないなんて。

「大丈夫ですよ。私は、どんなことがあってもステラ嬢のお側に居ますから」
「……すみません。なんだか、ブレスレットが重くて」
「本当だ。さっきも感じましたが、これは負担になりますね」
「どれ……。本当だの、やはり異力が多い」

 ブレスレットが重くて腕を動かすのが面倒なんて、酷い言い訳だわ。
 でも、なぜかレオンハルト様だけじゃなくて、大神官様までもが頷いてる。私の両手を2人で持ち上げては「なんとかならないか」とか話して……。あれ、これって結構重いの?

「あ、あの、そんな負担って感じではないです。ちょっと重いなって思うくらいで」
「当人はそうでも、他の人が持つと結構重いんじゃよ」
「1日つけていれば、十分な筋トレになりそうな感じですね。多分、2kgはあるかと」
「え、そんなには多分わからないですけどないですよ」
「しかし、ゼロでは無かろう? 普通はつけているのも忘れるほどの重さなんだが」
「そうなると、常に重さは感じています。今は特に」
「ふむ。待ってろ」
「!?」

 そう言って、大神官様は私の手首につけられたブレスレットを掴み、眩い光を放った。それは、教会内全体を照らすほどの強い光でね。思わず、目を閉じてしまったわ。
 
 もう良いと言われて目を開けると、先ほどしていたはずの石のようなゴツいブレスレットがなくなっていた。代わりに、アクセサリー感覚でつけられるような金属製のものが付けられている。

「どうじゃ、2段階強化したからそうそう重くはならんだろう」
「は、はい。今のところは特に」
「どうやら、君の感情に合わせて異力が溢れてしまうらしい。副団長さんに教えてもらって、コントロール方法を学ぶと良い。アカデミーに入学させるには、ちと異力が多すぎる」
「わかりました。お受けします」
「あ、ありがとうございます……」

 やっぱり、大神官様ってすごい人なのかも。
 だって、「強化した」ってことはこのブレスレットを付け替えたとかじゃなくて形を変えたってことでしょ? すごすぎる……。これも、異術なのかしら?

 大神官様に「ブレスレットが馴染むまでは疲れやすいからゆっくり休め」と言われて、その場はお開きになった。「最後にそのたわわな(略)」なんて場面もあったけど、そこはもう割愛させていただくわ。そのせいで、お借りした上着の前までぴっちり締められてしまったこととかね。


 帰り道、ソフィーに会ったらどうしようって思ったけど特に会わなかった。
 私は、レオンハルト様の駆る馬に乗って宮殿へと戻っていく。帰りに乗ってきた馬車は、ルワール様が乗って行ったのですって。
 ……ナイス、ルワール様! 無条件でレオンハルト様に抱きつけるからとても嬉しいというのが、心の声です。
 
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