5度目の人生、好きに生きて何が悪い!?

細木あすか(休止中)

文字の大きさ
8 / 8
02

賑わう街の路地裏で

しおりを挟む
 街は、変わらず人が多い。
 前回訪れた……と言っても、前世っていうのかしら? 4度目の人生? とにかく、その時に訪れた時と大差ない。何か違うものがあるとすれば、それは私の隣でキョロキョロと周囲を見渡しているキュートくん。私のかけた「周囲の人から見えなくなる魔法」を……え? ネーミングセンスない? 良いじゃないの、別に誰にも迷惑かけてないもの。
「早く着替えたいわ……」
 迷惑をかけているとすれば、この服装だと思う。
 さっきから、みんなが私のボロボロになったドレスを見ながら怪訝そうな表情で避けていくのよ。でも、大丈夫。前回もそうだったし、話しかけてくる人は居なかったから。……いえ、居たわね。1人だけ。
「大丈夫かい!? 君、賊に襲われたのか!?」
「あ……」
「酷すぎる……。女の子が、こんな格好で歩いちゃダメだよ! こっち来なさい」
 歩きながらため息をついていると、前から歩いてくる男性が私に声をかけてきた。ガッチリとした肩幅に、長身長。鼻筋の通った顔立ち、少し日焼けした……いわゆるイケメンさんがね。
 勢い良く掴まれた手に、私は何も言えなくなってしまった。目的地がわからないまま、彼の背中を見ながらついていくだけのか弱い私……のはずもなく。
「大丈夫ですから、手を離してください」
「え?」
「女性の手を掴むなんて、非常識じゃなくて?」
「……え」
 私は、できるだけ声を張り上げて嫌悪の表情をした。相手に「不快です」と伝えるために。そして、周囲の人々に「私たちは無関係の人間です」と主張するために。
 案の定、驚いた男性はパッと手を離した。……だから、そんな警戒しなくて良いのよ。キュートくん。彼ったら、私の腕が掴まれてからずっとものすごい勢いで怒ってるのよ。でも、よく考えてね。今の貴方は、私の魔法によって存在を見えなくしてあるの。ちょっとでも誰かに認知されたら、魔法が解けちゃうわ。私は大丈夫だから、大人しくしていてね。
 その意思が伝わったのかなんなのか、キュートくんはシュンとした表情になって私の服の裾を掴んできた。ふふ、可愛いわね。目の前の男性とは大違い。
「相手の意思も確かめずに身体を触るなんて、非常識じゃありませんこと? この街は、そういう教育でも受けていらっしゃるのでしょうか」
「なっ、そ、そんな……。ただ、僕は君を心配して……」
「でしたら、心配ご無用ですわ。私は、この街の服屋も定食の美味しい食事処も存じておりますから」
「え、なぜ僕がそこに連れていくと……?」
「では、失礼します。ジョーン・マニーさん」
「!?」
 野次馬根性丸出しの人たちを押し退けて、私はその男性からゆっくりと距離を取った。ポカーンとした表情が、なんだかおかしい。笑いを堪えるのって、こんなに難しいことだったのね。昔の私は、わからなかった。
 レンガの建物が多い街中は、ちょっとだけ懐かしい気持ちにさせてくる。だって、だってね……。
 私は、人混みから離れて路地裏へと入った。心配そうについてくるキュートくんに、こう話しかける。
「私、この街に住んでいたことがあるの。さっきの男性が恋人でね。人を愛する素晴らしさを知ったわ。でもね」
 ゆっくりと語りかけるようにそう話しながらも、私の手は魔力を溜め込むために光を吸収し始めている。スーッと涼しげな風が吹き荒れる路地裏の空気が体内へと入り込むのを感じる中、キュートくんに背中を向けてある一点を見つめ返した。そこには……。
「嬢ちゃん、只者じゃねえな。王宮の使者か?」
「さあ、どうでしょう。一つ言えるなら、ジョーン・マニーさんは解雇した方がよろしいかと。彼をそのままにしておくと、金銭トラブルで多額の借金を背負うことになりますから」
「なんだ、わけわかんねえこと言いやがって! 覚悟はできてるんだろうな。オレは、平等が好きなんだ。女相手だからって、容赦しねえぞ」
「承知していますわ。でも、私たちはどう頑張っても平等にはならないかと」
「あん?」
 そこには、見るからに柄の悪そうな男性が5名ほど。その背後には、先ほど声をかけてきた男性……ジョーン・マニーが申し訳なさそうな表情で立っていた。前世の恋人で、私を2回目の死に追いやった張本人。死んでも死んでも、その事実はずっと覚えているわ。
 彼は、私に愛情を注いでくれた。でも、それは偽物の愛情だった。借金まみれになって、身体を売って、最後は怪しげな治験によって薬漬けにされて……ああ、昔の自分のことなんだけど、嫌になるわ。思い出したくもない。
 私は、もう愛に溺れない。
「だって、あなた。肛門付近にホクロがあるでしょう? 私にはないもの。いぼ痔も痛そうね。私にはないけど」
「な……!?」
 ジョーン・マニーが所属していた組織のリーダー。名前はなんだったかしら、覚えてないわ。一度だけ、無理やり身体を開かれたことがあって、覚えているのよ。あの時の恨み、ここで晴らしていきましょうか。
 私は、手のひらに溜め込んだ魔力を放出すべく、両腕を前に突き出した。5名と1名か。楽勝だわ。
 
