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15:心境の変化

「好き」を貫くこと

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 レオンハルト様は、とても真剣な眼差しを向けながら私にプロポーズをしてくださった。
 でも、なぜか様子がおかしい。

「ステラ嬢、私と婚約してくださいますか?」
「はい、お受けさせていただければ」
「やはり、そうですよね。急すぎましたよね。ここは、もう少し時間を……今、なんと?」
「あ……。お受けさせていただければ、と」
「お受け? え?」
「え?」
「え?」
「え?」

 あれ、早まった!?

 プロポーズされたと思って返事をしたのだけど、なぜかレオンハルト様が驚いていらっしゃる。先ほどから「え」だけで会話が成り立ちそうな勢いだわ。
 もしかして、「婚約」って何かの隠語だった!? それとも、「解約」って言った!? いえ、でも彼とはなにも契約はしてないし……。まさか、「翻訳」してくださいだったとか。隣国の言葉なら、できますけども!

 よくわからずオロオロしていると、目の前で「え」を連発していたレオンハルト様が笑い出した。

「すみません。断られる覚悟でお伝えしたので、びっくりしてしまいました」
「……手が震えてます」
「あはは、情けないでしょう。こんなこと言ってステラ嬢に嫌われたらと思う反面、誰かに取られたくないという気持ちもあって揺れていたんです。お付けしてもよろしいでしょうか」
「お願いします」

 とてもお強い方の手が震えてるという事実は、私にとって衝撃的なこと。
 レオンハルト様も、私に嫌われるのが怖かったってことなのかな。そんなことじゃ嫌わないのにな。

 私は、震える手で付けていただいた指輪に視線を向けた。それは、太陽にも負けない輝きを私に見せてくれる。
 口には出せないけど、これって私の食事何回分かしら……。きっと、値段を聞いたら驚いてしまうと思う。元々宝石に詳しくない私でも、この価値はわかるもの。

 でも、指輪の輝きよりも、レオンハルト様の気持ちが嬉しい。胸の奥から何かが湧き出てくるような、そんな感じがする。

「ありがとうございます、レオンハルト様」
「とてもよくお似合いです」
「この指輪、もしかして神具ですか?」
「はい、土台はそうです。ステラ嬢の異力の量を隠せるようになっていますので、外で多少暴走しても周囲にバレることはないかと。これからたくさん外に行きますから、少しでも安心できるようにしました」
「……ありがとうございます」

 それからネックレスもつけていただき、レオンハルト様と抱きしめ合った。互いの体温を確かめ合い、私はこの温かさを一生忘れないと心に誓う。

 これから前途多難だわ。
 お父様お母様がどうなるかによるけど、お屋敷をどうするか、使用人をどうするか。それに、ソフィーとも話す機会を設けたい。
 こうやって考えてみると、自分自身が「家族から遠ざかった場所で良いや」って投げやりになっていた気がする。もっと会話をして、互いの価値観なりなんなりぶつけ合えば良かったのに。

 爵位を剥奪されるほどのお仕事を、私は1人でこなしていたのでしょう? 家族なのでしょう? だったら、話ができる理由になったはず。私は今まで、「どうせ」と言っていじけていた小さな子どもだったのね。
 それに気づかせてくださったレオンハルト様には、一生頭が上がりそうにない。

 でも、そうね。
 まずやることは、そこでフライパンとオタマを持ってワナワナと震えているクラリスさんへの挨拶かしら? いつの間に入ってきたのかな、全く気づかなかったわ。


 
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