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

公爵家の養女

透明
恋愛
リーナ・フォン・ヴァンディリア 彼女はヴァンディリア公爵家の養女である。 見目麗しいその姿を見て、人々は〝公爵家に咲く一輪の白薔薇〟と評した。 彼女は良くも悪くも常に社交界の中心にいた。 そんな彼女ももう時期、結婚をする。 数多の名家の若い男が彼女に思いを寄せている中、選ばれたのはとある伯爵家の息子だった。 美しき公爵家の白薔薇も、いよいよ人の者になる。 国中ではその話題で持ちきり、彼女に思いを寄せていた男たちは皆、胸を痛める中「リーナ・フォン・ヴァンディリア公女が、盗賊に襲われ逝去された」と伝令が響き渡る。 リーナの死は、貴族たちの関係を大いに揺るがし、一日にして国中を混乱と悲しみに包み込んだ。 そんな事も知らず何故か森で殺された彼女は、自身の寝室のベッドの上で目を覚ましたのだった。 愛に憎悪、帝国の闇 回帰した直後のリーナは、それらが自身の運命に絡んでくると言うことは、この時はまだ、夢にも思っていなかったのだった―― ※月曜にから毎週、月、水曜日の朝8:10、金曜日の夜22:00投稿です。 小説家になろう様でも掲載しております。

好感度0になるまで終われません。

チョコパイ
恋愛
土屋千鶴子(享年98歳) 子供や孫、ひ孫に囲まれての大往生。 愛され続けて4度目の転生。 そろそろ……愛されるのに疲れたのですが… 登場人物の好感度0にならない限り終わらない溺愛の日々。 5度目の転生先は娘が遊んでいた乙女ゲームの世界。 いつもと違う展開に今度こそ永久の眠りにつける。 そう信じ、好きなことを、好きなようにやりたい放題… 自覚なし愛され公女と執着一途皇太子のすれ違いラブロマンス。

で、お前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか?

Debby
恋愛
ヴェルトが友人からの手紙を手に辺境伯令嬢であるレィディアンスの元を訪れたのは、その手紙に「詳細は彼女に聞け」と書いてあったからだ。 簡単にいうと、手紙の内容は「学園で問題を起こした平民──エボニーを妻として引き取ってくれ」というものだった。 一方その話を聞いてしまった伯爵令嬢のオリーブは動揺していた。 ヴェルトとは静かに愛を育んできた。そんな自分を差し置いて、言われるがまま平民を妻に迎えてしまうのだろうか。 そんなオリーブの気持ちを知るはずもないエボニーは、辺境伯邸で行儀見習いをすることになる。 オリーブは何とかしてヴェルトを取り戻そうと画策し、そのことを咎められてしまう。もう後は無い。 オリーブが最後の望みをかけてヴェルトに自分を選んで欲しいと懇願する中、レィディアンスが静かに口を開いた。 「で、そろそろお前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか」 「はい?」 ヴェルトは自分が何を言われたのか全く理解が出来なかった。 *--*--* 覗いてくださりありがとうございます。(* ᴗ ᴗ)⁾⁾ ★全31話7時19時更新で、全話予約投稿済みです。 ★★「このお話だけ読んでいただいてもOKです!」という前提のもと↓↓↓ このお話は独立した一つのお話ですが、「で。」シリーズのサイドストーリーでもあり、第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」の「エボニーその後」でもあります(あるいは「最終話」のその後)。 第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」 第二弾「で、あなたが私に嫌がらせをする理由を伺っても?」 第三弾「で、あなたが彼に嫌がらせをする理由をお話しいただいても?」 どれも女性向けHOTランキングに入り、特に第二弾はHOT一位になることが出来ました!(*´▽`人)アリガトウ もしよかったら宜しくお願いしますね!

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。 はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない

ラム猫
恋愛
 幼い頃に、セレフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セレフィアはそれを喜んで受け入れた。  その後、十年以上彼と再会することはなかった。  三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セレフィアはその場を離れた。  しかし治療師として働いているセレフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。  それどころか、シルヴァードはセレフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。 「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」 「お願い、セレフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」 ※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。 ※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

行き遅れのお節介令嬢、氷の公爵様と結婚したら三人娘の母になりました

鳥柄ささみ
恋愛
お節介焼きで困っている人を放っておけないシアは、数多のご令嬢達から人気の令嬢だ。毎日ファンレターが届き、社交界に出れば令嬢に取り囲まれるほどである。 けれど、それに反比例するように男性からの人気はなく、二十七だというのに嫁の貰い手もないため、毎日母から小言をもらっていた。 そんなある日のこと、突然公爵家から縁談の話が。 シアは公爵家がなぜ自分に縁談など持ち掛けるのかと訝しく思いつつ話を受けると、なんと公爵の後妻として三人の娘の母代わりになれと言われる。 困惑するも、自分へ縁談を持ちかけた理由を聞いて、お節介なシアは嫁ぐこと決めたのだった。 夫になるレオナルドはイケメンなのに無表情で高圧的。三人の娘も二女のアンナを除いて長女のセレナも三女のフィオナもとても反抗的。 そんな中でもお節介パワーを発揮して、前向きに奮闘するシアの物語。 ※他投稿サイトにも掲載中

処理中です...